グローバル経済の迷宮 製造業の空洞化④ 国民の英知集めるとき
名古屋経済大名誉教授 坂本雅子さんに聞く
自動車産業は日本の製造業と日本経済を支えてきました。ここでも海外生産のみが拡大しています。
日産やホンダは国内では十数%しか生産していません。つまり八十数%を海外で生産しています。日本の自動車12社全体でも、国内生産の約2倍の台数を海外で生産しています。今後の各社の経営戦略も、海外での生産のみを拡大する方向です。「輸出」も、海外生産拠点からの「輸出」だけ拡大する計画です。
その上、各社が現在推し進めている、「モジュール化」と呼ばれる生産システム上の「改革」も重大です。部品を組み合わせてモジュール(ブロック)をつくり、共通部品やモジュールの組み合わせで、あらゆる車種を生産する方式です。これは従来の方式を根底から破壊するものです。
完成車メーカーは従来、1次、2次、3次などの下請けメーカーと一体になり、車種ごとに部品をすり合わせて自動車の品質をつくり込んできました。ところがモジュール化のために、従来の10倍、20倍、あるいはそれを上回る桁違いの量の部品やモジュールを供給するよう下請けに求めるようになっています。従来の下請けではとてもついていけません。そのため完成車メーカーは、外国の巨大部品メーカーからの調達を拡大しています。日本の下請けは根本的な解体の危機に直面しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/54/2835e975db00ced0a115422f108661a2.jpg)
自動車輸出日本一の名古屋港の自動車積み出し基地
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/d6/3eeba08cbaedda1906f11ae1b20957dc.jpg)
最後のとりでも
辛うじて大量発注に応じられる、ほんの一握りの日本の巨大下請けメーカーも、安い部品を供給する中国などのメーカーに大きく依存するようになっています。巨大下請けメーカーにおいても、海外生産・海外調達のみが進んでいるのです。
完成車の逆輸入も始まっています。各社はタイなどで生産した日本車の輸入を少しずつ拡大しています。今後、警戒すべきは中国から日本への輸入です。
中国は世界一の自動車生産大国になりました(グラフ)。日本メーカーでも、日産のように今や日本国内の生産能力より中国の方が多いというメーカーもあります。遠からず各社もそうなるでしょう。
もしも中国から日本メーカー車の逆輸入が始まったら、それが日本の自動車生産、いやものづくりが壊滅する時になるでしょう。地域に重層的な下請けメーカーを抱えて、ものづくりと日本経済の最後のとりでとなっている自動車産業も、下請けも含めて危機に直面しています。
空洞化への批判
国境を越えて「最適地」で生産する「グローバル企業」の経営行動が、本当に「グローバル企業」の成長と勝利の道なのかも考え直すべきでしょう。国民をぼろぼろにし、技術を流出させて、その上に築かれる企業の繁栄と未来などありません。
米国では、オバマ政権期に製造業を国内に呼び戻す国内回帰策を打ち出しました。トランプ氏は「グローバリゼーションを追い求めた結果、仕事、富、工場をメキシコに追いやった。何百万人もの労働者がすべてをなくし、貧困に追いやられた」と演説して大統領になりました。グローバル化と空洞化への怒りと批判が世界の国民に拡大しているのです。
いま、経営者、官僚、国民の英知を結集して、国内生産と技術を守り発展させる新しい資本主義のあり方を、日本でこそ、模索すべきときではないでしょうか。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年2月23日付掲載
同じ車種でも、4輪駆動であるかないか、自動ブレーキ装着かどうか、リアカメラ装備かどうかなど…
いろいろなオプションが選べるようになっていて、1台1台受注生産されるのが実態です。
それに自動車メーカーだけでなく、部品メーカーも対応しないと生きていけない。
名古屋経済大名誉教授 坂本雅子さんに聞く
自動車産業は日本の製造業と日本経済を支えてきました。ここでも海外生産のみが拡大しています。
日産やホンダは国内では十数%しか生産していません。つまり八十数%を海外で生産しています。日本の自動車12社全体でも、国内生産の約2倍の台数を海外で生産しています。今後の各社の経営戦略も、海外での生産のみを拡大する方向です。「輸出」も、海外生産拠点からの「輸出」だけ拡大する計画です。
その上、各社が現在推し進めている、「モジュール化」と呼ばれる生産システム上の「改革」も重大です。部品を組み合わせてモジュール(ブロック)をつくり、共通部品やモジュールの組み合わせで、あらゆる車種を生産する方式です。これは従来の方式を根底から破壊するものです。
完成車メーカーは従来、1次、2次、3次などの下請けメーカーと一体になり、車種ごとに部品をすり合わせて自動車の品質をつくり込んできました。ところがモジュール化のために、従来の10倍、20倍、あるいはそれを上回る桁違いの量の部品やモジュールを供給するよう下請けに求めるようになっています。従来の下請けではとてもついていけません。そのため完成車メーカーは、外国の巨大部品メーカーからの調達を拡大しています。日本の下請けは根本的な解体の危機に直面しています。
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自動車輸出日本一の名古屋港の自動車積み出し基地
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最後のとりでも
辛うじて大量発注に応じられる、ほんの一握りの日本の巨大下請けメーカーも、安い部品を供給する中国などのメーカーに大きく依存するようになっています。巨大下請けメーカーにおいても、海外生産・海外調達のみが進んでいるのです。
完成車の逆輸入も始まっています。各社はタイなどで生産した日本車の輸入を少しずつ拡大しています。今後、警戒すべきは中国から日本への輸入です。
中国は世界一の自動車生産大国になりました(グラフ)。日本メーカーでも、日産のように今や日本国内の生産能力より中国の方が多いというメーカーもあります。遠からず各社もそうなるでしょう。
もしも中国から日本メーカー車の逆輸入が始まったら、それが日本の自動車生産、いやものづくりが壊滅する時になるでしょう。地域に重層的な下請けメーカーを抱えて、ものづくりと日本経済の最後のとりでとなっている自動車産業も、下請けも含めて危機に直面しています。
空洞化への批判
国境を越えて「最適地」で生産する「グローバル企業」の経営行動が、本当に「グローバル企業」の成長と勝利の道なのかも考え直すべきでしょう。国民をぼろぼろにし、技術を流出させて、その上に築かれる企業の繁栄と未来などありません。
米国では、オバマ政権期に製造業を国内に呼び戻す国内回帰策を打ち出しました。トランプ氏は「グローバリゼーションを追い求めた結果、仕事、富、工場をメキシコに追いやった。何百万人もの労働者がすべてをなくし、貧困に追いやられた」と演説して大統領になりました。グローバル化と空洞化への怒りと批判が世界の国民に拡大しているのです。
いま、経営者、官僚、国民の英知を結集して、国内生産と技術を守り発展させる新しい資本主義のあり方を、日本でこそ、模索すべきときではないでしょうか。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年2月23日付掲載
同じ車種でも、4輪駆動であるかないか、自動ブレーキ装着かどうか、リアカメラ装備かどうかなど…
いろいろなオプションが選べるようになっていて、1台1台受注生産されるのが実態です。
それに自動車メーカーだけでなく、部品メーカーも対応しないと生きていけない。
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