資産運用立国の終着点① 米財界に至れり尽くせり
岸田文雄政権は昨年、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」(6月16日)として、日本を「資産運用立国」に改革する方針を閣議決定しました。その内容と意味について、群馬大学名誉教授の山田博文さんが解説します。(寄稿)
群馬大学名誉教授 山田博文さん
「貯蓄から投資」をめざしたのがアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)でした。
その行き着く先はアメリカを手本にした「資産運用立国」ですから、昨年の「骨太方針」によってアベノミクスの国づくりの最終章がはじまったといえるでしょう。そんな国に改革された日本は、一体どんな経済社会になるのでしょうか。
日本の経済と社会がアベノミクスによって危機的事態に陥っていることは周知の事実です。内外の大資本・投資家・富裕層はアベノミクスがもたらした円安と株高によってぬれ手で粟(あわ)の富を実現しています。その対極で、消費税の増税、社会保障・年金の削減、2000万人の働く貧困層、格差拡大、物価高など、国民生活は破壊されてきました。
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ニューヨーク経済クラブで講演する岸田文雄首相=2023年9月21日、米ニューヨーク州(外務省ホームページから)
岸田政権が継承
岸田政権の打ち出した「資産運用立国」は、アベノミクスをそのまま継承した国づくりです。2013年9月、安倍元首相はアメリカ・ニューヨークの証券取引所で内外の投資家に向かって「バイ・マイ・アベノミクス」と日本への投資を呼びかけました。
それから10年後の23年9月、岸田首相は世界の金融関係者が集まるニューヨーク経済クラブで次のように呼びかけました。
「多くの米国を代表する財界人の皆さんにお話しする機会をいただき、感謝申し上げる。資本主義の中心であるここニューヨークを訪れたことをうれしく思う」「日本における資産運用セクターが運用する資金は800兆円で、足元3年間で、1・5倍に急増している。このパフォーマンスの向上を狙い、運用の高度化を進め、新規参入を促進する」「世界の投資家のニーズに沿った改革を進めるため、皆さんも参加いただいて、日米を基軸に、資産運用フォーラムを立ち上げたい」
強い影響下暗示
安倍元首相も岸田首相も政権の「骨太方針」をニューヨークで披露していることが注目されます。日本の経済改革がアメリカ政府と財界の強い影響下にあることを暗示します。
事実、ニューヨーク講演から2週間後、岸田首相は国内外約30社の機関投資家との意見交換会を首相官邸で催しました。世界最大の米資産運用会社ブラックロック社のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)も参加し、資産運用立国を掲げた日本が「驚異的な経済的変貌の途上にある」(「ブルームバーグ」23年10月6日付)との認識を披露しました。会の模様はテレビでも放映され、岸田首相の隣席にラリー・フィンク氏が着席していました。岸田首相が米資産運用会社の手のひらの上で踊らされている光景にしか見えませんでした。
というのも岸田首相のニューヨーク講演は、既存の日本の資産運用会社を尻目に、海外の資産運用会社や投資家に至れり尽くせりのメッセージを送っていたからです。日本独自のビジネス慣行や参入障壁を取り払い、国内法や規制の圏外で各種の特典や優遇措置を保障する「資産運用特区」を創設するなどの内容です。(つづく)(5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月20日付掲載
安倍元首相も岸田首相も政権の「骨太方針」をニューヨークで披露していることが注目されます。日本の経済改革がアメリカ政府と財界の強い影響下にあることを暗示。
岸田首相のニューヨーク講演は、既存の日本の資産運用会社を尻目に、海外の資産運用会社や投資家に至れり尽くせりのメッセージを送っている。日本独自のビジネス慣行や参入障壁を取り払い、国内法や規制の圏外で各種の特典や優遇措置を保障する「資産運用特区」を創設するなどの内容。
岸田文雄政権は昨年、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」(6月16日)として、日本を「資産運用立国」に改革する方針を閣議決定しました。その内容と意味について、群馬大学名誉教授の山田博文さんが解説します。(寄稿)
群馬大学名誉教授 山田博文さん
「貯蓄から投資」をめざしたのがアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)でした。
その行き着く先はアメリカを手本にした「資産運用立国」ですから、昨年の「骨太方針」によってアベノミクスの国づくりの最終章がはじまったといえるでしょう。そんな国に改革された日本は、一体どんな経済社会になるのでしょうか。
日本の経済と社会がアベノミクスによって危機的事態に陥っていることは周知の事実です。内外の大資本・投資家・富裕層はアベノミクスがもたらした円安と株高によってぬれ手で粟(あわ)の富を実現しています。その対極で、消費税の増税、社会保障・年金の削減、2000万人の働く貧困層、格差拡大、物価高など、国民生活は破壊されてきました。
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ニューヨーク経済クラブで講演する岸田文雄首相=2023年9月21日、米ニューヨーク州(外務省ホームページから)
岸田政権が継承
岸田政権の打ち出した「資産運用立国」は、アベノミクスをそのまま継承した国づくりです。2013年9月、安倍元首相はアメリカ・ニューヨークの証券取引所で内外の投資家に向かって「バイ・マイ・アベノミクス」と日本への投資を呼びかけました。
それから10年後の23年9月、岸田首相は世界の金融関係者が集まるニューヨーク経済クラブで次のように呼びかけました。
「多くの米国を代表する財界人の皆さんにお話しする機会をいただき、感謝申し上げる。資本主義の中心であるここニューヨークを訪れたことをうれしく思う」「日本における資産運用セクターが運用する資金は800兆円で、足元3年間で、1・5倍に急増している。このパフォーマンスの向上を狙い、運用の高度化を進め、新規参入を促進する」「世界の投資家のニーズに沿った改革を進めるため、皆さんも参加いただいて、日米を基軸に、資産運用フォーラムを立ち上げたい」
強い影響下暗示
安倍元首相も岸田首相も政権の「骨太方針」をニューヨークで披露していることが注目されます。日本の経済改革がアメリカ政府と財界の強い影響下にあることを暗示します。
事実、ニューヨーク講演から2週間後、岸田首相は国内外約30社の機関投資家との意見交換会を首相官邸で催しました。世界最大の米資産運用会社ブラックロック社のラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)も参加し、資産運用立国を掲げた日本が「驚異的な経済的変貌の途上にある」(「ブルームバーグ」23年10月6日付)との認識を披露しました。会の模様はテレビでも放映され、岸田首相の隣席にラリー・フィンク氏が着席していました。岸田首相が米資産運用会社の手のひらの上で踊らされている光景にしか見えませんでした。
というのも岸田首相のニューヨーク講演は、既存の日本の資産運用会社を尻目に、海外の資産運用会社や投資家に至れり尽くせりのメッセージを送っていたからです。日本独自のビジネス慣行や参入障壁を取り払い、国内法や規制の圏外で各種の特典や優遇措置を保障する「資産運用特区」を創設するなどの内容です。(つづく)(5回連載です)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月20日付掲載
安倍元首相も岸田首相も政権の「骨太方針」をニューヨークで披露していることが注目されます。日本の経済改革がアメリカ政府と財界の強い影響下にあることを暗示。
岸田首相のニューヨーク講演は、既存の日本の資産運用会社を尻目に、海外の資産運用会社や投資家に至れり尽くせりのメッセージを送っている。日本独自のビジネス慣行や参入障壁を取り払い、国内法や規制の圏外で各種の特典や優遇措置を保障する「資産運用特区」を創設するなどの内容。