『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。
今週は、ドラマ「Wの悲劇」(テレビ朝日)について書きました。
武井咲の女優修業にピッタリのドラマ
武井咲主演の「Wの悲劇」(テレビ朝日)。原作は夏樹静子だ。一般には薬師丸ひろ子主演の映画が広く知られている。実は何度かドラマ化もされており、松本伊代、大河内奈々子、谷村美月などが主演を務めた。ただ、いずれも単発ドラマ。連ドラは今回が初めてだ。
物語の展開はシンプル。資産家の令嬢・摩子と野良犬のように生きてきた少女・さつきが出会い、2人は姿かたちがそっくりなことを利用して、互いの人生を交換してみる。だが、憧れていたダンサーを目指す摩子は先輩たちのいじめに遭い、さつきはドロドロの財産争いに巻き込まれていく。
武井咲はこの摩子とさつきの両方を演じている。相当高いハードルだが、このドラマ自体が“期待の新人女優”武井のための養成講座だと思えばいい。何しろ2役だから、連ドラ2本分の修業だ。
修業を支える体制も万全である。摩子をいじめる先輩ダンサーは、ドラマ「ライフ」のいじめっ子役が評判だった福田沙紀。また色と欲に執着する資産家を演じるのは寺田農。ギラギラした脂っこさを持った老人が武井咲の膝に触れる場面などまさにトリハダ物だ。
現在、武井はNHK大河「平清盛」にも出演している。絶世の美女とうたわれた常盤御前はお似合いだが、武井のリアル成長物語としてこのドラマも見逃せない。
(日刊ゲンダイ 2012.05.08)