分科会「災害から住民を守る」②―防災計画策定の方向性

2012-07-26 17:07:24 | 勉強
分科会「災害から住民を守る」の続きです。

中村氏は、今後の防災対策の方向性について
1、地域防災の最重要課題を明確にする
住民の生命と財産を一体として災害から守る(災害後の生活再建のためにも重要)。

2、安全を基本とした土地利用への転換
地形、地質、地盤には災害に不利な場所がある。自然立地的に安全な土地利用、都市計画、公共公益施設配置を推進する。

3、地域防災にとっての『閾(しきい)外施設』の排除
市外地に近接した大量危険物取扱施設、原発などは安全確保の妨げになる閾外施設として排除あるいは生活圏から隔離する。

4、レジリアンス(回復能力)のある地域空間とシステムを作る
大災害に見舞われても容易に回復できる程度の被害を防災目標にする。

5、被害軽減目標を設定、戦略的防災計画の推進
生活圏の被害軽減目標(住民の命と財産の減災量と期間を設定。コミュニティで連携共同し必要な対策を重点的に推進する。
①住宅の耐震化(アパート、中高層住宅も)
②木造密集市街地の防災的改善対策の推進
③公共施設の耐震化、耐災化の促進(再配置も)
④低地・軟弱地盤の耐災化対策の推進
⑤盛土造成住宅地の土砂災害防止対策
⑥被害想定に基づいた実際的な訓練の推進。図上訓練で応急力は向上。行政機能や市域の被災を付与した訓練計画の作成必要。

と話され、東日本大災害の状況等も具体的にし、その問題から浮かび上がる防災計画の方向を明確にされました。

ともすれば、命を守ることが第一義的課題である。それが人道的であるかのように思いがちですが、しかし、財産(家など)が残れば避難はしなくてもすむか短期間でよく、その後の生活再建も見通しがつくという意味で、財産も合わせて守ることの重要性を認識しました。

同時に、災害が起こったときの応急対策やその後の避難所運営計画が主の防災計画でなく、災害被害を限りなく少なくするための減災対策がより重要であること、そのためには、過去に学び、地形、地盤、街の成り立ちなどの地域の実情を良く知ることが必要と言うことも再認識しました。

先生の話はひとまず以上。

レポートもありましたから、それはまた次回にします。

 分科会「災害から住民を守る」―自治体学校で学んだこと

2012-07-26 17:06:49 | 勉強
自治体学校2日目
参加した分科会は『災害から住民を守る』で、
地域防災問題と今後の防災計画の方向性について学びました。

初めに助言者・中村八郎氏は、
昨年の3.11大震災の教訓として、
「防災計画の中心応急対策が殆ど機能せず、災害からの人命保護に失敗、救助の措置も極めて不十分で被害を拡大させた」
と、自治体防災計画の問題を指摘(下記7項目)。
自治体の防災計画が基本は地域防災計画であり、国や都の計画を受けて策定するのではなく、 
★人口の密集状況、高齢化率、要援護者がどれくらいいるかなどの街の成り立ち、
★商店街なのか農村地域なのか、住宅地なのか 
★海べりなのか 川が近いのか 山の土砂災害が想定されるのか等々
こうした地形や地質などの特徴も含め、各地域の特徴から被害想定や減災対策や震災の避難対策を積み上げて防災計画は作るべきと強調。

《防災計画の問題点》

1、自治体職員の多大な被災で防災関係施設の機能がマヒ
職員が被災し、庁舎、防災施設、災害後の市民生活に掛かるあらゆる書類関係も喪失し、行政がマヒ状態に陥った。

2、大規模災害における住民避難対策の失敗と限界
ハザードマップや津波警報の過小評価、避難場所の被災、避難計画の不備、防潮堤への過信、避難情報の伝達不備、不適正な避難場所など困難性も明らか。
避難しないですむ街にすることを一義的にすべし

3、住民の自助・共助(防災理念)は幻想
自助・共助は機能せず、逆に消防団員などの犠牲者を増大させた。
プロは到着も早い、プロによる対策を第一義的にすべし。

4、避難生活の過酷性、救助の措置の不備
避難所、仮設住宅居住者が“避難者”として扱われ、被災者としての救助が不備。

5、原発災害からの避難の大混乱
原発立地自治体の緊急時計画区域(EPZ、8~10km)の避難計画の杜撰さ。体制未整備。安全避難の不確実性が明らかに。
多人数を一気に遠方に避難させること不可能。

6、広域支援体制の不確実さと限界
重要だが、迅速・効果的な支援は困難。過度な広域支援依存は自治の放棄につながる。

7、災害に強いまちづくりへの努力の欠如
過去の災害を教訓に、地震や津波に対する安全な地域づくり、まちづくりへの努力が欠如。
公共公益施設の立地・配置、低地の土地利用問題等


今後の防災計画のあり方として、
現状、大災害時における避難対策が防災計画の中心だが、災害の未然防止策を基本とすべきであると指摘。

○防災計画策定の前提と課題として
★被害想定は自然力の規模に関する知見、自然現象の態様(研究者の力)
★ハザードマップの重要性と整備(行政)
★過去の教訓に学ぶ努力(研究者、行政)
などが必要であり、専門家の力が必要とも強調。
防災計画を★より科学的に、★想定を絶対視せず、★社会的に許容できる(一定の期間で回復可能)被害想定とするために、許容できない被害の規模などを明らかにし、その対策を講じる
ことも強調されました。

続き(今後の防止対策の方向性について)は次回。