キーワードで見る資本論⑧ 「第4章 貨幣の資本への転化」 労働力という商品
資本主義以前の階級社会では、支配階級が被支配階級を搾取する場合、搾取は目に見えました。
封建制社会なら、農民が苦労して生産したコメなどの生産物の大きな部分を、領主が「年貢」としてとりあげました。搾取の事実だけでなく、どれだけ搾取されているかも見えていました。ところが資本主義社会での搾取は目に見える形で表にでてきません。
資本主義社会では等しい価値の商品同士が交換されるという等価交換の法則が貫かれていて、商品はその価値どおりの価格で売られ、支払われます。
労働者と資本家の関係では、労働者は市場で資本家に「労働」という商品を売り、資本家はそれに対する正当な対価として賃金を払っているように見えます。しかし、資本家が価値通りに支払い、労働者と等価交換しているのなら、資本家はなぜもうけをあげられるのか。この“搾取の謎”を解いたのがマルクスです。
マルクスは、労働者が売っているのは「労働」ではなく、「労働力」=人間の労働能力という「それの使用価値そのものが価値の源泉であるという独自な性質を持っている」(新版②291ページ)唯一の特別な商品だということを発見しました。
労働力という商品の価値は、ほかの商品の価値と同じように、その商品を「標準的な品質で供給するため」に必要な費用で決まります。労働者とその家族の一般的な生活費がそれにあたります。
資本家は市場で「労働力」を購入し、時間を限って、その労働能力の使用権を得ます。労働こそが価値を生み出すものなので、「労働力」を実際に使用する中で、この独特な商品は、支払われた以上の新たな価値を生み出すことをマルクスは解明しました。
例えば、1日6時間働いて賃金分の価値を生み出したとすると、それ以上働いた分で生み出した価値は、資本家のもうけになります。
この搾取の本質を理解することは、労働者の階級的自覚の第一歩。労働者がただ搾取、支配されるだけの存在でなく、資本主義社会の変革を担う主体的な階級として成長・発展してゆく、という『資本論』が描く労働者階級の全体像につながります。(文)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月1日付掲載
資本主義社会のもと、商品の交換は価値通りの価格で売られ支払われる。「労働力」も価値通りに売られる。
農地が牧場地にされて、農地を追われて都市に出てきた農民は、資本家に雇わられた。
自らの労働する能力を資本家に買ってもらうしか生きるすべのない労働者になる。
労働者が売るのは「労働」ではなく「労働力」。資本家は買った「労働力」をこれまでかと使い果たして新たな価値を生み出す。
その差が資本家の儲けになる。
資本主義以前の階級社会では、支配階級が被支配階級を搾取する場合、搾取は目に見えました。
封建制社会なら、農民が苦労して生産したコメなどの生産物の大きな部分を、領主が「年貢」としてとりあげました。搾取の事実だけでなく、どれだけ搾取されているかも見えていました。ところが資本主義社会での搾取は目に見える形で表にでてきません。
資本主義社会では等しい価値の商品同士が交換されるという等価交換の法則が貫かれていて、商品はその価値どおりの価格で売られ、支払われます。
労働者と資本家の関係では、労働者は市場で資本家に「労働」という商品を売り、資本家はそれに対する正当な対価として賃金を払っているように見えます。しかし、資本家が価値通りに支払い、労働者と等価交換しているのなら、資本家はなぜもうけをあげられるのか。この“搾取の謎”を解いたのがマルクスです。
マルクスは、労働者が売っているのは「労働」ではなく、「労働力」=人間の労働能力という「それの使用価値そのものが価値の源泉であるという独自な性質を持っている」(新版②291ページ)唯一の特別な商品だということを発見しました。
労働力という商品の価値は、ほかの商品の価値と同じように、その商品を「標準的な品質で供給するため」に必要な費用で決まります。労働者とその家族の一般的な生活費がそれにあたります。
資本家は市場で「労働力」を購入し、時間を限って、その労働能力の使用権を得ます。労働こそが価値を生み出すものなので、「労働力」を実際に使用する中で、この独特な商品は、支払われた以上の新たな価値を生み出すことをマルクスは解明しました。
例えば、1日6時間働いて賃金分の価値を生み出したとすると、それ以上働いた分で生み出した価値は、資本家のもうけになります。
この搾取の本質を理解することは、労働者の階級的自覚の第一歩。労働者がただ搾取、支配されるだけの存在でなく、資本主義社会の変革を担う主体的な階級として成長・発展してゆく、という『資本論』が描く労働者階級の全体像につながります。(文)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月1日付掲載
資本主義社会のもと、商品の交換は価値通りの価格で売られ支払われる。「労働力」も価値通りに売られる。
農地が牧場地にされて、農地を追われて都市に出てきた農民は、資本家に雇わられた。
自らの労働する能力を資本家に買ってもらうしか生きるすべのない労働者になる。
労働者が売るのは「労働」ではなく「労働力」。資本家は買った「労働力」をこれまでかと使い果たして新たな価値を生み出す。
その差が資本家の儲けになる。