日刊ゲンダイに連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。
今週の掲載分では、
NHK「サラメシ」を取り上げました。
ナレーターの中井貴一さんとは以前一緒に仕事をしたことがありますが、その一見堅そうな雰囲気と、この番組での柔らかなキャラクターの落差が面白い(笑)。
情報バラエティーの体裁をした
優れたドキュメンタリー
この4月からシーズン2の放送が始まったNHK「サラメシ」。タイトルは「サラリーマンの昼飯」から来ている。ランチを通じて、働く人の“現場”と“生き方”を垣間見ようという番組で、ナレーターは中井貴一だ。
たとえば美容院のアシスタントのサラメシは、食事当番として自分が作った「おにぎり」。水加減や味付けにも気を配っているが、本人が口に出来たのは夜10時だ。あっという間に食べ終わると、閉店後の練習に取り掛かかる。修業時代の若者らしい懸命な姿だった。
また、アニメーション制作会社のサラメシは、賄いのプロによる手づくりだ。コマ撮りは根気と細心の注意を必要とする作業。人形の顔に汗が流れる一瞬の映像を作るだけで3時間はかかる。一日中スタジオに閉じこもっている職人たちにとって、全員で食卓を囲んでの温かい食事は大きな救いとなるのだ。1食250円の予算だそうだが、鱈の香草焼き、なめこと豆腐の味噌汁がうまそうだった。
この番組の巧みな点は、ランチを題材にしたこと。どんな職場にも違和感なくカメラが入っていける。中井貴一のユーモアあふれるナレーションで紹介される職場の雰囲気、仕事のプロセス、働く人たちの表情、そして彼らを支えるサラメシ。情報バラエティー番組の体裁ながら、優れたドキュメンタリーになっている。
(日刊ゲンダイ 2012.05.02)