碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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産経新聞で、「SNS連動」報道系番組についてコメント

2012年05月16日 | メディアでのコメント・論評

『産経新聞』に、SNSと連動した、最近の報道系番組に関する記事が掲載されました。

この中でコメントしています。

視聴者参加へ報道系番組もSNS 
テレビ局の試行錯誤続く

■「採用」目的化、複雑な進行 課題も多く

ツイッター、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)と連動したテレビ番組が増えている。春からはSNSを使って生放送中の視聴者の投稿を深く反映させようと試みる報道系の番組が、相次ぎスタートした。制作者は「テレビとネットの融合でニュースを多角的に捉えたい」と意気込むが、「投稿の採用を目指すヘビーユーザー向けの番組になってしまう」といった懸念の声もあり、試行錯誤は続きそうだ。(草下健夫)


時事・報道系の番組ではこれまでにもテレビ朝日の討論番組「朝まで生テレビ!」やTBS「報道特集」、「NHKスペシャル」などがツイッターを利用し、「番組で紹介する場合があります」として視聴者の意見や感想を求めている。4月2日にスタートしたNHK総合の「NEWS WEB 24」(祝日除く月~金、深夜0・0)は、それを一歩進めた。

自局のニュースサイトのアクセス数を参考にニュースを選び、ツイッターでニュースに関する質問や意見を募集する。放送中はほぼ常時、画面下端に視聴者のツイート(投稿)が表示され、ゲストの識者への質問としてアナウンサーらがツイートを取り上げることもある。

 ◆若者には“参加感”

沖田喜之チーフ・プロデューサーは「(動画投稿サイトの)ニコニコ動画などは書き込みができ、若い人の間では“参加感”が受けている。作り手の価値観のお仕着せは、ネット時代には合わないと考えた」と企画意図を説明する。

一方、情報番組「BSフジLIVE ソーシャルTV ザ・コンパス」(土曜後9・0)は、識者と視聴者双方の参加を掲げて4月28日にスタート。フジテレビのサイトに識者ら102人が登録。そこにニュースや社会問題をめぐって寄せられた意見を基に番組を進め、放送中にツイッターやフェイスブックで視聴者が寄せる意見を紹介し、議論を深めていく。

宗像孝プロデューサー(フジテレビ)は「情報番組は、あるできごとについて評価し得る見方が一つ示されると、その一方向に突き進みがち。ニュースを多角的に捉える必要がある」とSNS利用の狙いをアピール。「他局でもSNSを使う番組は出ており、意見を集めるだけでは差別化できない」とも話す。

 ◆「ゲーム化」の恐れ

SNSを活用した番組づくりについて、碓井広義・上智大教授(メディア論)は「若い世代にテレビがアピールする試み」と評価しながらも、「視聴者参加をうたっているが、それは現状では投稿が採用されること。視聴者側は番組で紹介される喜びを得ようとして投稿を繰り返す“ゲーム感覚”に陥ってしまう。果たしてそれが本来の視聴者参加になるのか」と疑問を呈す。

NHKの沖田氏も「本当は番組批判も歓迎なのだが、減っている。番組や出演者を“ヨイショ”するなど、採用を狙って書かれたものがあり、それが『ヨイショしないと紹介してもらえない』との思い込みを呼ぶ悪循環にならなければよいが」と、早くも課題を感じているという。

また、メディアの活用を重ねるほど、番組進行は複雑になる。フジの宗像氏は「もっとシンプルに、一つ一つの意見をじっくり解釈し、ゆったりした雰囲気を出したい。課題は山積している」と話す。

「NEWS WEB 24」には当初、「表示されるツイートを読んでしまい、肝心のニュースが頭に入らない」との指摘も寄せられた。NHKの松本正之会長は「高齢者にはつらい。どんな形が適正か、工夫しながら番組を育てていくことになると思う」と話している。

(産経新聞 2012.05.16)

谷村美月が演じ分ける「たぶらかし~代行女優業・マキ」

2012年05月16日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

『日刊ゲンダイ』に連載している番組時評「TV見るべきものは!!」。

今週は、ドラマ「たぶらかし~代行女優業・マキ」(テレビ朝日)を取り上げました。


毎回異なる役柄を演じ分ける
テクニシャンぶりに拍手

21歳にしてキャリア10年の女優、谷村美月が勝負に出た。民放連ドラ初主演となる「たぶらかし~代行女優業・マキ」(日本テレビ)。舞台や映画ではなく、現実の世界で〝誰か〟になりすます「代行女優」という珍しい役柄である。

所属劇団が解散し、借金の返済に追われるマキ(谷村)は、「女優求む、時給3万円」のビラにつられてこの稼業に飛び込む。様々な事情を抱える人たちからの依頼で、ある時は自殺した女流画家の〝死体〟を演じ、またある時は女性実業家に化けたりする。

先週はイギリスから帰国した女性ピアニストの〝代行〟を務めていた。さすがにピアノの実演こそなかったが、毎回異なる女性像を演じ分けるのは難易度が高い。谷村はよくやっている。

またこれまでにない大胆な衣装や、きわどいシーンにも挑戦。敢えて難を言うなら、30分1話完結の形式のため、消化不良を起こすことがある。視聴者が谷村の〝たぶらかし〟に十分馴染まないうちにドラマが終わってしまうのだ。

とはいえ、ついこの間まで女子中高生にしか見えなかった谷村が、堂々と大人の女性を演じていることに拍手だ。脇を固める段田安則や山本耕史も、〝座長〟の谷村をしっかりと支えている。

深夜ということもあり平均視聴率は3%台だが、大量の刑事物に飽きた人には絶好の避難所だ。

(日刊ゲンダイ 2012.05.16)