日本テレビの報道番組「news every.」で起きた、いわゆる“ルール抵触”問題について、少し整理しておきます。
まずは、新聞によると・・・・
日テレ報道番組がルール違反
日本テレビの報道番組「news every.」が4月25日に放送した特集「食と放射能 水道水は今」で、取材した飲料水販売会社の経営者の親族を、顧客として紹介していたことが3日、分かった。
2日の番組内でアナウンサーが経過を説明し「日本テレビのルールに反していた」と謝罪した。日本テレビによると、宅配飲料水の顧客として登場した女性が「水道水は不安なので、宅配の水を飲んでいる」という内容の発言をした。
放送後に視聴者から指摘を受け、女性が経営者の親族であることが分かった。
(日刊スポーツ 2012.05.04)
経営者親類を消費者として放送
日本テレビ系報道番組
日本テレビ系の報道番組「news every.」は、4月の番組で飲料水について報じた際、一般の消費者として放送した人物が、実際には取材した飲料水関連企業の経営者の親類だったと明らかにした。番組のウェブサイトで経緯を説明した。
サイトによると、問題があったのは、4月25日放送の特集「食と放射能 水道水は今」。放送後に指摘を受けて調査し、判明したという。サイトは「企業側の担当者も、経営者の親族だという認識のないまま、顧客として取材担当者に紹介していたが、本人に確認をすれば防げた。
今後は十分注意し、視聴者の信頼に応えた番組作りをしていく」としている。
(朝日新聞 2012.05.04)
・・・・というような経緯だ。
確かに、日本テレビのWEBサイトには、この件に関する掲載があります・・・・
every.特集からの報告
4月25日にevery.特集として放送した「食と放射能 水道水は今」の中で、消費者として放送した方の一部に、取材した企業の関係者の方が含まれているとの指摘を放送後に受けました。
これを受けて社内調査を行った結果、放送した方の一部に、取材した企業の経営者の親族が含まれていたことが判明しました。
取材担当者は「宅配の水」を取り上げるにあたり、顧客の取材が不可欠であると考えましたが、個人情報保護などを考慮すると、企業側からの紹介以外に方法がないことから、この方を顧客として紹介を受けていました。
この調査によれば、企業側の担当者も経営者の親族であるという認識のないまま、この方を取材担当者に紹介していました。しかし、ご本人にきちんと確認をすれば防げた事でした。
この事実は日本テレビの「取材対象企業の利害関係者をユーザーとして扱ってはならない」という取材ルールに抵触していました。
今後は十分注意し、視聴者の皆さんの信頼に応えた番組作りをして参ります。
(「news every.」WEBサイト 2012.05.02)
・・・・「お詫び」とか「謝罪」ではなく、あくまでも「報告」(笑)。
しかも、「日本テレビ」からでも、「news every.」という番組からでもなく、「every.特集」という番組内のワンコーナーからの「報告」だ。
まあ、「その程度のことでしょ」と言いたいし、済ませたいわけですね(笑)。
別に構いませんが。
それに、「取材担当者がちょっとしたミスはしたけど、それ以外は誰も悪くなかった」的な、不思議かつ巧みな文章も、見事です(笑)。
ただ、今回の件が、つい昨年の出来事と重なって見えるのが、気になる。
昨年、「news every.サタデー」の中で紹介された、ペットサロンとペット保険の2人の女性客が、実は一般の利用者ではなく、ペットビジネスを展開する運営会社の社員だったのだ。
この時は、放送倫理・番組向上機構(BPO)が、事案「ペットショップの取材対象者が不適切だった日本テレビの報道番組」として審議し、意見書を出している。
つまり、社員と親族の違いはあれ、形としては、同じ番組が、前回問題になった時と同様の“手口”、いや“手法”で、取材を行っていたのだ。
日テレ「やらせ」報道にBPOが意見書
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は13日、日本テレビの報道番組「news every. サタデー」に放送倫理上の問題があったとして、意見書を出すことを決めた。早ければ5月中に公表される。
同番組は、ペットビジネス特集でペットサロン運営会社社員と知りながら、店の利用者として報じた。
川端和治委員長は「報道の基本を制作現場が分かっていない。幹部も現場を把握できていない」と指摘。構造的な問題があるとして改善を求めることを明らかにした。
(共同通信 2011.05.13)
日テレ報道番組で放送倫理違反
BPOが意見書
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は31日、日本テレビが1月に放送した報道番組「news every.サタデー」の特集「ペットビジネス最前線」を、放送倫理に違反すると判断した意見書を公表した。
意見書によれば、1月8日放送の同番組は、ペットサロンとペット保険を取り上げるにあたり、それぞれの会社の社員を利用客として登場させた。番組を担当した、制作会社の派遣スタッフであるディレクター(31)は、社員と認識しながら「社員であっても利用者であることには違いない」と判断したという。
こうした経緯について、意見書は「報道機関の社会的使命に背く行為と言わざるを得ない」と断じた。その上で、問題の背景として〈1〉ディレクターの報道意識の希薄さ〈2〉スタッフ研修の不十分さ〈3〉年長の上司らと若手スタッフとのコミュニケーション不足――などを指摘。同局に職場環境と人間関係の改善を促した。
日本テレビ総合広報部は31日、「事件発覚後に報道局ではスタッフ自らが『自分ならどうするか』という視点からの議論内容と集約意見を総括文書にまとめた。意見書を真摯(しんし)に受け止め、チェック体制の一層の強化と放送倫理向上のためのさらなる研修に取り組む」とのコメントを発表した。
(読売新聞2011.05.31)
・・・・さすがに今回は、「親族であっても利用者であることには違いない」とは言い張らなかったわけですね(笑)。
とはいえ、「意見書を真摯に受け止め、チェック体制の一層の強化と放送倫理向上のためのさらなる研修に取り組」んだ結果、1年後に、また同じ報道番組で、同じような“やらせ”、いや“ルール抵触”が起きたことになる。
「どうなってるの?」と思われても、仕方ないのではないだろうか。
残念です。