眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

呑み言葉

2009-05-26 17:40:39 | 忘れものがかり
いくらでも言えることは
言ってもしかたがない

そんな気がして
時々とても長い間
次の雨が降り始めるくらい

とてつもない間
僕は黙り込んでしまうんだ

それはまるで
憎しみさえ抱いているような
冷たい間

そうして人は

大切な言葉を 忘れてしまう



ああ なんだっけ

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離れ

2009-05-26 15:02:05 | デビュー
 おばあちゃんは、少し離れたところに住んでいた。おばあちゃんを離れまで呼びに行くのは、僕の役目だった。
 「おばあちゃん、ごはんだよ」
 しばらくして、おばあちゃんがやってくる。おばあちゃんは、静かに食べて静かに離れに帰って行く。おばあちゃんの食べるものは、限られていた。

 「おばあちゃん、ごはんだよ」
 しばらくして、おばあちゃんはやってくる。けれども、だんだんやってくるのが遅くなっていた。僕は何度もおばあちゃんを呼びに、離れまで行った。

 「おばあちゃんは、まだ?」
 「さっき呼びにいったんだけど」
 しばらくして、おばあちゃんがやってきた。
 「いただきます」

 おばあちゃんは、だんだんと遅れてやってくるようになり、だんだんと食べなくなっていった。テーブルに着いて固まっていることも多くなった。
 「どうせ、おばあちゃん食べないんだから」
 おばあちゃんの皿に載る料理は、だんだんと少なくなっていった。
 「僕が食べるよ」

 おばあちゃんを呼びに、離れまで行く途中で、道に迷うことがあった。今までそのようなことはなかったので、僕は驚いた。きっと木が生い茂ったり、雨で道がぬかるんでしまったりしたせいだと思った。しばらくして、離れに着くと、黄金色の明かりの中でおばあちゃんはお茶をすすっていた。コウちゃんも飲むかと言うので、僕は一杯飲んだ。ご飯の前だというのに、お菓子も食べた。

 「遅かったね」
 「もうすぐ、おばあちゃんは来るよ」
 しばらくして、おばあちゃんはやってきた。おばあちゃんの背中はやってくる度に小さくなった。小さくなったけれど、姿勢はよかった。精一杯背中を伸ばすことでテーブルから顔を出してご飯を食べることができた。それでも、だんだんと小さくなっていったので、次第に顔を出すことも難しくなっていった。

 離れまでの道は、だんだんと複雑になり、だんだんと遠くなっていった。最初はポットのお湯が沸くまでの間で行けていたのが、玉子焼きを作るくらいかかるようになり、とうとう校長先生のお話くらいかかっても難しくなっていった。遅くなることについて、誰も文句は言わなかったが、その沈黙は新しく始まった教室の朝のようにどこか不自然に思えるのだった。

 「おばあちゃん、今日は調子わるいって」
 離れまでたどり着けなかった日、僕はうそをついた。うそは、繰り返しつき続けなければならなかった。
 離れまでの道には、闇の魔物が住み着くようになった。闇の魔物は、自分たちの領域を守るように立ちはだかり、僕を攻撃したり木々を従えて邪魔をしたり、ありとあらゆる方法で幻惑してくるのだった。けれども、それは元は僕の道だった。僕は、離れまで行くことをあきらめなかった。なぜなら、そこにおばあちゃんが住んでいるからだ。呼びに来るのを、待っているからだ。

 「おばあちゃん、今日も調子わるいって」
 けれども、突然、その時様子が変わったのだ。
 「もういいだろう」
 と父が言ったのだ。
 もう呼びに行くのはやめなさい、と父は言った。
 僕は、納得せずに、おばあちゃんは生きている、と言って家を飛び出した。

 「うそつくな」

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抹消時間

2009-05-26 11:56:26 | 幻視タウン
広告に埋もれるように息絶える歌は一瞬笑いさえした


     ★

燃え尽きる鳥の夢を見た。
夢はいつも途中で終わってしまう。
終わるものなんてみんな幻だ。



   世界最後の日にどぉですか?

   世界最後の日になるのに、貞子ゎまだ生きたことがぁりません(´・ω・`)
   貞子に世界の素晴らしさを教えてくれる人間の人ぃませんかぁ??????
   もしそうだったらいいんだけど、探偵さんとかがぃぃかなぁ
   でもそうでなくても全然オーケーなので気にしないでねぇ♪♪
   秘密は守るので、ぜひ、ぉ願いしましゅ(ノ∀`)ノ



 わかっているのだ。
 消さなきゃいけないということは。わかっているのに面倒臭くてできない。面倒臭いのは体よりも心の方である。小さい子供が見ていたらいけないとか、管理者としての責任とか色々考えながらも、もう一つ送ってきた人間のことについて考える。
 これを書いたのは人間だろうか? プログラムだとしても元は人間なのだろう。人間は、どういう気持ちで書いているのだろうか? 笑い半分、あるいは泣きながら悩みながら、あるいは全くの無表情で書いているのであろうか?
 文章を組み立てるという点に関して言えば、私たちと一緒じゃないか。それではその中身はどうだ?
 私たち物書きの端くれが作り出す散文と、あるいは詩などといったい……。それを考えているためだけに、消さねばならないと思いながらも消せないでいる。消さないでいる。
 私はずっと考え続けているのだが、あなたは私が何も考えていないのだと言う。なぜ消すことを少しも考えないのだと責める。
 私がどれだけ考えながら何もしないのかを知らない。何もしていないのと何も考えていないのとは違うのに。私はそれを説明することさえ面倒臭くなってゆくのだ。
 私は、その程度なのだ。
 傷つけることが目的でない手紙に、ひとり勝手に傷つきながら、私はまだ何もしていない。



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