けいざい四季報 2023Ⅲ ② 国内景気 長期金利上がっても円安
【ポイント】
①日銀が長期金利の上限を1%に。マイナス金利見直しの観測も流れ長期金利上昇
②金利は上がったのに円安、物価上昇、実質賃金減少の流れは止まらない
③24年度の概算要求総額が過去最高114兆円に。大軍拡の一方、社会保障費は抑制
日銀は7月末の金融政策決定会合で長短金利操作の運用柔軟化を決め、長期金利の上限をそれまでの0・5%から1%に引き上げました。石油や食料など輸入物価の上昇が続くなか、金融緩和を微修正し円安の流れを止める狙いでした。
実体経済にも
政策変更後、長期金利は大幅に上昇。マイナス金利政策見直しの観測も流れ、9月21日には2013年9月以来となる0・745%まで上がりました。長期金利の上昇を受け、銀行が住宅ローンの固定金利を引き上げるなど、実体経済にも影響が出ています。
一方、肝心の為替レートは政策変更時の1ドル=141円台から直近では1ドル=149円台へとむしろ円安傾向が強まっています。日本の金利上昇が米国の利上げのスピードに追いつかず、円売りに歯止めがかからない状況です。
世界的な原油価格の高止まりに円安が加わり、9月にはレギュラーガソリンの店頭小売価格が186円50銭と過去最高値を更新。食料品も帝国データバンクの調査で23年の値上げが前年比1・2倍の3万1036品目に達しています(8月31日時点での判明分)。このうち4533品目は10月の値上げを予定しています。
高止まりが続くガソリン価格=9月26日、都内
賃金は連続減
日銀の7月の「生活意識に関するアンケート調査」で95・5%の人が1年前と比べて物価が上がったと回答するなど、急激な物価高騰がくらしを直撃。消費支出が冷え込み、企業の物価高倒産も増えています。
岸田政権は物価高騰を上回る賃上げを掲げています。しかし、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると7月の実質賃金は前年同月比2・7%減。賃上げの速度が物価上昇に全く追い付かず、16カ月連続でマイナスとなりました。
政府が東京電力福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を強行したことで、8月の中国向けの海産物輸出は7割も減少しました。
国民が物価高騰で苦しむなか、8月末に出そろった各省の24年度概算要求は、社会保障拡充や賃上げに背を向けながら、軍事費だけ破格の扱いです。
■国内経済の主な出来事(7~9月)
軍事費上積み
一般会計総額は過去最大の114兆3852億円。軍事費は金額を示さない事項要求を除いて23年度当初予算から9千億円以上も上積みした7兆7385億円を要求しています。
一方、中小企業の賃上げを支援する「業務改善助成金」はわずか3億円増の13億円。
社会保障予算は高齢化などにともなう「自然増」で増額となっているものの、少子化対策を口実とした「徹底した歳出改革」が狙われています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月27日付掲載
肝心の為替レートは政策変更時の1ドル=141円台から直近では1ドル=149円台へとむしろ円安傾向が強まる。日本の金利上昇が米国の利上げのスピードに追いつかず、円売りに歯止めがかからない状況。
岸田政権は物価高騰を上回る賃上げを掲げています。しかし、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると7月の実質賃金は前年同月比2・7%減。賃上げの速度が物価上昇に全く追い付かず、16カ月連続でマイナス。
【ポイント】
①日銀が長期金利の上限を1%に。マイナス金利見直しの観測も流れ長期金利上昇
②金利は上がったのに円安、物価上昇、実質賃金減少の流れは止まらない
③24年度の概算要求総額が過去最高114兆円に。大軍拡の一方、社会保障費は抑制
日銀は7月末の金融政策決定会合で長短金利操作の運用柔軟化を決め、長期金利の上限をそれまでの0・5%から1%に引き上げました。石油や食料など輸入物価の上昇が続くなか、金融緩和を微修正し円安の流れを止める狙いでした。
実体経済にも
政策変更後、長期金利は大幅に上昇。マイナス金利政策見直しの観測も流れ、9月21日には2013年9月以来となる0・745%まで上がりました。長期金利の上昇を受け、銀行が住宅ローンの固定金利を引き上げるなど、実体経済にも影響が出ています。
一方、肝心の為替レートは政策変更時の1ドル=141円台から直近では1ドル=149円台へとむしろ円安傾向が強まっています。日本の金利上昇が米国の利上げのスピードに追いつかず、円売りに歯止めがかからない状況です。
世界的な原油価格の高止まりに円安が加わり、9月にはレギュラーガソリンの店頭小売価格が186円50銭と過去最高値を更新。食料品も帝国データバンクの調査で23年の値上げが前年比1・2倍の3万1036品目に達しています(8月31日時点での判明分)。このうち4533品目は10月の値上げを予定しています。
高止まりが続くガソリン価格=9月26日、都内
賃金は連続減
日銀の7月の「生活意識に関するアンケート調査」で95・5%の人が1年前と比べて物価が上がったと回答するなど、急激な物価高騰がくらしを直撃。消費支出が冷え込み、企業の物価高倒産も増えています。
岸田政権は物価高騰を上回る賃上げを掲げています。しかし、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると7月の実質賃金は前年同月比2・7%減。賃上げの速度が物価上昇に全く追い付かず、16カ月連続でマイナスとなりました。
政府が東京電力福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を強行したことで、8月の中国向けの海産物輸出は7割も減少しました。
国民が物価高騰で苦しむなか、8月末に出そろった各省の24年度概算要求は、社会保障拡充や賃上げに背を向けながら、軍事費だけ破格の扱いです。
■国内経済の主な出来事(7~9月)
7/14 | 経産省が半導体素材大手SUMCOへの750億円の助成発表 |
7/28 | 日銀が金利操作を緩和し長期金利の上限を0.5%から1%に |
8/24 | 福島第1原発の汚染水(アルプス処理水)の海洋放出を開始 |
8/30 | 電力大手10社が10月からの値上げ発表 |
8/31 | 概算要求が過去最大114兆3852億円に |
8/31 | そごう・西武売却をめぐり西武池袋本店でストライキ |
9/1 | 財務省の法人企業統計で大企業の内部留保が過去最高に |
9/5 | 7月の消費支出5.0%減。5カ月連続マイナス |
9/6 | レギュラーガソリンの店頭小売価格が過去最高値更新 |
9/21 | 長期金利が10年ぶりに0.745%に上昇 |
9/21 | 東芝のTOB(株式公開買い付け)の成立が判明 |
9/26 | 7月の実質賃金が2.7%減。16カ月連続マイナス |
軍事費上積み
一般会計総額は過去最大の114兆3852億円。軍事費は金額を示さない事項要求を除いて23年度当初予算から9千億円以上も上積みした7兆7385億円を要求しています。
一方、中小企業の賃上げを支援する「業務改善助成金」はわずか3億円増の13億円。
社会保障予算は高齢化などにともなう「自然増」で増額となっているものの、少子化対策を口実とした「徹底した歳出改革」が狙われています。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月27日付掲載
肝心の為替レートは政策変更時の1ドル=141円台から直近では1ドル=149円台へとむしろ円安傾向が強まる。日本の金利上昇が米国の利上げのスピードに追いつかず、円売りに歯止めがかからない状況。
岸田政権は物価高騰を上回る賃上げを掲げています。しかし、厚生労働省の毎月勤労統計調査によると7月の実質賃金は前年同月比2・7%減。賃上げの速度が物価上昇に全く追い付かず、16カ月連続でマイナス。
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