きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

危機の経済 識者は語る① 新自由主義の危険性

2020-04-29 08:19:15 | 経済・産業・中小企業対策など
危機の経済 識者は語る① 新自由主義の危険性
群馬大学名誉教授 山田博文さん
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、「コロナ恐慌」となって世界の経済と社会を襲っています。今回のコロナ恐慌は、1930年代世界恐慌以来の最悪の事態であり、経済事象の中でも際立った特徴をもっているようです。


ホワイトハウスで記者会見するトランプ米大統領=4月21日(ロイター)

人為的な側面
第一に、コロナ恐慌は、従来の一般的な経済恐慌、つまり利益を求める過剰生産と賃金削減による過小消費という資本主義固有のメカニズムから発生する恐慌と異なり、各国政府が発動したロックダウン(都市封鎖)や緊急事態宣言による権力的・人為的な価値破壊で発生した経済恐慌といえます。
各国政府はロックダウンと緊急事態を宣言し、AFP通信によると世界人口の5割の39億人の人々が自宅待機状態になりました。オフィスや工場で働く人々が激減し、生産活動は一時的に停止状態になり、外出が制限され、街で買い物もできなくなり、消費が激減しました。世界貿易機関(WTO)によれば、世界貿易はほぼ3割激減し、生産と消費と貿易という経済の基本的な柱が破壊されました。
もちろん、経済的利益より人命尊重を最優先するさまざまな対策は必要不可欠です。
ですが、政府補償をともなわない出勤抑制や休業は、多数の中小零細企業の経営破壊、賃金削減、大失業を誘発します。国際労働機関(ILO)によれば、世界で12・5億人の労働者が減給と失職に直面しています。国際通貨基金(IMF)は、今年の世界経済の成長率をマイナス3%台、先進国はマイナス6%台と予測しました。これは、この100年間で最大の落ち込みです。
第二に、コロナ恐慌は、現代のようなグローバル資本主義経済の問題点とその変革を迫っています。
現代経済は、最大限の利益と最小限の費用を地球的規模で追求する米日独仏英などの巨大企業(多国籍企業・グローバル企業)中心で営まれる経済です。原材料の調達―部品の生産と組み立て―完成品の販売が地球的規模でチェーンのようにつながる体制(グローバル・サプライ・チェーン)は、ヒト・モノ・カネが国境を越え、頻繁に移動する体制です。感染力の高いウイルスは、ヒトやモノを介し、瞬く間に世界中に拡散しました。
それぞれの国や民族や地域に根差した暮らしの経済がグローバル企業の力で押しつぶされ、国境を越え、地球的規模で利益を追求する巨大資本が世界を支配したことのリスクが、大きな犠牲をともなって表面化しました。

利益追う弊害
第三に、コロナ恐慌は、経済成長と利益を最優先し、公的な医療制度や社会保障を軽視ないし敵視する現代の新自由主義的資本主義国の危険性と惨状を表面化させました。
世界最大の経済大国なのに、公的な国民皆保険制度をもたないアメリカは、4月25日現在、世界最多のコロナウイルス感染者(約89万人)と死者(約5万人)を出しています。アメリカの惨状は、約2800万人の国民が医療無保険者であり、医療サービスから排除されているためです。高額すぎる医療費など、生命維持のためのインフラが民営化され、保険業界や医療・製薬業界などの民間資本に支配されている国の惨状です。アメリカの平均寿命は日本より5歳ほど短命です。
コロナ恐慌は、大資本の経済利益を優先し、暮らしと人命と地球環境が脅かされる現代資本主義社会から早急に脱出すべし、と呼びかけているようです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年4月28日付掲載


今回の、新型コロナによる経済の急速な落ち込み。よく、1930年代の世界恐慌や2008年のリーマンショックと比較されます。
今回は、過剰生産恐慌ではなく、人為的に経済をストップしたことによる経済の落ち込み。
それならば、国や自治体の生業や生活の糧を失った人々への経済的支援が、今こそ求められます。
グローバル化した世界では、グローバル・サプライ・チェーンは避けられない面もありますが、あまりにも外需依存は改めていかないといけません。