
昔々、あるところに芝刈りに熱心なおじいさんと健やかなおばあさんがいました。おじいさんはいつものように山に芝刈りに出かけなければなりませんでした。わしの他に誰が芝を刈る者がおろうか。わしの他にいったいどこの誰が刈るじゃろうか。しばしおじいさんは考えてみましたが、おじいさんはわしをおいて他にないという結論に行き着くのでした。わしが芝刈りに費やした時間や努力といったものは、その報酬に見合うものだったろうか。とおじいさんはまた別の自問自答を抱えながら芝刈りに出かけて行きました。おばあさんは清く正しく川に洗濯に出かけました。
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
おばあさんが川で洗濯をしていたところ、上流から何やらかわいげなものが流れてきました。それはみるみる近づいておばあさんの足下にまでやってきます。まるで近づきたいという意志を持っているようでした。その時、対岸から小舟に乗った鬼が、まるでアスリートのような猛スピードでおばあさんのところへやってきたのです。
「わしが落としたものを知らん?」
おばあさんは、咄嗟にそれを洗濯板の下に隠していたのでした。鬼が何かを落とすなどという話は、聞いたこともありませんでした。
「流れてこんかったと?」
「ええ、何も」
「本当と?」
鬼は魔神のような形相でおばあさんを睨みつけました。その時、川底から突如出現した河童が鬼の足をさらいました。鬼はいなくなりました。おばあさんは心安らかに洗濯板の上にかわいげなものをのせました。
「これはいいデザートができた」
おじいさんの喜ぶ顔が水面にも浮かんできそうでした。
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