映画「この世界の片隅に」~すずさんのおうち展
東京・大田区の「昭和のくらし博物館」で「映画『この世界の片隅に』~すずさんのおうち展」を開催中です。映画は太平洋戦争中の1944年(昭和19年)、軍港の町・広島県呉を舞台に、18歳の主人公・北條すずの日常生活を描いたアニメーションです。特別展記念で、同館長の小泉和子さんと同映画の監督・片渕須直さん、監督補の浦谷千恵さんがトークしました。 (武田祐一)
記念トーク
小泉和子 昭和のくらし博物館館長
×
片渕須直監督・浦谷千恵監督補
料理をするすずさん=©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
広島で発掘「誰々さんのお宅」に意味が 片渕
「私の母の名はスズで、スズの妹はリンなんです」と小泉さん。映画の主人公すずと、登場人物のりんと同じ名前という縁もあり「2人の“すずさんのおうち”ということで、この展覧会の名前にしました」と紹介しました。
小泉さんは全国各地の重要文化財の修復などに携わっています。「家具や室内意匠・住宅の歴史の研究が本職です。でも古い建物の監修をしているうちに、時代考証などをやるようになりました」
映画にでてくる戦争中の食事の再現
「人が住み・暮らす」ひっくるめて住宅 小泉
何度も通った
片渕さんは「映画を作る際に昭和19年、20年の生活史を調べることになり、小泉さんと昭和のくらし博物館にお世話になりました」とあいさつしました。
片渕さんは、映画が公開された2016年、広島市に行きました。「平和記念公園にある平和記念資料館の耐震補強工事が行われていました。原爆で失われた中島本町のあった場所です。足元の土を取り除き、発掘作業をやっていて、牛乳屋さんや銭湯が出てきたんです。“誰々さんのお宅が出てきた”とか、グリコのおまけが出てきて“きっと誰々くんのだ”と話していました。“誰々さんのお宅なんだ”ということに、すごく大きな意味がある気がしました」
片渕さんは、これまでのアニメ制作で平安時代や昭和30年代のくらし、イギリスの生活史などの資料を調べる中で、小泉さんの著書に出合いました。同博物館に何度も足を運びました。
「“小泉さんのお宅”にお邪魔して、昭和の空気みたいなものをそのまま吸い込みに行っていたと思う」と語りました。
なぜ、くらしを残す博物館を作ったのかということについて、小泉さんは「住宅は人が住み、くらしていることを、ひっくるめてのもの。道具や、それを使う技術を残そうと思った」といいます。現代は便利になりすぎて、人々が家事能力を失っているといい「そのことが、人間を育てる力も失わせていると思う」と指摘しました。
洗濯板を使う様子や縫い物などの技を伝えるために、小泉さんの母スズさんの家事を記録した映画「昭和の家事」を作ったことも紹介。映画の一部を上映しました。
浦谷さんは、同博物館の「くらしの学校」に参加して昔ながらの家事を学びました。「昭和の家事」も研究し「この映画を見て(当時の人の)日常の姿勢を作画に生かしました。縫うときの背中が丸まったポーズなどもそうです」といいます。
記録映画「昭和の家事」洗濯の様子を見る参加者=2018年12月24日
洗濯物と、のり干し台
「昭和の家事」研究し当時の人の姿勢を作画に 浦谷
戦争がこわす
小泉さんは「この世界の片隅に」について、時代考証をていねいにしており、人物が魅力的だと感想をのべました。「くらしを一番破壊するものが戦争です。映画のすずさんも、うちのスズさんも政治のことなんか考えず、家族のために淡々と家事をする、愛情深い女性でした。何も知らずに、どんどん戦争に巻き込まれていきました。私たちは“これではだめだな”と考えなきゃいけないと思いました」
「映画『この世界の片隅に』~すずさんのおうち展」は、アニメの複製原画、制作ノート、参考にした資料などを紹介しています。また、映画に登場する家具や道具を中心に“すずさんのおうち”を再現。庭には、のり干し台や洗濯道具などがあります。5月6日(月・祝)まで(開館日"金・土・日曜日、祝日)。連絡先:O3(3750)1808
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月16日付掲載
昭和の庶民のくらしをリアルに再現。映画「この世界の片隅に」の世界を再現してるって貴重ですね。
すずさんが、食糧不足の中でも野草なども使っての慎ましいくらしの再現。
東京・大田区の「昭和のくらし博物館」で「映画『この世界の片隅に』~すずさんのおうち展」を開催中です。映画は太平洋戦争中の1944年(昭和19年)、軍港の町・広島県呉を舞台に、18歳の主人公・北條すずの日常生活を描いたアニメーションです。特別展記念で、同館長の小泉和子さんと同映画の監督・片渕須直さん、監督補の浦谷千恵さんがトークしました。 (武田祐一)
記念トーク
小泉和子 昭和のくらし博物館館長
×
片渕須直監督・浦谷千恵監督補
料理をするすずさん=©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
広島で発掘「誰々さんのお宅」に意味が 片渕
「私の母の名はスズで、スズの妹はリンなんです」と小泉さん。映画の主人公すずと、登場人物のりんと同じ名前という縁もあり「2人の“すずさんのおうち”ということで、この展覧会の名前にしました」と紹介しました。
小泉さんは全国各地の重要文化財の修復などに携わっています。「家具や室内意匠・住宅の歴史の研究が本職です。でも古い建物の監修をしているうちに、時代考証などをやるようになりました」
映画にでてくる戦争中の食事の再現
「人が住み・暮らす」ひっくるめて住宅 小泉
何度も通った
片渕さんは「映画を作る際に昭和19年、20年の生活史を調べることになり、小泉さんと昭和のくらし博物館にお世話になりました」とあいさつしました。
片渕さんは、映画が公開された2016年、広島市に行きました。「平和記念公園にある平和記念資料館の耐震補強工事が行われていました。原爆で失われた中島本町のあった場所です。足元の土を取り除き、発掘作業をやっていて、牛乳屋さんや銭湯が出てきたんです。“誰々さんのお宅が出てきた”とか、グリコのおまけが出てきて“きっと誰々くんのだ”と話していました。“誰々さんのお宅なんだ”ということに、すごく大きな意味がある気がしました」
片渕さんは、これまでのアニメ制作で平安時代や昭和30年代のくらし、イギリスの生活史などの資料を調べる中で、小泉さんの著書に出合いました。同博物館に何度も足を運びました。
「“小泉さんのお宅”にお邪魔して、昭和の空気みたいなものをそのまま吸い込みに行っていたと思う」と語りました。
なぜ、くらしを残す博物館を作ったのかということについて、小泉さんは「住宅は人が住み、くらしていることを、ひっくるめてのもの。道具や、それを使う技術を残そうと思った」といいます。現代は便利になりすぎて、人々が家事能力を失っているといい「そのことが、人間を育てる力も失わせていると思う」と指摘しました。
洗濯板を使う様子や縫い物などの技を伝えるために、小泉さんの母スズさんの家事を記録した映画「昭和の家事」を作ったことも紹介。映画の一部を上映しました。
浦谷さんは、同博物館の「くらしの学校」に参加して昔ながらの家事を学びました。「昭和の家事」も研究し「この映画を見て(当時の人の)日常の姿勢を作画に生かしました。縫うときの背中が丸まったポーズなどもそうです」といいます。
記録映画「昭和の家事」洗濯の様子を見る参加者=2018年12月24日
洗濯物と、のり干し台
「昭和の家事」研究し当時の人の姿勢を作画に 浦谷
戦争がこわす
小泉さんは「この世界の片隅に」について、時代考証をていねいにしており、人物が魅力的だと感想をのべました。「くらしを一番破壊するものが戦争です。映画のすずさんも、うちのスズさんも政治のことなんか考えず、家族のために淡々と家事をする、愛情深い女性でした。何も知らずに、どんどん戦争に巻き込まれていきました。私たちは“これではだめだな”と考えなきゃいけないと思いました」
「映画『この世界の片隅に』~すずさんのおうち展」は、アニメの複製原画、制作ノート、参考にした資料などを紹介しています。また、映画に登場する家具や道具を中心に“すずさんのおうち”を再現。庭には、のり干し台や洗濯道具などがあります。5月6日(月・祝)まで(開館日"金・土・日曜日、祝日)。連絡先:O3(3750)1808
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月16日付掲載
昭和の庶民のくらしをリアルに再現。映画「この世界の片隅に」の世界を再現してるって貴重ですね。
すずさんが、食糧不足の中でも野草なども使っての慎ましいくらしの再現。
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