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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

資産運用立国の終着点③ 個人が損失リスク負う

2024-02-27 07:14:30 | 経済・産業・中小企業対策など
資産運用立国の終着点③ 個人が損失リスク負う
群馬大学名誉教授 山田博文さん

金融庁のリポートで「老後の生活資金は2000万円不足する」との指摘があって以来、メディアは老後の資金をどう蓄えるかといったキャンペーンを張ってきました。高い利回りを期待して投資を選好する風潮が広がっています。少額投資非課税制度(NISA)に注目が集まり、利用が増大しています。



金融庁のNISA特設ウィブサイト

金融資産を誘導
低金利であっても元本保証の安全な預貯金として蓄えられている国民の金融資産を、ハイリスクハイリターンの投資に誘導する制度がNISAです。安倍政権下の2014年にスタートしました。
預貯金からの利子所得には20%課税されますが、NISAを利用した株式投資などからの資産所得は非課税になります。100万円を利子で受け取ったら20万円を税金で差し引かれますが、株式の配当金や売買益なら非課税という制度です。税率に格差をつけるやり方で「貯蓄から投資」に資金を誘導するねらいです。30~50歳代を中心にNISAの利用者が増大しています。金融庁によれば、証券会社や銀行など民間金融機関に開設されたNISAの口座数・買付額は、最近の5年間でほぼ倍増し、口座数で2034万・買付額で34兆円(23年9月末)に達しました。
戦後日本の金融は、銀行が個人の預貯金を受け入れ、それを企業への貸し出しや投資に向ける間接金融が中心でした。低利とはいえ個人は銀行から安定的に利子を受け取る一方、貸出金が焦げ付き不良債権になった場合の損失は銀行が引き受けていました。
NISAは、個人が自己責任で価格変動リスクのある株式や債券などに投資する直接金融です。発行体の企業倒産などで株式や債券が無価値になり、投資したお金がなくなっても、それはすべて個人の損失になります。NISAの窓口になった証券会社や銀行などは、手数料を受け取るだけで、損失を被ることはありません。

自社の利益優先
政府の「資産運用立国」に先立ち、東京都は17年から「国際金融都市・東京」を吹聴してきました。でも東京都の国際金融都市ランキングは下がる一方です。近年急成長した上海・ソウル・深洲・北京などにも追い越され、5位(16年9月)から20位(23年9月)に転落しました。(「グローバル金融センターインデックス〈GFCI〉」)
その背景の一つは日本の金融機関の経営が顧客よりも自社の利益を優先していることです。金融庁は次のような厳しい指摘をしています。
「販売手数料獲得を目的とした顧客本位ではない販売行動が見受けられる」「家計・個人への運用商品の情報開示も十分ではなく、中立的な第三者による運用商品の比較や評価も充実していないため、家計・個人と資産運用業界との情報の非対称性は大きく、牽制(けんせい)が働き難い」(金融庁「資産運用業高度化プログレスレポート2023」)
NISA利用の個人の投資環境はこのように深刻です。そこで日本の金融機関に代わって、日本で台頭してきたのが米ウォール街や英シティーの金融機関・資産運用会社です。しかも政府が後押ししています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年2月22日付掲載


低金利であっても元本保証の安全な預貯金として蓄えられている国民の金融資産を、ハイリスクハイリターンの投資に誘導する制度がNISA。
税率に格差をつけるやり方で「貯蓄から投資」に資金を誘導するねらい。
NISAは、個人が自己責任で価格変動リスクのある株式や債券などに投資する直接金融。発行体の企業倒産などで株式や債券が無価値になり、投資したお金がなくなっても、それはすべて個人の損失。NISAの窓口になった証券会社や銀行などは、手数料を受け取るだけで、損失を被ることはありません。

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