NHK大河ドラマ「平清盛」に関する大きな記事が『神戸新聞』に掲載され、その中でコメントしています。
清盛が視聴率低迷
リアルさ裏目?平均14・4%
リアルさ裏目?平均14・4%
1月に始まったNHK大河ドラマ「平清盛」。「画面が見にくい」との批判が相次ぎ、視聴率が低迷している。専門家からは野心的な作風に対する評価もある半面、なじみにくく、爽快感に乏しいなど、視聴者心理をつかみ切れていないようだ。
4月29日の視聴率は13・9%(関西は12・3%)、ここまでの17話の平均視聴率は14・4%だった。民放の連続ドラマなら決して低い数字ではないが、高額の制作費を投じるNHKの看板番組として、厳しい目が注がれているのが実情だ。
1月中は17%台だったが徐々に低下し、4月には2度も11・3%に。このまま伸び悩むと、大河の過去50作の最低平均視聴率だった「花の乱」(1994年)の14・1%を下回る可能性がある。
開始直後からけちがついた。清盛ゆかりの兵庫県の井戸敏三知事が「画面が汚い」などと批判。NHKにも60代の視聴者を中心に、「見づらい」との声が寄せられた。
NHKは2月の放送から画面のコントラストを調整するなど改善策を講じたが、視聴率はむしろ低落。だが磯智明チーフプロデューサーは「もっと見てもらっていい。それだけのものを作っている」と自信を崩さない。
【溝埋まらず】
視聴者と制作側の埋まらぬ溝。時代劇評論家のペリー荻野さんは「値段が書いてないすし屋と似ている。味は良いが、敷居が高い」と話す。
そもそも今回の舞台となっている平安末期は、戦国時代や幕末など大河ドラマの定番と比べてなじみが薄い。ところが制作陣が打ち出した方針は「平安をリアルに描く」という“直球”だった。
もやのかかったような画面の見にくさは、土ぼこり舞う当時の都を再現したため。大河ドラマでは初めて宮中行事を細かく監修する「儀式・儀礼考証」も導入した。
藤本有紀さんの脚本は天皇家や藤原摂関家も丁寧に描く。その分、青年清盛の存在感がかすみ、爽快感に欠ける物語になっている印象だ。
ペリーさんは「歌舞伎と一緒で、皆が見たいのは名場面」と指摘する。「例えば本能寺の変。何度描かれても、その都度、花形役者がどう演じるのか視聴者は胸を躍らせる。子どもにも分かるような面白さも大事だ」
【地平広げる】
上智大の碓井広義教授(メディア論)は映像表現のほか、悪役イメージの強い清盛を主人公に据えたことなどを挙げ「ドラマの地平を広げようとする意欲を感じる。視聴率だけで語るべきではない」と擁護。一方で、「清盛が平家の棟梁(とうりょう)になるのに約4カ月。“助走”が長すぎた」とも。
4月29日からは清盛が武士の世を目指す第2部がスタート。磯さんは「第2部はクライマックスの連続。分かりやすさも加味していきたい」と前向きだ。今後もロンドン五輪などの強力な裏番組が待ち構える中、清盛の逆襲なるか‐。(視聴率はいずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)
(神戸新聞 2012.05.02)