札幌駅前の札幌エスタ11階「プラニスホール」で、「アメリカ映画ポスター展 オリジナルVS.日本バージョン」が開催されている。
1987〜1995年に上映されたアメリカ映画のオリジナルポスターと、日本版ポスターの両方を展示するという、映画ファンには堪らない企画だ。
3月4日(金)〜3月27日(日)10:00〜20:00(入場は19:30まで)
入場料金:大人300円(大学生以下無料)
この展覧会の「解説」を書かせていただきました。
以下は、その全文です。

もうひとつの劇場~映画ポスターの世界~
私たちはなぜ古い映画ポスターに魅かれるのだろう。
まず、ポスターを通じて映画そのものを思い出すこと。内容はもちろん、観る前のときめき、観終わった後の興奮や余韻さえ甦ってくる。
さらに、その映画を観た当時の自分との“再会”である。いつ、どこで、誰と観たのか。その頃の自分はどんなだったのか。
映画自体がそうであるように、映画ポスターもまた私たちの大切な記憶装置なのだ。
ポスターとは本来、人が情報を伝えようとするためのツール(道具)である。つまりテレビやラジオやネットと同じメディアだ。映画ポスターの場合は、「こんな作品を公開します」という告知の役割を果たす。
かつて他のメディアが未発達だった時代、ポスターは映画の送り手と受け手をつなぐ貴重な存在だった。予告編は映画館でしか観られないが、ポスターは街のいたるところで目にすることができたからだ。
そんなポスターだが、私たちが接する洋画のそれは基本的に日本版である。映画の「原産国」で制作されたオリジナル・ポスター(本国版)。そこに書かれた文字を日本語に置き換えたものが多い。
では、日本版のポスターに“オリジナリティ”は無いのか。いや、そんなことはない。
中には本国版にはない惹句(じゃっく=キャッチフレーズ)を入れたものや、日本向けにデザインをアレンジしたものもある。
しかもそこにはオリジナル・ポスターを制作したデザイナーと、そのデザインワークに対する敬意がある。
あくまでもオリジナルの味を生かしつつ、日本の観客にどうアピールしていくか。そのためにどんな要素を組み込むか。プロフェッショナルのセンスとスキル(技術)が凝縮されている。
日本版ポスターとは、いわばコラボレーションとしての新たな創造物なのだ。
普段の私たちは、同じ映画作品の本国版と日本版のポスターを同時に眺めることなどほとんどない。この展覧会は実に貴重な機会だ。
日本版のポスターの前で、映画の中の俳優たちの表情や台詞を想い浮かべると同時に、“あの頃の自分”と向き合ってみるのもいい。
またオリジナル・ポスターを見ながら、それが掲示されていたであろうニューヨークやロサンゼルスの街角を想像してみてもいい。
そして字幕も吹き替えもない、まさにオリジナルな状態で上映されたアメリカ映画の“空気”を感じ取ってほしい。
本国版・日本版の区別なく、映画ポスターは“もうひとつの劇場”でもあるのだから。
・・・・この解説文は、会場に入ってすぐ左側にパネルとなって置かれています。
今月27日まで開催されていますので、札幌駅に行く際は、ぜひお立ち寄りください。