異世界には魔女が住む。異世界の数だけ魔女は存在した。岩を登る魔女、シチューを煮込む魔女、カードを切る魔女、人をさばく魔女、アルバムを編む魔女、蝶を操る魔女、飴をまく魔女、荷物を運ぶ魔女……。「どんな魔女がお好みか?」無数にみえる魔女の間を泳ぎながら、ドラゴンは自身に問いかけていた。炎に触れて行間が激しく燃えている。
「アルデンテとカルボナーラの魔女?」
わからない、わからない、わからない……
ドラゴンの気はうつろいやすい。
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エルメスの温情を持つ魔女が住む
異世界を読みあさるドラゴン
(折句「エオマイア」短歌)