発売中の『週刊新潮』最新号で、“震災とテレビ”についてコメントしています。
7月「地デジ」移行で「震災情報」を見られない
世帯
これほどテレビというものの存在を有り難く感じたことがあったろうか。
「被災地の様子が一目瞭然ですし、離れていてもこちらへの影響も想像できる。原発の爆発も、政府発表を聞くだけと映像で見るのとでは
違います」とは上智大学の碓井広義教授(メディア論)だ。
「ただ気になったのは、避難所で被災者の方たちが見ているテレビはアナログが多かったこと」(同)
今年7月24日をもってテレビは地上デジタル放送に完全移行、つまりこれまでのアナログ波は終了する。
しかし東北地方に限らず公民館や学校といった公共施設に、地デジ化していないところは多いのではないか。
総務省が発表した地デジ普及率(昨年12月時点)は、94.9%! 公共施設どころか、仲間内にだって、もっと“未”デジ化は多いはず。
放送に詳しいジャーナリストの坂本衛氏は、「デタラメな調査です。デジタル化していない人は調査に非協力的で、デジタル化した世帯ばかりが協力すれば、普及率は高くなる。しかも、80歳以上を調査対象から外しているのです」
全国5000万世帯の内、80歳以上の単身世帯は約150万、夫婦が80歳以上の世帯は約100万にも上る。
「高齢者250万世帯を無視して、普及率もあったものではない。さらに今回の地震で東北3県はデジタル化どころではなくなりました。被災者にとっては横型テレビや綺麗な映像など必要なく、ライフライン情報こそが重要なのです」(同)
善後策は簡単だ。
「アナログ亭波の延期です。少なくとも東北3県は延期せねばならない。デジタル対応が遅れている地域は現行のサイマル放送(デジタル・アナログ双波での放送)を対応できるまで続ければいいだけです」(同)
7月には台風シーズンもやって来るのだから・・・・。
(週刊新潮 2011.03.24号)