一握りのパスタと侮って茹でると鍋の中で急激に成長した。絡めようとしたフォークを弾き飛ばして、パスタは腕に絡みつく。既にその時には他の勢力が部屋中のあらゆる物に絡み始めていた。食べられるのはこっちの方だ。家を追われて路上に出た。タクシー!
「出してください」
「それは大変だね。もしも私がイタリアン・シェフだったらどうします?」
運転手はおしゃれな髭を動かしながらジョークを飛ばした。
交差点を直進した後で突然ハンドルから手を放した。
「何を?」
「驚かせたね。みんな飾りなんだよ」
運転手はフライパンを握りオムレツを返していた。
「飾り?」
「ハンドルは不要なんだよ。道もないんだよ。目的地もない。そうさ。私はただのイメージ画像だよ」
「じゃあ僕もなのか?」
「安心しな。君はいるよ。君のために作られた世界だからね」
家に帰ってもすべきことがみえないので駅前にいる。先の事が決まらないと歩を進めないモードに陥ってしまった。鎖で囲われた一角に入ると、踵の下で砂利が永遠的な癒しを与えてくれた。きっとここは立ち入り禁止区域だろう。左手にはまった鉄のパスタが意味するものは何だろう。僕は捕まっているのだろうか。
パン屋の前はシャッターが下りている。警備員の前説に人が集まっていた。
「暗証番号を捨てなはれ。ふるー。はい。今まではただ風景を流れて行ったんでしょう。はい。1つは描けました。はい。心象風景ね。あなたが暗号化することやで」
シャッターが震え、警備員がフェードアウトして行く。
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