本の読まれ方と出版業界の現状について。1990年代の出版界の状況を書いた佐野真一の本を読んだことがありますが、この本は2005年以降の本の読まれ方と出版界の現状についてまとめています。
最近、通勤電車に乗っていて、本を読んでいる人が増えているように思います。90年代はマンガ本か雑誌や新聞、2000年頃から携帯電話やゲーム機で遊んでいる人が多くなったような記憶があります。ここにきて本の良さがまた見直されてきているのかなと感じます。そのような兆候も既に2007年頃からあったようで、筆者はネットに飽きてきた人達が回帰してきているのではないかと考察しています。読者を巡る環境の変化に加え、出版界の問題(特に再販制度)など多方面から考察しており、とても面白い内容です。
筆者による現代の読書事情(抄出)
・新刊洪水の要因は再販制度にある。
・自費出版ビジネスの問題点、書きたい人は増えるが読みたい人は減っている現状。自費出版は制度にも問題がある。
・ネット小説は一時期メディアに取り上げられたが、その後は思ったほど売れていない。
・フリーライターが増加しているが、続けるには書き続ける能力と経営感覚が必要。
・編集プロダクションは出版社には便利な存在で増加している。実態は過酷な条件での仕事が多い。
・情報の無料化(フリーペーパーなど)のからくり。無料だけれど、その費用は結局読者が払うことになる。
・朝読が学校で実践されるようになってきた。若者の読書離れと言われるが、このような活動は効果がある。朝読をやるようになって、生徒が落ち着いて勉強できるようになった。
・親が本を読まない家庭で、子供に読書させようとしても説得力がない。
・出版界は、読者の本離れを本が売れない理由に挙げているが、きちんと統計を取っていないなど業界として努力が足りない。
・新書がブームで各社で競って新刊を出しているが、内容は薄っぺら。しかし若手の学者にとっては良い発表の場となっている。
・独自のセレクトによる新しい業態の本屋も増加している。書店の活性化のアイデアとして注目。
・いろんな基準による文学賞があることは良いことである。文学賞は芥川・直木賞だけではない。ノミネート作品が発表されると、大量発注・大量返却(外れた作品)が発生するが、これは書店にとって悪しき習慣。
・ベストセラーになるには、読者が「飛びつく」感覚が必要。