碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

絶妙なキャスティングのドラマ『TAROの塔』

2011年03月01日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「テレビとはナンだ!」。

今週の掲載分では、NHKのドラマ『TAROの塔』について書きました。

TAROとは、もちろん岡本太郎のこと。


2回目以降もすこぶる楽しみな岡本太郎を
描いたドラマ


岡本太郎が生まれたのは1911(明治44)年2月26日のことだ。

生きていれば、まさに百歳の誕生日に当たる先週の土曜、NHKでドラマ「TAROの塔」(全4回)の放送が開始された。

岡本太郎は紛れもなく美術界における巨人のひとりであり、同時に異端児でもある。

その人と作品をどう評価するかによって、評価する側も問われるような強い存在だ。

何より15年前まで生きていた実在の人物である。

しかも「芸術は爆発だ!」に象徴されるように、多くの人が「時代のトリックスター」としての太郎を記憶している。

ドラマ化はそう簡単ではない。

今回制作陣が切ってきた大きなカードが岡本芸術の源泉ともいえる母・かの子(寺島しのぶ)だ。

寺島は狂気と童女が混在した女流作家を、まさに憑依したかのように演じている。

これだけでも見る価値は十分だ。

カードはもう一枚。

太郎の秘書であり後に養女となった梅子(常盤貴子)だ。

太郎の後半生で秘書や養女という言葉では説明しきれないほど重要な存在だった梅子を常盤がどう演じるか。

寺島とのガチンコ勝負である。

岡本太郎役に松尾スズキを選んだのもお見事。

松尾自身が長い間、演劇界の異端児だったからだ。

太郎が2人の女性から何を得、何を与えながら、あの岡本太郎になっていったのか。

2回目以降もすこぶる楽しみだ。

(日刊ゲンダイ 2011.02.28)


・・・・以前、青山にあったアトリエで、岡本太郎さんにお会いしたことがある。

インタビュー取材だったが、主旨を説明している間、じっと俯いて聞いていらっしゃる様子は、ちょっと怖かった(笑)。

しかし、カメラを回そうとすると、両腕をぱっと開き、目をかっと見開いて、一気に独演会へと突入。

そこには、<誰もが知る(イメージする)あの岡本太郎>がいた。

「ああ、サービス精神の人なんだなあ」と思ったのを覚えている。


来週からは、「岡本太郎展」も開催されます。