風を受け書き出せば今日実になった
一首は君を示す全文
(折句「鏡石」短歌)
・
扇子からは特別に優しい風が送られてくる。
「なんて優しい風でしょうか」
「特別な紙を使っておるからな」
風の送り手は言った。
「どんな紙なんですか」
「風と親交の深い紙を特別に折ってある」
秘密は紙の周辺に隠れているようだ。
「どう親交を得るのです? どう折るのですか?」
「何が知りたいのだ?」
「風のことです」
「根ほり葉ほりきくなー!」
そう言って送り手は、扇子を振りかざした。
優しかった風は厳しくなり、僕を押し戻した。
・
膝の上にあった
pomeraはまだ少しあたたかい
短い旅を終えて
ふりだしに戻る
このまま風化して行くの
化石となった手のひらを
誰が掘り起こすだろう
・
もう眠ったの
威勢はいいけど
構想がないのねいつも
おやすみ
私も眠ろう
膝の上
少しあたたかい
・
風下に風の便りが満ちた時
行こうみんなの知らない街へ
(折句「鏡石」短歌)
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