碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

ラッパ屋『凄い金魚』の迫力がすごい

2011年03月16日 | 舞台・音楽・アート

新宿から高円寺へ。

まだ新しい小屋「座・高円寺」で、ラッパ屋公演『凄い金魚』を観た。




驚いたのは、開演前に、脚本・演出の鈴木聡さんからの「ご挨拶」があったこと。

20年近く、ずっとラッパ屋を観ているが、初めてのことだ。

鈴木さんいわく・・・・

「震災の影響で、都内のさまざまな芝居や音楽会やイベントが中止となっています。

けれども、こういう時だからこそ、ほんのいっときでも、ラッパ屋の芝居を観ていただき、笑って、少しだけ元気になってもらえたら、と思います。

芝居には、そういう役割、使命もあるのではないか。

余震もあり、交通の便も悪い状況の中、こうして足を運んでくださった皆さんに感謝します」

・・・・といった内容でした。

続いて、制作の山家かおりさんから、

「この観客席は特設のため、皆さんがどっと笑ったりすると揺れます。

ぜひ地震と間違わないでください。

本物の地震の場合は、舞台の上の照明機材が、カチカチと音をたてて揺れます。

そうなった時は、しっかり係員が誘導しますので、皆さん落ち着いて、それに従ってください。

本日は、ありがとうございます」

・・・・てな、お話でした。

客席は7割の入り、といったところ。

でも、お二人のご挨拶のおかげで、一体感ばりばりになりました(笑)。

そして、余震も、交通の便もかえりみず駆けつけたラッパ屋ファンたちの気持ちに応える形となった舞台は、それはもう迫力いっぱいでした。

何度目かの上演だが、観るたびにバージョンアップされている『凄い金魚』。

何度も笑って、やっぱりちょっとほろりとして、大満足の舞台でした。

ちなみに、帰りの地下鉄が地震のため途中で止まったりしましたが、芝居の余熱で苦になりませんでした。

『凄い金魚』は、予定通りであれば、21日(月)までやっています。


ラッパ屋第37回公演『凄い金魚』

会場:座・高円寺1
http://za-koenji.jp/detail/index.php?id=414

<脚本・演出>
鈴木聡

<出演>
福本伸一、おかやまはじめ、木村靖司、弘中麻紀、岩橋道子、俵木藤汰、大草理乙子、宇納佑、熊川隆一、岩本淳、中野順一朗ほか

<口上>
家族や親せきが集まる通夜の晩の、リアルな日常と、急に訪れるへんてこりんなドラマ。1996年に初演した、ラッパ屋の「原点」とも言える本作を、現代の私たちにぴったりくる新演出でお届けします。




余震の中、四谷から新宿へ

2011年03月16日 | 日々雑感

テレビの「震災報道」をめぐって、新聞と雑誌の取材を受ける。

いろいろ思うところあり、です。


23日に予定されていた「卒業式」が中止と決まった。

残念なことだが、これは仕方ないですね。

学科ごとに集まっての学位記の授与は行われる予定。

大学構内も閑散としていた。




地震で散乱したままになっていた研究室の片づけ。

床が全部、書架から落下した本や書類で埋まっている。

本は元に戻せば済むが、被災地では本を戻すべき書棚どころか、学校も住む家も破壊されているのだ。

いや、それどころか学校や家があった町そのものが、親しい人たちと共に押し流され、失われている。どれだけの悲しみだろう。


新宿御苑近くで行われた「全国広報コンクール」の審査会に出席。

全国都道府県を代表する広報映像から、さらに秀作を選ぶ。

大先輩・嶋田親一先生と共に、明るい緊張感のある審査が進む。


終わって、新宿まで歩く。

この街でさえ、全体的に寂しい印象。



いつものジャズ喫茶「DUG」で、ひと休み。

それから「紀伊国屋書店」へ移動して、各階探索。

和田 芳恵さんの『筑摩書房の三十年 1940―1970』と、永江 朗さんの『筑摩書房 それからの四十年 1970―2010』を発見。入手する。

どちらも筑摩選書の新刊だ。

先月末、筑摩書房の創立者・古田晃の記念館に行ってきたばかりの者としては、とても嬉しい2冊。


紀伊国屋画廊で、四谷シモンさんが主宰する人形学校の人形展をやっていることがわかり、行ってみることにする。

エレベーターに、おじさんが一人、乗り込んできた。

私より先に、おじさんが4階のボタンを押す。

エレベーター、4階に到着。



すると、おじさんも降りて、そのまま、私の前を歩いていく。

私が画廊に入ってみると、入口横の椅子にちょこんと腰かけているのは、さっきのおじさんだ。

え、四谷シモンさん?

そう、初対面のご本人。生シモンさんでした(笑)。

会場内に客は私ひとり。

座ったままのシモンさんを背にして、たくさんの人形たちを見て回る。

その後、誰も入ってこないまま、私は3周もしちゃいました(笑)。



ずらりと並ぶ人形ですが、やはりシモンさんの作品は別格。圧倒的な存在感です。

本当は、唐十郎さんや澁澤龍彦さんのことなど話してみたかったのですが、そこは遠慮して、会場を後にしました。

四谷シモンさんにお会いした(拝見した)ことが嬉しく、久しぶりで街歩きの楽しさを実感。

道路を渡って「新宿中村屋」へ。

これから芝居を観にいく「ラッパ屋」への差し入れを購入。

JRで高円寺へと向かった。