マイナス金利で銀行に苦境 「本業」に打撃 金融の安定性損ねる
「現在のマイナス金利政策の下での経営環境は最悪」。これは、10月に発表された金融庁「平成28年度金融レポート」で紹介された地域金融機関の経営者の叫びです。
同「レポート」は地域銀行全体として「金融緩和政策の継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下している」とのべています。その上で、預貸金の利鞘(りざや)が縮小し、窓口での投資信託や保険の販売手数料など(役務取引等利益)も減って、これら顧客向けサービスの利益が予想を上回るペースで減少、過半数の地域銀行でマイナスとなっていると指摘しています。
こうした中で地域銀行は債券・株式・投資信託など有価証券の運用による短期利益への依存を一段と高めています。そのため、環境変化による損失の危険が高まっていることに同「レポート」は警鐘を鳴らしています。
また、地域銀行全体の貸出残高は増加傾向にあるものの、多くの地域銀行でアパート・マンション向けや不動産業向けの融資が増加しているとしています。
他方、3メガバンクグループについてみると、2017年9月中間決算の業務純益(貸出利鞘に役務取引等利益を加えたもの)の結果は、みずほグループが前年同期比マイナス40・1%、三菱UFJグループがマイナス3・4%となりました。
このように日銀によるマイナス金利政策の下で銀行の「本業」による利益率が低下しています。そのため、地域銀行では合併・統合や連携の動きが広がっています。
メガバンクグループでは従業員や店舗の削減の動きが活発化しています。▽みずほグループは従業員(7・9万人)を26年度までに約1・9万人削減、拠点数(約500)は24年度までに約100削減▽三菱UFJグループは23年度までに約方9500人分の業務量削減、店舗は最大2割減▽三井住友グループは20年度までに約4000人分の業務量削減。
加えて、低金利環境を背景として、メガバンクグループにおいても地域銀行においても、「第二のサラ金」と呼ばれる銀行カードローンの残高が増加している事実も見逃せません。
ここで強調されるべきは、17年10月の日銀「金融システムレポート」が、次のように指摘していることです。「預貸利鞘の縮小傾向が続くなかで、金融機関が収益維持の観点から過度なリスクテイクに向かうことになれば、金融面での不均衡が蓄積し、金融システムの安定性が損なわれる可能性がある」
日本銀行法は、「物価の安定」とならんで「信用秩序の維持」を日銀の目的に掲げています。いまや、マイナス金利政策は、日銀の目から見てさえ、「金融システムの安定性」を損なう「可能性」をはらむにいたっているというわけです。
筆者が主張してきたように、少なくとも日銀は、銀行経営および国民にとって弊害の多いマイナス金利政策をただちに撤廃するべきです。
建部正義(たてべ・まさよし 中央大学名誉教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2017年12月10日付掲載
銀行が、企業や個人に貸し付けて、企業や個人は事業や消費に回して経済が回転する本来の方向でなく、株式や国債に投資して儲ける邪道の方向になってしまっている。
マイナス金利政策は直ちに改めるべきだね。
「現在のマイナス金利政策の下での経営環境は最悪」。これは、10月に発表された金融庁「平成28年度金融レポート」で紹介された地域金融機関の経営者の叫びです。
同「レポート」は地域銀行全体として「金融緩和政策の継続により、長短金利差が縮小し、収益性が低下している」とのべています。その上で、預貸金の利鞘(りざや)が縮小し、窓口での投資信託や保険の販売手数料など(役務取引等利益)も減って、これら顧客向けサービスの利益が予想を上回るペースで減少、過半数の地域銀行でマイナスとなっていると指摘しています。
こうした中で地域銀行は債券・株式・投資信託など有価証券の運用による短期利益への依存を一段と高めています。そのため、環境変化による損失の危険が高まっていることに同「レポート」は警鐘を鳴らしています。
また、地域銀行全体の貸出残高は増加傾向にあるものの、多くの地域銀行でアパート・マンション向けや不動産業向けの融資が増加しているとしています。
他方、3メガバンクグループについてみると、2017年9月中間決算の業務純益(貸出利鞘に役務取引等利益を加えたもの)の結果は、みずほグループが前年同期比マイナス40・1%、三菱UFJグループがマイナス3・4%となりました。
このように日銀によるマイナス金利政策の下で銀行の「本業」による利益率が低下しています。そのため、地域銀行では合併・統合や連携の動きが広がっています。
メガバンクグループでは従業員や店舗の削減の動きが活発化しています。▽みずほグループは従業員(7・9万人)を26年度までに約1・9万人削減、拠点数(約500)は24年度までに約100削減▽三菱UFJグループは23年度までに約方9500人分の業務量削減、店舗は最大2割減▽三井住友グループは20年度までに約4000人分の業務量削減。
加えて、低金利環境を背景として、メガバンクグループにおいても地域銀行においても、「第二のサラ金」と呼ばれる銀行カードローンの残高が増加している事実も見逃せません。
ここで強調されるべきは、17年10月の日銀「金融システムレポート」が、次のように指摘していることです。「預貸利鞘の縮小傾向が続くなかで、金融機関が収益維持の観点から過度なリスクテイクに向かうことになれば、金融面での不均衡が蓄積し、金融システムの安定性が損なわれる可能性がある」
日本銀行法は、「物価の安定」とならんで「信用秩序の維持」を日銀の目的に掲げています。いまや、マイナス金利政策は、日銀の目から見てさえ、「金融システムの安定性」を損なう「可能性」をはらむにいたっているというわけです。
筆者が主張してきたように、少なくとも日銀は、銀行経営および国民にとって弊害の多いマイナス金利政策をただちに撤廃するべきです。
建部正義(たてべ・まさよし 中央大学名誉教授)
「しんぶん赤旗」日曜版 2017年12月10日付掲載
銀行が、企業や個人に貸し付けて、企業や個人は事業や消費に回して経済が回転する本来の方向でなく、株式や国債に投資して儲ける邪道の方向になってしまっている。
マイナス金利政策は直ちに改めるべきだね。
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