EPAD コロナ支援と公演録画の収集 “一石二鳥”で実現
演劇界が協力 文化庁動かす
劇団などが保有する公演録画データを、正当に評価し、収集・保存、配信することで、コロナ禍の支援にもなる制度ができました。演劇関係者が知恵を出し合い、協力した結果、文化庁を動かしました。
(豊田栄光 林直子)
この制度は「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)」(予算額7億5200万円)といい、主には、公演録画をデジタルデータとしてアーカイブ(収集・保存)し、配信します。2020年度第2次補正予算(昨年6月)の成立を受けて具体化したものです。
同補正予算の別の支援策は、申請書類の作成が複雑なうえ、公演など新規事業を行った後に、経費の一部を補助する仕組みです。手元にまとまった資金がなければ事実上、支援を受けられません。今回のEPADは、手元資金がなくても支援が受けられます。
録画データを収集・保存用に提供すると、1作品につき、上演時の観客動員数に応じて6万~45万円が。「商用配信」に同意すると加算金がつき、合算で16万~200万円を受けとれます。
劇団の実情にピッタリあう
日本児童・青少年演劇劇団協同組合(児演協)専務理事の鈴木徹さんは、「加盟劇団からは、『財政的にも事務的にも負担が少なくて助かる』との声が出ています。すでにある録画データを活用するだけだからです。EPADは人手と資金が不足している劇団の実情にピッタリかみあっています」と喜びます。
EPADの制度設計を行ったのは、昨年5月に結成された「緊急事態舞台芸術ネットワーク」(208団体。以下、緊急ネット)などの演劇団体や弁護士ら、舞台芸術の実態を熟知した人たちです。第2次補正予算の「文化芸術収益力強化事業」(50億円)の具体案を、文化庁が公募したことを受けて、知恵を出しあいました。
文化財やデジタルデータ事業に強い寺田倉庫株式会社が提案者となり、文化庁から事業を受託。緊急ネットとともにEPAD実行委員会・事務局を立ち上げ、録画データを一般に募集することになりました。
広く早く支援金を届けるために事務局は昨年10月、協力団体を募りました。日本劇団協議会(劇団協)や児演協などが名乗りをあげ、2週間という短期間に加盟劇団などから目標の900を大幅に上回る作品提供がありました。
申請の負担軽減という点では、著作権上の権利処理をするために、弁護士が強力な支援チームを組織しました。著作権上の問題がなくなった録画データは、早稲田大学演劇博物館に収蔵され、閲覧も可能となります。提供団体が同意すれば商用配信されます。
EPADにより提供された青年劇場の公演「翼をください」=1990年(同劇団提供)
作品は文化財“お宝映像”も
EPAD事務局の三好佐智子さんは、「録画データのアーカイブ(収集・保存)は、舞台芸術関係者の長年の願いでした。私たちは、公演の録画データを文化財だと考えています。EPADはアーカイブとコロナ支援を両立させる事業となりました」と話します。緊急ネット代表世話人で劇作家の野田秀樹さんも、「一石二鳥」(昨年10月の協力団体募集説明会)と語っています。
三好さんは配信の重要性もアピールします。「法律上の権利処理も配信も自前でできる劇団は大手の一部です。EPADによって、中小の劇団の“お宝映像”も集まってきました。東日本大震災の被災地福島の劇団の公演など、全国的にはあまり知られていない作品も配信される予定です。地方に住む人、高齢や病気で外出できない人も、みな平等に作品に接する機会が得られるメリットがあります」
公演録画映像は、劇団の知的財産であり、文化財、公共の財産でもあります。その収集・保存は次世代への文化の継承には不可欠で、コロナとは無関係に政府の責任で実施すべきもの。今回、EPADを通じて収集できた映像は一部で、まだ眠っている作品が数多くあります。一時的な支援策にとどめず、規模を拡大し、恒常的なアーカイブの構築が求められています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月18日付掲載
コロナ禍のもと、上演されたはずの演劇が上演できなかった。
数多(あまた)にあることと思います。
その映像をウェブ上でアーカイブとして提供。一定の収入をえる得ることができる。
昨年秋、人形劇団クラルテが『11ぴきのねことへんなねこ』をネットで無料公開しましたが、一定の収入が得られれば越したことはないですね。
演劇界が協力 文化庁動かす
劇団などが保有する公演録画データを、正当に評価し、収集・保存、配信することで、コロナ禍の支援にもなる制度ができました。演劇関係者が知恵を出し合い、協力した結果、文化庁を動かしました。
(豊田栄光 林直子)
この制度は「緊急舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(EPAD)」(予算額7億5200万円)といい、主には、公演録画をデジタルデータとしてアーカイブ(収集・保存)し、配信します。2020年度第2次補正予算(昨年6月)の成立を受けて具体化したものです。
同補正予算の別の支援策は、申請書類の作成が複雑なうえ、公演など新規事業を行った後に、経費の一部を補助する仕組みです。手元にまとまった資金がなければ事実上、支援を受けられません。今回のEPADは、手元資金がなくても支援が受けられます。
録画データを収集・保存用に提供すると、1作品につき、上演時の観客動員数に応じて6万~45万円が。「商用配信」に同意すると加算金がつき、合算で16万~200万円を受けとれます。
劇団の実情にピッタリあう
日本児童・青少年演劇劇団協同組合(児演協)専務理事の鈴木徹さんは、「加盟劇団からは、『財政的にも事務的にも負担が少なくて助かる』との声が出ています。すでにある録画データを活用するだけだからです。EPADは人手と資金が不足している劇団の実情にピッタリかみあっています」と喜びます。
EPADの制度設計を行ったのは、昨年5月に結成された「緊急事態舞台芸術ネットワーク」(208団体。以下、緊急ネット)などの演劇団体や弁護士ら、舞台芸術の実態を熟知した人たちです。第2次補正予算の「文化芸術収益力強化事業」(50億円)の具体案を、文化庁が公募したことを受けて、知恵を出しあいました。
文化財やデジタルデータ事業に強い寺田倉庫株式会社が提案者となり、文化庁から事業を受託。緊急ネットとともにEPAD実行委員会・事務局を立ち上げ、録画データを一般に募集することになりました。
広く早く支援金を届けるために事務局は昨年10月、協力団体を募りました。日本劇団協議会(劇団協)や児演協などが名乗りをあげ、2週間という短期間に加盟劇団などから目標の900を大幅に上回る作品提供がありました。
申請の負担軽減という点では、著作権上の権利処理をするために、弁護士が強力な支援チームを組織しました。著作権上の問題がなくなった録画データは、早稲田大学演劇博物館に収蔵され、閲覧も可能となります。提供団体が同意すれば商用配信されます。
EPADにより提供された青年劇場の公演「翼をください」=1990年(同劇団提供)
作品は文化財“お宝映像”も
EPAD事務局の三好佐智子さんは、「録画データのアーカイブ(収集・保存)は、舞台芸術関係者の長年の願いでした。私たちは、公演の録画データを文化財だと考えています。EPADはアーカイブとコロナ支援を両立させる事業となりました」と話します。緊急ネット代表世話人で劇作家の野田秀樹さんも、「一石二鳥」(昨年10月の協力団体募集説明会)と語っています。
三好さんは配信の重要性もアピールします。「法律上の権利処理も配信も自前でできる劇団は大手の一部です。EPADによって、中小の劇団の“お宝映像”も集まってきました。東日本大震災の被災地福島の劇団の公演など、全国的にはあまり知られていない作品も配信される予定です。地方に住む人、高齢や病気で外出できない人も、みな平等に作品に接する機会が得られるメリットがあります」
公演録画映像は、劇団の知的財産であり、文化財、公共の財産でもあります。その収集・保存は次世代への文化の継承には不可欠で、コロナとは無関係に政府の責任で実施すべきもの。今回、EPADを通じて収集できた映像は一部で、まだ眠っている作品が数多くあります。一時的な支援策にとどめず、規模を拡大し、恒常的なアーカイブの構築が求められています。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年1月18日付掲載
コロナ禍のもと、上演されたはずの演劇が上演できなかった。
数多(あまた)にあることと思います。
その映像をウェブ上でアーカイブとして提供。一定の収入をえる得ることができる。
昨年秋、人形劇団クラルテが『11ぴきのねことへんなねこ』をネットで無料公開しましたが、一定の収入が得られれば越したことはないですね。