大和総研のアナリストによる日本経済を統計データで読み解いた本。一般に流布している情報には、統計的な裏付けのない情報が有り、統計データを分析してみると違った結果になる場合がある。例えば、国の財政上、人口減少が問題だと言われて少子化対策が行われているが、統計では人口減少よりも高齢化の方が問題で、高齢者が増えることによる財政負担の影響の方が大きい。高齢者優遇の制度を改めることのほうが、少子化対策よりも効果的というのが、統計データから得られた結論となる。マスコミなどが取り上げる情報には、データの裏付けが無いものがあるので、論旨の基となった情報をきちんと把握する必要がある。
この本を読んでいて、ところどころ論理の飛躍がある分析もあり、違和感を感じることがあった。例えば、外車の販売台数で所得の地域格差を測ることができると筆者は述べていますが、外車は必需品ではなく嗜好品であり、お金があっても買わない人がいる。また、日本全国に均一に外車販売店が分布していれば、筆者の言うように地域格差の測定もできると思いますが、販売店の無い地域の人達はお金があっても外車が買えないわけで、やや現実とは違和感のある考察であるように思った。
統計の観点から、いろいろな日本社会の見方があることを教えてくれるとても面白い本ですが、同時に統計データの解釈の難しさも感じました。
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辞典というタイトルですが、これはキーワード別の科学エッセイです。科学エッセイと言っても、科学用語ばかりでなく倫理や講義、価値、驚きといった科学とはあまり関係なさそうな言葉が並んでいます。科学者の観点で見た博物学的な記述が多いのが特徴です。
著者は、宇宙物理学の教授ですが、自身の業績にはあまり触れる事なく謙虚に物事を観察していることに好感を持ちました。素人にはなかなか判りにくい専門的な記述もありますが、科学の歴史や最近の動向等で、なるほどと思うような視点や記述があって、とても面白く読めました。また各項目に著者自身の「定義」があって、これは日常生活でも使えそうです。
長嶋茂雄の人間的魅力を知る本。 古本屋で見つけた。
大の長嶋ファンでありながら長嶋茂雄の変なエピソードを公にしたのは、ビートたけしだったと思う。彼を知る関係者の誰もが「言わない約束」にしていた長嶋の奇行をバラしてしまってから、いろいろな人が偉大な英雄・長嶋のおかしなエピソードを語るようになってしまった。
この本では、長嶋ファンを自称する人達が愛情を込めて、彼のエピソードを披露している。長嶋はとにかくプロとして「観客を楽しませる」ことに情熱を傾けた選手で、そこには彼らしい演出があった。三振する時にヘルメットを飛ばすのも自らのスイングの凄さ見せる演出で、緻密に計算されたものであった。(と、本人が語っている)現代の品行方正な選手と違って、ただ試合に勝つだけでなく、自分の個性を発揮して観客にアピールし、楽しませることがプロの仕事と考えていたようだ。とにかくエピソード満載で面白い。長嶋は何も言わないけれど、ガッツポーズでしか自己表現できない現代の選手には、プロとして物足りなさを感じているかもしれません。
藤田騎手はとても個性の強い騎手だが、この本を読むと渾名とは違って至って真面目な感じを受けた。毎年のようにフェアプレイで表彰され、重賞もデビューから20年も継続して勝っており、騎乗技術もモラルも実績にも自信があるから、このような本が書けるし、競馬ファンの間で評判になるのだろう。
この本では、競馬システムの紹介、現在の競馬興行の傾向、騎手仲間のことや騎乗技術のことを思いつくままに?褒めたり批判したりしているけれど、総じて批判の矛先はJRAの不合理な制度に向けられているようだ。JRAの制度批判は、馬主からも競馬記者からもあるが、所属する当事者もいろいろな問題を抱えながら騎乗を行っている。騎手減少の問題、若手騎手育成の問題、乗り替わりの多さ、エージェント制度、調整部屋の問題など、将来の競馬興行に関わる懸案について、自身の見解や不満を述べている。
率直な感想として、彼の不満もよく判るし、競馬をより良くしたい気持ちもよく判る。でも本文中に何度も書いているが、「俺はいつでも辞められる」というスタンスで物を言っても、何も変わらないような気もする。もし競馬興行が利益を求めないボランティア事業であれば、彼の意見を取り入れた制度にできるかもしれないが、ギャンブルでは、誰もが利益重視であり、不合理であっても興行主のルールに従うしかない。もし彼が本気でJRAの制度を変えたいのなら、JRA組織の頂点に立って提言するしかないのでは、と思った。
それはともかく、騎手の裏事情がよく判って、一競馬ファンとしては面白く読めました。
漂白の詩人と呼ばれた種田山頭火の生涯と自由律俳句を紹介した本。
主に関東以西の日本をさまよい歩いて、自分の思いを素直に句にした山頭火の俳句は、とても自然で心に染みてきます。高校時代に、有名な「分け入っても分け入っても青い山」という句を教わった時、松尾芭蕉や小林一茶の俳句にはない新鮮な印象が残ったのを覚えています。俳句の型にとらわれないこのようなジャンルがあることを知って、俳句の更なる奥深さを知りました。
それはともかく、フラフラと日本中を巡って俳句を作り続けた山頭火の人生も面白い。旅の途中で自分のことを考え、「腹を立てない、嘘を言わない、物を無駄にしない」という誓いを立てます。逆に言えば、誓いを立てなくてはいけないような行状の人物であったということです。この本では、彼の作品鑑賞が中心になっていますが、山頭火の生涯についてもザックリと解説しています。山頭火について少しだけ知りたい人向けの入門書です。