
夜と照明が硝子を鏡にして、遠くに赤い帽子の女を映していた。ラスト・オーダーが近い店内には、私の他に彼女一人のようだった。きっともう誰もやって来ないだろう。ここにあるのは来た時とは違う空気だ。だんだんと人が消えていくような居場所が好きだった。相棒のPomeraが次のフレーズを見つけられずに、カウンターの上で眠り込んでいた。
硝子の向こうに突然強い光が射した。到着した路線バスが、一人の女を呑み込んだ。
(彼女だ!)
帽子の女は、今はバスの中にいる。気怠いため息をついてバスは出発した。バス停の灯りが消えて、私は独りだった。
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