眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ロスタイムノベル

2013-07-18 20:11:33 | ショートピース
「行ってこい!」監督が背中を強く押し出したが今更何ができるというのか。中盤がぽっかりと空いていた。ちょうどいい。広大なスペースに落ち着いてノートを開いた。頭上をロングボールが時を惜しみながら通過していく。僕は今からレギュラーをかけた短い物語を書かなければならない。#twnovel

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冷夏

2013-07-18 17:56:20 | 気ままなキーボード
「ごゆっくりどうぞ」と言葉では言っているけれど、とてもゆっくりできるような環境ではないことが徐々にわかってくる。天井からは、冷たすぎる風が機械仕掛けとは違う生身の肉体に向かって容赦なく吹き付けてきて、「とっとと帰れ、とっとと出て行け」と言っているように聞こえてくる。鞄の中に隠し持った長袖シャツを着てもまだ震えるほどに寒いから、更に奥深く隠し持っていたジャージを引っ張り出して着込むけれど、それでもまだまだ十分すぎるくらいに寒い。ほんのちょっとやってきて留まるような人にはまだいいのかもしれないけれど、とてもゆっくり過ごすなんて無理だ。どうしてマフラーくらい持ってこなかったのだろう。できるだけ早く出窓の向こうのあたたかい世界に脱出しなければ、おかしくなってしまいそうだ。アイスティーは、まだ半分くらい残っていて、ここに来てからもうすぐ2時間が経つ。

プレイリストが消えてしまったあとだから、7月にクリスマスソングがかかったとしても仕方がない。

レジに着くまではわからなかったのに、その時籠の中をふと見るとすべてが麺類だったということがある。カップ麺、パスタ、冷凍うどん……。決して意図したわけではないのに、何らかの力が働いて、1つの籠の中に種々の麺類を呼び集めたのだ。あたかもそれは、歴代総理がみんなギタリストだったという状況に似ていた。

ただ遅くまで開いているという理由で、こんな煙まみれの場所までやってきてしまった。マフラーも持たずに、こんなところまでのこのことやってきた自分の愚かさに嫌気がさす中で、アイスティーはまだ半分ほど残っている。どうして自分はこんなにも愚かで、アイスティーはこんなにも減らない生き物なのだろうか。そうだ氷のせいだ。飲んでも飲んでも氷が溶けるせいで、どんどん量が増えてしまうのだ。どこまでも恐ろしく、冷たい氷よ。我にもっともっとアイスティーを与えるがよい。「ごゆっくりどうぞ」と口では言っておきながら、天井からは、まだ完全に機械仕掛けではない生身の肉体に向けて、冷え冷えとして風が吹き出してきて、「さあ出て行け、もう出て行け」と訴えかけてくるのだった。言われなくても、そうするよ。ここはちょっとお茶でも飲むような場所で、とても長く暮らしていけるような場所ではないんだ。

最近めっきり夢をみなくなりました。みてはいるのだろうけれど、脳になじまないというか、整理がつかないというか、印象が薄いというか……。昨日もまるでつまらない夢をみた。つまらない夢みている暇があったら、ちゃんと眠ればいいのに。

 明かりも少ない夜の街で、ずっと信号を待っていた。信号はなかなか変わらなかった。雨は降っていないのに、通りすぎる車はみな雨を引きずっていくような音がした。信号が変わらないのは、あまりに霧が深いためかもしれなかった。僕は熱いうどんを冷ますようにして霧を吹いて、一歩一歩見通しをよくしていった。ふーっ。ようやく交わりの向こうに青い光が見えた。
 未完成の倉庫は冷たく、人の気配が感じられなかったけれど、近づいて中を覗き込むと多くの人が床に雑巾を当て土下座しながら走り回っていた。彼らは身内の者なのか、それとも中に入ったら自分もあの作業をしなければならないのかわからず不安になった。皆同じようなリングを腕に巻いていた。僕が中に入っていくのと入れ替わりで、大勢いた人のほとんどは皆帰る準備を始めた。22時になるとどうやら囚人は帰らなければならないようだった。
「島では偽医者だって当たり前なんだぞ」
 市長は無責任なことを言って議員たちが寄せ集まると早速責任問題集が出されることになったが、それに対して今度は市長権限によって教科書を全部作り直すぞと宣言した結果、会見場の空気が一変、そうなっては面倒くさいぞということになって、憧れは世界基準へと変容していくのであった。
 結局、相手は見つからず観戦に回ることになった。暇そうに見ていると、同じような人がいて、誰からともなくやればいいじゃないという声がかかったので、じゃあやりましょうということになった。僕は進んで駒箱を開けた。1枚1枚力を込めて駒を配置する。
「振り駒の結果、と金が2枚です」
 と相手に報告すると女は、ふーんと言った。
 指が震える。わかっていてもどうにもコントロールできない。最初の一手で角道を開ける。
 あっ。歩が、飛んでいく。待ってくれー。

煙の作り手は長い長い話を終えて帰っていった。ゆっくりしたペースではあったが、アイスティーも徐々に細い管を通して、僕の体内に取り込まれて、あと少しで底から3センチの辺りへたどり着けそうだ。体はすっかり冷え切っており、ここを出たら、何かあたたかいものでも食べて帰ろうと思う。麻婆豆腐か麻婆ラーメンか……。チャンポンでもいい。「ごゆっくりどうぞ」そんな言葉を聞いてからもうすぐ3時間が経とうとしていた。窓の外、モーニングと書かれた緑の旗が揺れている。

この夏、この場所には2度と来ないことに決めた。マフラーを持ち歩くのは面倒だ。

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