連休のため、いつもより早めに発売された『週刊ポスト』(4月1日号)は、震災に関する総力特集だ。
この中のテレビ報道に関する記事で、コメントをしています。
想定外/「面白い」「笑えてきた」震災中継さ中の失言・放送事故
台本のない生放送には不測の事態がつきものである。とはいえ被災者の神経を逆なでする「失言」はいただけない。
矢のような批判を受けたのは、14日の「スッキリ!!」(日本テレビ系)で、気仙沼市から中継した大竹真レポーター(39)。
カメラとマイクが自分に切り替わっていることに気がつかず、津波で変わり果てた市街地をバックに、「ほんっと~に面白いね~」と話しながらニタニタ笑っている様子が映し出されたのだ。
「大竹さん!大竹さん!」スタジオの司会者・加藤浩次(41)が血相を変えて叫ぶ。
ようやくカメラが回っていることに気づいた大竹は、何事もなかったかのように、レポートを始めたが。時すでに遅し。
「面白い」という言葉が、被災地の惨状のことを指していたのかどうかはわからない。しかし、ネット上では「不謹慎きわまりない」「絶対に許せない」「宮城から出ていけ!」という主旨の避難が相次いだ。
フジテレビもやらかしている。
12日夜の菅首相の会見中、「ふざけんなよ、また原発の話なんだろ、どうせ」という男性の声や「アハハ、笑えてきた~」といった女性の声が漏れ聞こえてきたのである。
スタジオでのスタッフの会話と思われる。
それらの発言がどういった脈絡で発せられたものなのかはわからないが、正確な情報を得ようと画面を食い入るように見つめていた視聴者からしてみれば、「バカにしているのか!」と文句の一つもいいたくなる(フジテレビは「音声については外部からの混線の可能性も含めて現在調査中」との回答)。
上智大学新聞学科教授(メディア論)の碓井広義氏が指摘する。
「NHKが取材力を活かして被災者のための情報を流しているのと比較すると、民放はどうしても“被災地以外の人々”に向けての報道という印象がぬぐえない。
それはややもすると、傍観者的でもあり、興味本位と受け取られかねないということです。
災害報道の本質は、面白ければそれでよいという視聴率競争とは全く意味合いが違う。
特殊な状況で、取材の現場が疲労困ばいなのは理解できるが、だからこそ失言や放送事故には細心の注意を払うべきです」
ちなみに、大竹レポーターは失言の翌日以降、テレビ画面から消えている。
(週刊ポスト 2011.04.01号)
・・・・ちなみに、この記事の隣には、『安藤優子「白ヘルメット」と「高級コート」の現場中継』と題する一文も。
ベテラン・キャスターである安藤さんが、阪神淡路大震災におけるテレビ取材陣への批判を忘れているとは思えない。
いや、それ以前に、テレビが“印象のメディア”であることなど百も承知のはずなのだが。
やはり“1000年に一度”の出来事が、安藤さんをもってしても、「久々の現場で興奮」「やり過ぎ」(記事の文言)といった状態にしてしまったのだろうか。