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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

Q&Aで考える最低法人税率② 産業空洞化にも歯止め

2021-06-27 07:11:10 | 予算・税金・消費税・社会保障など
Q&Aで考える最低法人税率② 産業空洞化にも歯止め
 Y国の法定税率が15%以上でも、Y国に置かれた多国籍企業の子会社が優遇措置を受けて15%未満の税負担率だったら?
 やはり企業の母国が最低税率の15%まで上乗せ課税します。
問題とされるのは各国の法定税率ではなく、個別企業の実質的な税負担率です。
例えばアイルランドの法定税率は12・5%ですが、米国企業アップルがアイルランドに置いた子会社の税負担率は2014年度にわずか0・005%でした。アップルの子会社が米国でもアイルランドでも非居住者となるように、アイルランドが抜け穴を提供していたからです。アップルは米国外で得た利益をアイルランドに移転し、巨額の税逃れを行ってきました。
多国籍企業に対するこうした極端な税制上の優遇措置は最低税率導入で効力をそがれると考えられます。国際交渉に参加する財務省主税局は「『どうせ母国に課税されるなら』と考えて15%程度まで課税する動きが世界に広がることも想定される」と見ます。
こうして多国籍企業の税負担を極限まで減らす「底辺への競争」には一定の歯止めがかかることになります。



税逃れで有名なアップルの店舗=東京都中央区

 世界共通の最低法人税率は従来のタックスヘイブン対策税制とは違うの?
 タックスヘイブン(租税回避地)対策税制は各国が独自に定めている制度です。日本では「外国子会社合算税制」と呼ばれます。多国籍企業の母国が、軽課税国に置かれた子会社の利益を親会社の所得に合算し、「自国の税率」で課税する仕組みです。
創出が検討されている最低法人税率は、軽課税国に置かれた子会社の利益に対して親会社の母国が「最低税率」まで上乗せ課税する仕組みです。さらに大きな違いが二つあります。
一つは最低税率創出の交渉に約140力国・地域が一斉に参加していることです。
多国籍企業の母国の間で最低税率がばらばらに設定された場合、低い税率を設定した国の企業が国際竸争で有利になります。他方、多国籍企業の母国同士が協調して同じ最低税率を定めれば、こうした不公平は解消されます。この点でも「底辺への競争」に歯止めがかかります。

 もう一つの違いとは?
 課税対象が違います。従来のタックスヘイブン対策税制は租税回避地に置かれた幽霊会社(ペーパーカンパニー)を主な課税対象としてきました。幽霊会社に利益を移して課税を逃れる行為が悪質だ、という考え方に立っていたからです。
子会社が実質的な経済活動を行っている場合、配当や利子などの「受動的所得」だけを課税対象とします。
他方で最低法人税率は、研究開発や製造など実質的な経済活動を行う子会社も一律に課税対象とします。
幽霊会社に利益を移転させる租税回避地は他国から税収を奪う一方、実体のある経済活動を誘致する租税回避地は雇用も産業も税収も根こそぎ奪います。このため「よほど有害だという認識が広がってきた」(財務省主税局)のです。租税回避地対策の考え方が大きく転換されています。
法人実効税率が15%以上の国々の間でも、特区をつくって多国籍企業の税負担をゼロ近くまで減らし、産業を呼び込む競争が盛んに行われてきました。こうした「底辺への競争」は最低税率の導入で効力をそがれると考えられます。
世界共通の最低法人税率には、租税回避による税収の空洞化だけでなく、産業の空洞化にも歯止めをかける狙いがあります。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年6月24日付掲載


タックスヘイブン(租税回避地)対策税制との違い。
一つは最低税率創出の交渉に約140力国・地域が一斉に参加。もう一つは、ペーパーカンパニーだけでなく、研究開発や製造など実質的な経済活動を行う子会社も一律に課税対象に。

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