眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

さよなら、おじさん

2013-07-05 16:24:45 | 夢追い
 おじさんはマフィアのボスだった。久しぶりに家に帰ってきているというので、朝早起きして遊びに行った。
「トランプをしよう」
 手渡されたのは熊の絵の入った小さなトランプだった。手の中に入りすぎる小さなトランプは扱いにくかった。すぐ近くに大きなトランプが見えたし、部屋の隅の雑貨入れの中には縫いぐるみやカスタネットなどがあり、他にも種々の小物が埋まっていそうだった。
 おじさんは苦しそうだった。トイレから出てくると唾を吐いて、大きなトランプで包んだ。大きなトランプはそのために置いてあったのだ。僕は、できることなら大きなトランプで遊びたいと思った。けれども、おじさんが唾を吐く度にカードを切ったとするなら、もう数が足りなくなっているのかもしれない。部屋の隅から大きなトランプを見つけたとして、ゲームを始める前に、僕は最初にそれを数えたいと思う。けれども、そのような行為は普通だろうか。おじさんは苦しそうに、蛇口まで行って水を飲んだ。
「さあ、始めようよ」 
 僕はテーブルの上に、熊を並べ始めた。

 おじさんは刑事だった。僕より遥かに先輩にあたる。運転しながら振り向いて、おじさんを撃った。仲間の刑事がみんな心配を装いながらおじさんを見ている。揺れが激しく、上手く当てることができない。もう1度振り向いて、おじさんを撃った。今度は、右の肩に当たった。振り向きざまなので、おじさんは気づいていないだろう。何者かが遠くからおじさんを狙っていると思っているだろう。
「大丈夫? おじさん」
 僕も振り向いて、おじさんを気遣う。おじさんは当たってもいないのに、左の胸を手で押さえ苦しそうにしている。
「おじさん、もうすぐだからね」
 再び振り向いた時、おじさんは左の胸に、予めポケットに忍ばせていたケチャップを塗りつけていた。致命傷を装うことで、追撃の手を緩める作戦なのだ。
 おじさん、お疲れさま。これらすべては、おとり捜査の一環だった。

 おじさんは議員だった。パーティーの席ではみんなが浮かれ、煙草に火をつけた。
「つけちゃいなよ」
 もっとつけちゃえと誰かが言って、ラーメンに火をつけた。
 ハンカチに火をつけ、鉢巻に火をつけ、テーブルクロスに火をつけた。あっという間に火は広がった。
「押しちゃいなよ」
 警報を鳴らすと事の重大さに気がついて、みんなで協力して火を消した。バケツリレーをして水を運んだ。水がなくなると100パーセントオレンジジュースまでも使って、消化に当たった。消防車が来た時には、火は消えていた。
 そんな騒ぎが3日も続いて、総会が開かれるとおじさんは失脚した。すべて仕組まれていたのだった。
「大変でしたね」 
 送別会の席で、父が労いの言葉をかけた。
 僕らはおじさんと目を合わさなかった。

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祝福の壁

2013-07-05 15:05:56 | ショートピース
なんとなく歩いていると壁に突き当たった。「おめでとうございます!」ナビが言った。「師に当たりました」今までの方法では越えられない壁は、過去を振り返り突き詰めることを求めた。自分なりの答に行き着いた時、私はおかしくなっていた。あはは、そうか。今までのは何だったんだ。#twnovel

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