1 ぞっとするほど恐ろしい。非常に気味が悪い。
2 びっくりするほど程度がはなはだしい。並外れている。大層な。
初めてスタジオジブリの作品を映画館で見た。アニメはテレビで見るものという感覚があって、映画館でお金を払って見ることに抵抗があったが、この作品はゼロ戦の設計者堀越二郎が主人公ということで、飛行機好きの宮崎駿がどのように描いたのか興味があった。
この映画は、堀越の生涯に堀辰雄の小説「風立ちぬ」を重ねたストーリーで、関東大震災や不況に見舞われ、戦争へと突入していく1920年代が舞台。二郎が飛行機設計者となっていくプロセスと、将来の妻となる少女との出会いと再会を中心に話が展開していく。
ゼロ戦設計者の堀越二郎は、大戦マニアの中では超有名人であり、彼の仕事を知っていると、この映画には技術的な話が少なくてやや物足りない感じがあるだろう。また、ラブストーリーとして見てしまうと、仕事と病身の妻との生活を淡々とこなす主人公にこちらもやや物足りなさを感じるかもしれない。アニメの主人公は、感情の起伏が激しくて絶叫したり泣き喚いたりするものと思っていたが、この映画の主人公達は、総じて感情の起伏の無さがとても印象に残った。でも、当時の家庭での振舞いは、おそらくそういう感覚だったのだろう。言葉遣いも丁寧で、必要最小限の言葉で相手に気持ちを伝える様子は、明治生まれの自分の祖母の話し方にそっくりで、懐かしい気分になった。時折ウルッとくる場面もあったが、淡々と話が進んで終わった印象で、いつもは映画の後に妻と感想を言うのだが、どうもそういう気分にはならなかった。何か物足りなさを感じたのが正直なところ。飛行機ものであれば、「紅の豚」の方が面白かったかも。
テーマが戦前戦中を扱ったものだけに批判もあるらしいが、飛行機設計者とは求められるものに応じて飛行機を作ることが仕事であり、その仕事が結果的に戦争に繋がったとしても、それを責めるわけにはいかない。当時はそういう時代だったと考えるべきだろう。
ベネチア映画祭に出品するようだが、外国人がこの映画を理解するのは難しいと思う。スタンディングオベーションしていても、頭の中では??だったりするかも。
中国との関係については、近年は尖閣諸島の領土問題で専門家やマスコミが様々な議論を行っていますが、解決策が見いだせない状況です。国際法に則って、領土に線引きをしたい日本と、主権の及ぶ範囲を曖昧にしておきたい中国の考え方には、思想的に相入れないことが要因ではないかと著者は主張しています。領土問題に限らず、歴史的な観点で中国人の考え方はどのように自らの思想を確立してきたかを考察しています。
ベースは大学の講義の内容をアレンジしたもので、日本辺境論の内容とダブる部分も多いですが、言いたいことはよく解るし、納得できる部分も多かった。中国は日本と違って、多くの民族を含む多民族国家であり、日本のような管理された社会ではない。そのため歴史的に戦争や国内の紛争も多く、国民が共有する唯一の成功体験が対日戦争での勝利であり、国内情勢が悪くなると政府の求心力を高めるため日本批判が起きるという。専門家は何となく歯切れの悪い見解で中国を批判しますが、中国問題については素人という著者の意見の方が、納得できる部分は多かったように思います。
マスコミは目の前の現実だけを捉えて、中国批判を繰り返していますが、歴史を踏まえると領土問題は「放っておく」のが一番良い解決策のような気もします。
世界平和に貢献したいと考える国民であれば、日本本土からはるか彼方の小さい無人島を巡って、お隣の国と紛争になるような愚挙は避けたいものです。
本の読まれ方と出版業界の現状について。1990年代の出版界の状況を書いた佐野真一の本を読んだことがありますが、この本は2005年以降の本の読まれ方と出版界の現状についてまとめています。
最近、通勤電車に乗っていて、本を読んでいる人が増えているように思います。90年代はマンガ本か雑誌や新聞、2000年頃から携帯電話やゲーム機で遊んでいる人が多くなったような記憶があります。ここにきて本の良さがまた見直されてきているのかなと感じます。そのような兆候も既に2007年頃からあったようで、筆者はネットに飽きてきた人達が回帰してきているのではないかと考察しています。読者を巡る環境の変化に加え、出版界の問題(特に再販制度)など多方面から考察しており、とても面白い内容です。
筆者による現代の読書事情(抄出)
・新刊洪水の要因は再販制度にある。
・自費出版ビジネスの問題点、書きたい人は増えるが読みたい人は減っている現状。自費出版は制度にも問題がある。
・ネット小説は一時期メディアに取り上げられたが、その後は思ったほど売れていない。
・フリーライターが増加しているが、続けるには書き続ける能力と経営感覚が必要。
・編集プロダクションは出版社には便利な存在で増加している。実態は過酷な条件での仕事が多い。
・情報の無料化(フリーペーパーなど)のからくり。無料だけれど、その費用は結局読者が払うことになる。
・朝読が学校で実践されるようになってきた。若者の読書離れと言われるが、このような活動は効果がある。朝読をやるようになって、生徒が落ち着いて勉強できるようになった。
・親が本を読まない家庭で、子供に読書させようとしても説得力がない。
・出版界は、読者の本離れを本が売れない理由に挙げているが、きちんと統計を取っていないなど業界として努力が足りない。
・新書がブームで各社で競って新刊を出しているが、内容は薄っぺら。しかし若手の学者にとっては良い発表の場となっている。
・独自のセレクトによる新しい業態の本屋も増加している。書店の活性化のアイデアとして注目。
・いろんな基準による文学賞があることは良いことである。文学賞は芥川・直木賞だけではない。ノミネート作品が発表されると、大量発注・大量返却(外れた作品)が発生するが、これは書店にとって悪しき習慣。
・ベストセラーになるには、読者が「飛びつく」感覚が必要。