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いいなと少し思っても一気にすべてをつかみ切ることは難しい。ほんの少し触れたところで一旦置いて離れてしまう。心の片隅に置いたままで日常の中に戻っていく。もしも本当に自分にとって大切なものなら、簡単に消えてしまったりしないはず。離れて暮らす時間は本心を見極めるための必要な時間でもある。(最愛のものならばより強い形になって自分の元に戻ってくるだろう)離れているようでつながっている。ぼくらを結ぶ絆は決して永遠ではない。
今日は新しい友達を待たせていた。
「ごめん。今日はちょっと……」
友情を育むことは難しい。(一度で切れる友情ならいらない)それよりも大事なものをいくつも闇の向こうに待たせているからだ。きらきらとしたネオンの中に包まれるより、芳醇なアルコールの中に溶け込んでいくよりも大事なもの。
今夜また一つの締め切りを迎える。
ずっと寝かせていたけれど、ここで起こさなければ二度と目覚めることはないだろう。今になってわかる。失いたくない。まだ何も手にしていないけれど、跡形もなく消えてしまう前に生み出すのだ。
寝室のドアを開けて約束のページに灯りを当てた。
「どちらさまですか?」
つれない返事。
詩はすっかり冷たくなっていた。
(ああ。またそんな態度をするの)
「ぼくだよ」
きみはぼくだよ。
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