11日に起きた「東北関東大震災」。
今週に入っても余震は続いている。
行方不明となっている多くの人の安否は定かではないし、被災者の方々の状況もきびしいままだ。
その上、原発の問題もますます深刻化している。
たくさんの報道が行われ、大量の情報が流されているが、何ともいえない距離感、もどかしさを感じるのはなぜだろう。
さて、『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「テレビとはナンだ!」。
今週の掲載分は、「東北関東大震災」の初期報道について書きました。
BS1の「被災者のための情報」は出色だ
「東北関東大震災」の緊急特番は11日午後2時48分のNHKから始まった。
間もなく民放も続々と参入し、最も遅かった日本テレビでも57分には通常番組から切り替えられた。
その後、各局の大報道が続いているが、テレビ5波、ラジオ3波の全てを投入したNHKの総合力が目立つ。
中でもBS1が延々と行った「被災者のための情報」は出色だ。
ここでは岩手県、福島県など被災地にいる人たちに向けて、まさに具体的な「知りたい情報」を流し続けた。
たとえば、どこの町の何世帯が「断水」となっているか。また停電が続くとその範囲は広がる恐れがあること。そして「給水所」は何か所に設置されているか等々だ。
画面には女性アナが一人だけ。冷静な声と表情で正確な情報を伝える様子は、見ている側をも落ち着かせる効果があった。
一方の民放は「被災地以外の所にいる人たち」に向けた内容という印象が強い。
津波で家屋が押し流される衝撃映像の繰り返しと、死者や行方不明者の数など統計情報が中心で、どこか傍観者的・野次馬的・優越的な興味に迎合する報道になってはいないだろうか。
「取材団」と呼ばれる人員を現地に送るのはいい。しかし、時には現地の系列局と“競合”しているように見えるのが気になるのだ。
余震はまだ続いている。報道する側の姿勢も問われ続ける。
(日刊ゲンダイ 2011.03.14)