「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。
年金基金 外貨の食い物に③ 背後に米国の対日圧力
増加した運用の多くを任されたのが、外資系の運用会社でした。その背後に「対日要望書」による米国の対日圧力がありました。年金積立金などの運用を米国投資顧問業者にまかせろと要求をしてきたのです。
運用が開始された2001年から21年までの推移を集計すると、外資系の運用機関は5兆9087億円から75兆7622億円へ12・8倍になっています。全運用額に占める外資の比率は、この間に18・6%から37・3%へと増加しました。国民の貴重な年金積立金の運用を4割近くも外資に「丸投げ」したことになります(グラフ①)。
運用額トップに
このなかで、ブラックロックという外資系資産運用会社が注目されます。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用額でみると、01年にわずか0・19%を占めるにすぎない存在だったのに、21年度末にはステート・ストリートを抜いて15・09%を占め、外資系のトップに踊り出ているのです。
ブラックロックは1988年にニューヨークで設立され、2006年にメリルリンチ・インベストメント・マネージャーズを、08年にはバークレイズ・グローバル・インベスターズを吸収合併し、急速に規模を拡大しました。現在、資産運用規模は10兆ドルを超え世界一です。
安倍氏との関係
安倍晋三首相(当時)が、株式投資にかじを切った2014年から15年にかけて、くり返しブラックロックの関係者と面会し「成長戦略」について助言を求めたと報道されています。また、安倍氏が17年9月に訪米した際、朝食会に投資会社などの最高経営責任者らを招いてアベノミクスについて説明し、「さらに日本に興味を持って投資をしていただければ幸いだ」と対日投資を呼びかけました。そこにも、ブラックロックのCEO(最高経営責任者)のラリー・フィンク氏が参加していました。
手数料の半分超
資産の運用はただではありません。GPIFは、莫大(ばくだい)な委託手数料を支払っています。その額は、安倍政権の時代から急増しており、14年度の102億円から21年度には494億円へと5倍近くに増えました。
なかでも外資系の運用機関への支払いが増えており、同時期に45億円から267億円へと6倍になっています。外資が占める比率は、14年3月の41・3%から22年3月には53・8%にまで高まりました。手数料の半分以上が外資の手に渡っているのです(グラフ②)。
誰のための、何のための年金積立金なのか、厳しく問われるべきです。外資の食い物にしてきた仕組みを、いまこそ根本的に見直すべきです。年金を減らす「マクロ経済スライド」をただちに廃止し、巨額の年金積立金を国民のために計画的に活用することを急ぐべきではないでしょうか。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月6日付掲載
増加した運用の多くを任されたのが、外資系の運用会社。その背後に「対日要望書」による米国の対日圧力。
このなかで、ブラックロックという外資系資産運用会社に注目。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用額でみると、01年にわずか0・19%を占めるにすぎない存在だったのに、21年度末にはステート・ストリートを抜いて15・09%を占め、外資系のトップに。安倍元首相との蜜月関係も…。
資産の運用はただではありません。GPIFは、莫大な委託手数料を。その大半が外資に渡っています。
年金基金 外貨の食い物に② 保有資産の構造が激変
年金積立金をアベノミクスに利用するため、安倍晋三内閣は人事権を使い、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用委員会のメンバー10人のうち9人を交代させました。運用委員長と委員長代理を「有識者会議」から送り込んだうえ、新たに投資会社の勤務経験者を3人選任しました。
GPIFの新しい運用委員会は、2014年~20年までの間に「基本ポートフォリオ(資産構成)」の変更を繰り返しました。国内株式を11%から25%に、外国株式を9%から25%に、つまり全体の株式比率を20%から50%へと飛躍させたのです(①参照)。
この前代未聞の動きに対し、運用委員を解任された小幡績氏は、自著『GPIF世界最大の機関投資家』で、このようなやり方は「政治が運用を破壊する典型例」だと、怒りをあらわにしました。
①基本ポートフォリオの推移(%)
期間 | 国内債券 | 国内株式 | 外国債券 | 外国株式 | 短期
資産等 |
2006年4月~
2010年3月 | 67 | 11 | 8 | 9 | 5 |
2010年4月~
2013年6月 | 67 | 11 | 8 | 9 | 5 |
2013年6月~
2014年10月 | 60 | 12 | 11 | 12 | 5 |
2014年10月~
2020年4月 | 35 | 25 | 15 | 25 | ― |
2020年4月~ | 25 | 25 | 25 | 25 | ― |
(GPIF「業務概況書」等から作成)
海外投資家狙う
米国ニューヨーク証券取引所で投資家を前にして、安倍首相(当時)が「バイ・マイ・アベノミクス」(アベノミクスは買いだ)とスピーチしたのは、13年9月のことでした。
14年1月のダボス会議でも、安倍氏は「日本の資産運用も大きく変わるだろう。1兆2千億ドルの運用資産を持つGPIFはポートフォリオの見直しを始め、フォワード・ルッキング(先を見越した)な改革を行う。成長への投資に貢献することとなるだろう」と述べました。
GPIFが株式を大量に買うから外国の投資家も買ってくれ、という演説でした。麻生太郎財務相(当時)も、同年4月16日の衆院財務金融委員会で、GPIFの「動きが出てくるとはっきりすれば、外国人投資家が動く可能性が高くなる」と本音をもらしました。
50兆円の株購入
GPIFは、株式市場に次々と積立金を投入していきました。その結果、資産構成は大きく変貌しました(②参照)。
13年からの5年間で、国内株式は23兆円、外国株式は27兆円、合わせて50兆円も株式を購入したのです。当時の株式売買高(一部上場)は、年間58兆円程度でしたから、株式市場にいかに大きなインパクトを与えたか分かります。このころから、GPIFは「クジラ」といわれるようになりました。
国債を買い支え
その一方、国債を中心とする「国内債券」のポートフォリオ比率は60%だったのに、いきなり35%に下げられ、さらに25%にまで減らされました。
「国内債券」は、13年3月の74兆4586億円から20年3月の37兆1269億円へと半減させてしまいました。GPIFが売り出した30兆円を超える莫大(ばくだい)な金額の国債を買い支えたのは、黒田東彦総裁のもとで「異次元の金融緩和」を推進した日銀でした。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月5日付掲載
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の新しい運用委員会は、2014年~20年までの間に「基本ポートフォリオ(資産構成)」の変更を繰り返し。国内株式を11%から25%に、外国株式を9%から25%に、つまり全体の株式比率を20%から50%へと飛躍。
年金積立金の運用を安定した国内債券から不確実な民間の株式。それも、国内だけじゃなく国外に移行。
その分国内債券を引き受けたのが日銀。
非常にいびつな構造ですね。
年金基金 外貨の食い物に① 安倍政権時代に大転換
岸田文雄内閣は、この4月から年金の「マクロ経済スライド」を発動し、支給を2年連続で実質削減します。物価が上がるなかで、高齢者・国民の生活悪化は必至です。
(日本共産党元衆院議員 佐々木憲昭)
年金基金は、国民が苦労して支払い、積み立ててきた貴重な共有財産です。すでに200兆円も積み上がっています。それを国民にまともに回さないばかりか、外国資本の“餌食”にしてきた許しがたい実態がありました。
丸ごと市場運用
株式投資など、年金積立金の「市場運用」を本格的に始めたのは、年金資金運用基金を設立した2001年4月からです(06年4月からはGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人)。しかし、その運用方式は「丸ごと市場運用」ともいうべきものでした。
政府は、アメリカ、カナダ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンでもやっていると説明してきましたが、実態はまったく違います。
米国の世界最大の年金基金(OASDI=老齢・遺族・障害年金)は、すべて非市場性の米国債で運用しており、株式で運用することを禁止しています。ですから、運用で赤字が出たことはありません。
他国は一部運用
米国カリフォルニアの州職員を対象とした年金基金(カルパース)の場合は、全国民を対象とした基礎的年金に上乗せする部分の運用だけです。オランダの公務員年金(ABP)も同様です。
ノルウェーの政府年金基金グローバルは、石油・ガス事業の収入を積み立てている基金で、もっぱら年金給付のために運用されているものではありません。
カナダの年金制度投資委員会(CPPIB)は、基礎的な年金に上乗せする部分のみの運用、スウェーデンの公的年金基金(AP基金)も基礎的な年金の給付水準に直接、影響を与えない運用が行われています。
日本のように、年金の積立金を、丸ごと市場運用している国は見当たりません。岸田内閣・自民党は、それに一言も触れようとしません。
年金基金“活用”
厚労省の「GPIFの運営のあり方に関する検討会報告」(10年12月)は、こう述べていました。「年金積立金の原資となる保険料は投資を目的として徴収されたものではなく、老後の給付に充てるために一時的に国が預かっているものである」。そのため、運用は慎重を期し国債を中心としていたのです。
ところが、第2次安倍晋三内閣になってから、株式市場での運用にシフトする大転換が行われました。
外国資本のJPモルガンのチーフエコノミストも参加させて「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」を13年6月に設置しました。その報告書(13年11月)には、アベノミクスの「3本の矢」の「取り組みの一環」として「いかに貢献しえるか」を考えるべきだと書き込みました。それは、年金積立金をアベノミクスに従わせる「宣言」でした。
「投資目的ではない」という考え方は、完全に吹き飛んでしまいました。(つづく)
(3回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年4月4日付掲載
年金基金は、国民が苦労して支払い、積み立ててきた貴重な共有財産です。すでに200兆円も積み上がっています。それを国民にまともに回さないばかりか、外国資本の“餌食”にしてきた許しがたい実態。
外国資本のJPモルガンのチーフエコノミストも参加させて「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」を13年6月に設置。その報告書(13年11月)には、アベノミクスの「3本の矢」の「取り組みの一環」として「いかに貢献しえるか」を考えるべき。
マイナ保険証って本当に必要ですか? 「健康保険証の廃止」に反対します!
政府は今、マイナンバーカードを全国民に所持させるため、カードに保険証機能を搭載したマイナ保険証」を作成することを国民に呼びかけています。しかし、申込みが進まないた全医豫機関には2022年度中にカード読み取り機器の設置義務化を、保険者(健康保険)には、2024年度中に保険証を発行するかしないか選ばせ、将来的には従来の保険証を原則廃にする、という方針を打ち出しました。
法律では、カードの取得は国民の任意とされています。にも関わらず、保険診療という生命健康に関わるサービスの利用を阻害しかねない保険証廃止の方針を打ち出すことは、事実上のマイナンバーカード取得強制であり、国民皆保険の理念に逆行するものです。
個人情報を番号に結びつけて一元管ようとする「マイナンバー制度」には、個人情報の恣意的な収集や・情報漏洩の危険が指摘されています。政府には拙速なマイナンバーカード普及方針を撤回すること、少なくとも国会での審議をつくし、その是非について慎重に検討することを求めます。
マイナ保険証って本当に必要?_01 posted by
(C)きんちゃん
【医療機関からの声】
●現行の健康保険証提示による資格確認に問題はおきていません。多額の税金をつぎこむ無題づかいは中止すべきです。
●患者への手助けやマイナンバーノード紛失のトノブル、日々のシステム運用などにたくさんの負担がかかります。
コロナウイルス感染症への対応でひっ迫している医療現場の体制の拡充にこそ力を注ぐべきなのに。
【患者からの声】
●保険証が原則廃止となったら、マイナンバーかドを持たない人は公的医療保険がうけられなくなるのではと不安です。
●保険者における保険証発行の選択制導入は加入者に対してマイナンバーカードを取得するよう、圧力をかけることになります。将来的には保険証が原則廃止となれば大きな不便とカード紛失の危険が付きまとうことになります。
【法律家からの声】
●保険証の廃止は、事実上マイナンバーカード取得の義務化に限りなく近いもの。マイナンバーカードの取得は任意とする法令に抵触するのみならず、国民皆保険を掲げる中での保険証を廃止するのは違法です。
マイナ保険証って本当に必要?_02 posted by
(C)きんちゃん
そして、後期高齢者・75歳以上の医療費窓口2割負担。今からでも元に戻すべき。
一国で止めても収束ではない ワクチンないと世界のどこかで再燃
感染情報共有、渡航制限 国際協調が不可欠
WHOシニアアドバイザー 新藤奈邦子さんに聞く
新型コロナウイルスをめぐる世界と日本の状況をどうみるのかー。新型インフルエンザやエボラ出血熱など感染症の危機管理の最前線に立ってきた世界保健機関(WHO)シニアアドバイザーの進藤奈邦子(しんどう・なほこ)さんに聞きました。
宇野龍彦記者
新型コロナウイルスは瞬く間に世界に広がりました。
新しいウイルスなので、感染の有無を調べる診断薬も一からつくっていかなければなりませんでした。またアジア以外の諸国では当初十分な危機感がなく、多数の死者が出て、世界で都市封鎖(ロックダウン)や外出制限に踏み切らなければならなくなりました。
ウイルス遺伝子変化していない
新型コロナの遺伝子を調べている研究者によると、このウイルスは遺伝子がほとんど変化せずに人から人に広がっています。
ウイルスの遺伝子が変化する主な理由は、ウイルスがみずからの形を少しずつ変えて、「強敵」である人間の免疫をくぐり抜けながら生き延びていかなければならないためです。
新型コロナの遺伝子が変わらないということは、人々の中にまだ免疫がないということです。このウイルスにとって人は、けっして「強敵」ではないのです。そして、世界が国境を超えて深く結びついた現代だからこそ、ウイルスは短期間に世界中に広がりました。もともと動物由来と考えられている新型コロナですが、今のままで人から人に効率よくうつることができるので、「居心地のよい世界」だと言えます。
このウイルスとの付き合いは、長期にわたると考えなければならないでしょう。新型コロナ後の世界は、「もう元の世界には戻れない。すでに始まったことが新しい日常になっていく」という意味で、「新常態」になったと思います。
新藤さん(ジュネーブ大学病院で)
いまのところ日本での1日の患者確認数は多くても数百人にとどまっています。一方、イタリアなどでは、多いときには1日に5千~6千人もの感染が確認されていました。なぜイタリアで、これほどたくさんの感染者が出てしまったのか。関係者に聞くと「とにかく人の動きを止めることができなかった」と言います。
イタリアからヨーロッパ中にウイルスを拡散したきっかけは、2月半ばに開かれた「ミラノファッション・ウイーク」という国際的なイベントであるといわれています。非常に活動的な人たちが多数集まるイベントでした。各地の医師は、帰国者が風邪のような症状を呈していても、新型コロナに感染しているとは思いませんでした。これらの人たちは中国と直接の関連がなかったし、通常の風邪やインフルエンザも流行していたからです。
今後、感染拡大が収まってきた国々では、移動制限や外出規制を徐々に緩和していくことになります。しかしいったん国の中で感染拡大の火を止めても、それで収束とはなりません。
たとえば、シンガポールや香港では、一度は感染拡大が収まりました。ところが、海外から帰国した人たちがウイルスを持ち込んで、再び火が燃え上がりました。
いまのところ、子どもは新型コロナに感染しても重症化しにくいようです。子どもが感染して抗体を持ち、成長につれ何度か感染して免疫を強めていけば、おとなになった時には新型コロナは何でもない病気になっているかもしれません。これには何十年もかかります。
ですから、このウイルスの免疫を獲得できるワクチンができないかぎり、今後も流行は再燃すると考えなければなりません。
世界のどこかで再燃する新型コロナの流行を抑え込むには、国際協調が欠かせません。
国際的な連携を強め、互いに情報の透明性を高めていって、ある都市で流行が再燃すれば流行地域としてWHOに届け、WHOが世界中に周知する。流行が収まるまで、その地域に不要不急の渡航は避けるなどの対策を取って、世界的流行を起こさないようにすることが重要になってきます。
地域や職場での周りの支援必要
地域でも学校でも職場でも、個人が感染を明らかにしたとき、周囲がそれを受け入れ、感染者を守ってあげなければいけません。このウイルスは、コミュニティーのサポートがないと克服できません。新型コロナへの対応を通じて地域や学校や職場が変わり、働き方も変わることになるでしょう。
日本のみなさんは衛生観念がしっかりしています。個人が自覚を持って行動して、みんなで協力すれば必ず乗り越えられると思います。
「しんぶん赤旗」日曜版 2020年5月17日付掲載
新型コロナウイルス。感染で広がっていく中でも、遺伝子が変化していない。
人々の中にまだ免疫がなくって、ウイルスにとって人間は「居心地の良い世界」。
これから、長期的な取り組みが求められる。ワクチンができるまで、感染情報の世界的共有が大事。