眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ゲスト

2013-07-19 17:25:07 | 夢追い
 酔いつぶれたゲストを抱えて運んだ。広間は先人たちでいっぱいで、こんなはずじゃなかったのに、落ち着く隙間も見当たらなかった。ごめんな。窓が開いている。ここの人たちは暑いの? この人は寒そうだよ。先人たちの空気を読まなければならず、せめてと思い網戸にした。種々の弁当を抱えた弁当売りが、広間にやってくるとみんなが選ぶのを待っていた。あれこれ迷っている内に、僕は蓋を開けてミートボールを1つ食べてしまった。支払う前に、行ってしまったから、もうこれは僕のものになったのだという気がして、遠慮なく食べた。

 自分で適当に組み立てたパソコンは、コードや水道管がむき出しになっていて、傍目にも不恰好だった。
「正規のサンプル品があるのに」
 そう言って他の子たちが、責めるが、それは後から気がついたのだから仕方がなかった。注意書きを読むと、長時間使用すると稀に水蒸気が発生するので注意とのこと。階段などで使用すると、水蒸気が立ち込めて、上り下りに支障を来たす恐れありとのこと。
「貸しなさい!」
 横から母がリモコンを取って、遠くに持っていった。
「たまには電話してきなさい!」
 今はそれどころじゃないので、それどころではないのだった。みんなの中で、少しでも自分の居場所を見つけて、ここでやっていかなければならないのだから。本当はもっと目立ちたかっただけかもしれない。

「ホットモットでキックイン!」

 大きな声で合言葉を唱えたが、後から誰もついてこない。面白いのに、みんなどうした? みんなはむしろうるさいといった様子で非難の目をこちらに向けている。歌が聞こえないって? 誰がこんな時に歌なんて歌っているんだ。
 逃げるように階段を下りる。このまま下り切ったら負けのような気がして、途中で立ち止まってロープの結び方を研究した。もしも、今から水蒸気があふれて前途多難となったら、窓からロープを下ろして逃げ延びるのだ。その時、ようやく僕はヒーローになるのだろう。そうしている間に、もう楽しいことは終わったのか、次々とみんなは階段を下りてきて、僕の横を迷いのない足取りで通り過ぎていくのだった。どうして、みんなそんなに迷わないのだ……。誰も僕の努力に関心を向ける者などいなかった。静かになった踊り場で窓を開けて、地上を見下ろした。
「もう使えないってよ」
 運動会が終わったので、もう長くはいられないといって酒飲みたちが慌てていた。
「もっといられるように考えなさい!」
 女はもっと知恵を搾り出すように、強く求めた。

コメント
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