『産経新聞』の震災報道に関する特集記事で、コメントが掲載された。
記事全体は、阪神大震災の時とは違うメディア状況にフォーカスした内容だ。
震災とメディア テレビとツイッター相乗効果
11日午後2時46分に発生した東日本大震災により、テレビはほぼ震災一色の報道が続いている。一方、インターネットではミニブログのツイッターなどで被災者を含む「個人の声」があふれている。
16年前の阪神大震災当時にはなかった、マスメディアと個人のつぶやきを伝えるメディアとの共存。“相乗効果”は生まれているのか。発生後数日の目立った動きをまとめた。
◆利点生かす
「停電でテレビがご覧になれない方も多くいらっしゃいます」「ustでNHKが見られることをツイートしたらどうなの?」「情報感謝!」
地震発生から約2時間半後、ツイッターではこんなやりとりが交わされた。最後の「情報感謝!」はNHK広報局の公式ツイッター。
津波警報を伝えるNHKの画面を動画サイト「ユーストリーム(ust)」に無断で流す人物が現れ、NHKの担当者はそのアドレスを自分の発言を読んでいる約15万人に広めた。担当者は「私の独断なので、あとで責任は取ります」とも書き込んだ。
この後、NHKを含む各局はユーストリームや「ニコニコ動画」で同時配信を公式に認めた。ネットがテレビの災害報道を補い、増幅した格好だ。
ユーストリームを利用したテレビ朝日は「情報が少しでも届く手段になればとの思いだった」と説明した。
◆映像圧倒
「1号機が骨組みだけになっていませんか」
12日午後4時半過ぎ、NHKアナウンサーが福島第1原発1号機の映像を見ながらこう指摘。すぐに午前中に撮影した1号機の映像が並べて映され、外壁が吹き飛んだ惨状が誰の目にも明らかになった。
日本テレビも爆発の瞬間をとらえていた。政府が「何らかの爆発的事象」が1号機に起きたことを認めたのは、午後6時前だった。
同日午後8時半から行われた菅直人首相と枝野幸男官房長官の会見では、複数のツイッターユーザーが、テレビを見ながら発言の要約を“生中継”。
同時間帯に、原発に反対する市民団体の会見が行われていたこともあり、政府が強調した「安全性」をめぐる議論が活発に交わされた。
◆誰のための情報
「助けて」「あたしら死ぬのかな」…。ツイッターには地震発生直後から、被災者とみられるユーザーの生々しい書き込みがあふれた。
テレビは津波や火災など災害の克明な映像をハイビジョンで記録、報道し続けている。ツイッターでは「被災した子供達が笑えるような番組を流して。
ショッキングな映像ばかりではつらい」とテレビに要望する書き込みもあった。
上智大新聞学科の碓井広義教授(メディア論)は、テレビ報道に辛口の評価を与える。
「テレビは街が壊滅していく映像と死者の数の増加を刻々と伝えたが、これは被災地以外の人に向けた情報。
本当に情報が必要な被災者がほしいのは、生命に関わる、生きるための情報だ。テレビの災害報道は一体、誰に向かっているのか、疑問を感じる場面が非常に多かった」
また、安否情報を伝えるNHK教育は評価しつつ、「被災者の多くは避難所でテレビなど見られず、見られても知りたい情報がいつ出てくるのか分からない。
ネットの存在が今回際立ったのは、携帯電話などで欲しい情報がピンポイントで得られるからだ」とも指摘している。
■通常放送に戻すところも
東日本大震災で報道特別番組を続けていたテレビ各局は、一部の番組について、通常放送に戻すところも出てきている。ただ、原子力発電所のトラブルなどにより事態はまだ流動的だ。
テレビ東京は12日深夜、発生から24時間以上が経過したとして、各局に先駆けてアニメなど3番組をCM付きで放送した。
「被災者、関係者に配慮して不適切でないと判断した」と広報部。今後は通常番組に戻す方針だが、政府の会見など新たな情報が入った場合、ニュースに切り替える措置は継続する。
週明けの14日からは各局ともドラマなどを引き続き休んだものの、ニュース以外の情報番組については放送枠を拡大させて対応。
TBSは「ひるおび!」、フジテレビは「知りたがり!」で、東京電力による計画停電の影響など、地震関連情報を詳しく伝えた。
一部CMを解禁した局でも、スポンサーの中には「自粛」を伝えてきたり、「状況にかんがみてACジャパン(旧公共広告機構)のCMに差し替えて」と申し出る企業もあるという。
「震災報道以外」を求める声もネットなどでみられる一方、ビデオの大手レンタル店がツイッターで「テレビは地震ばっかりでつまらない、そんなあなた、ご来店をお待ちしています!」と書き込み、「不謹慎だ」と批判が噴出。レンタル店が謝罪するといった一幕もあった。
(産経新聞 2011.03.16)