AI自動差別③ プロファイリング 個人守る規制が必要
ソフトバンク、LINE(ライン)、NTTドコモなど情報通信(IT)企業が競うように始めている信用スコアサービス。しかし、企業の思惑どおりに進んでいるわけではありません。
点評価に批判
ヤフージャパンが運営するヤフースコアに対しては、サービスについての説明不足や個人情報の目的外利用を批判する声が殺到。
インターネット上には「一律に情報提供状態にしておくとか悪質」「誰だって点数つけられるのいやです」「個人情報で商売するなんてありえない」といった書き込みがあふれました。
情報法制に関する政策提言をしている情報法制研究所理事の高木浩光さんは言います。
「ヤフースコアはみんなに嫌われたと思います。知恵袋での活躍度など、関係のない情報をもとに一つの数字で人を評価する仕組みが受け入れられなかったのです。知恵袋の利用規約にはデータをスコア算出に使うという説明はありません。個人情報保護法違反の目的外利用にあたる疑いがあります」
企業側はあきらめてはいません。ヤフーは「お客様に適したサービス等をご提供する」と規約にあるので「目的外利用にはあたらない」と強弁しています。ヤフースコアの今後の展開について「現在さまざまな領域での活用を視野に検討を進めています。確定次第、ご案内する予定です」と説明し、あくまで事業を推進する意向です。
フリーランスの仲介をするクラウドワークス社の広報担当者は話します。
「ヤフースコアとの連携は、声をかけられて実験的にやりましたが、対象者があまりおらず、うまくいきませんでした。現在は他のサービスを優先し、スコアリングをしていません」。しかし担当者はこう続けました。「利用者様にプラスになるなら、スコアリングをしなくていいとは思っていません」
ヤフー本社が入っているビル=東京都内
EU規則施行
本当に「利用者本位」が貫かれるのか。むしろ現実には、利益最優先の企業によって個人情報が食い物にされています。人権侵害に対抗するため、世界では個人情報保護の取り組みが進んでいます。欧州連合(EU)は昨年5月に一般データ保護規則(GDPR)を施行しました。個人情報保護の仕組みを抜本的に強化しました。
GDPRは「人間の尊厳」の観点から個人のデータの保護に関して自然人が持つ権利を明確にしました。「プロファイリングなど個人データの自動処理だけで決定されない権利」や「管理者に対し遅滞なく自らに関する個人データを削除してもらう権利」などを定めています。プロファイリングとは、個人情報を人工知能(AI)などの自動処理によって分析し、個人の人物像を推測して、評価・差別・選別を行う手法を指します。
日本は消極的
安倍晋三政権は来年、個人情報保護法を改定するための議論を進めています。4月には個人情報保護法の中間整理を公表しました。
漏えい報告の義務化や仮名化の導入などが検討されています。しかし、プロファイリングへの規制やデータを削除する権利の導入には後ろ向きです。高木さんは言います。
「リクナビが内定辞退率を勝手に算出して第三者に販売していたことがわかり、不正確な情報に基づいてコンピューターによる自動処理で個人の選別を行うプロファイリングの危うさがはっきりと示されました。来年の個人情報保護法改正の中では、プロファイリングからの保護を法の目的として位置づけ、しっかり規制をしていく必要があります。個人データの利用目的に関する事業者の公表義務を強め、プロファイリングをしているかどうかを具体的に書かせるべきです。それが分からなければ個人は拒否することもできません」
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年8月24日付掲載
IT企業のプロファイリングやスコアリング。
「利便性」と引き換えに許しているユーザ側の実態。実際はIT企業に利用されてしまってるのだが。
ユーザが受益していると思っている情報も、企業側のフィルタリングがかかっているもの。
ソフトバンク、LINE(ライン)、NTTドコモなど情報通信(IT)企業が競うように始めている信用スコアサービス。しかし、企業の思惑どおりに進んでいるわけではありません。
点評価に批判
ヤフージャパンが運営するヤフースコアに対しては、サービスについての説明不足や個人情報の目的外利用を批判する声が殺到。
インターネット上には「一律に情報提供状態にしておくとか悪質」「誰だって点数つけられるのいやです」「個人情報で商売するなんてありえない」といった書き込みがあふれました。
情報法制に関する政策提言をしている情報法制研究所理事の高木浩光さんは言います。
「ヤフースコアはみんなに嫌われたと思います。知恵袋での活躍度など、関係のない情報をもとに一つの数字で人を評価する仕組みが受け入れられなかったのです。知恵袋の利用規約にはデータをスコア算出に使うという説明はありません。個人情報保護法違反の目的外利用にあたる疑いがあります」
企業側はあきらめてはいません。ヤフーは「お客様に適したサービス等をご提供する」と規約にあるので「目的外利用にはあたらない」と強弁しています。ヤフースコアの今後の展開について「現在さまざまな領域での活用を視野に検討を進めています。確定次第、ご案内する予定です」と説明し、あくまで事業を推進する意向です。
フリーランスの仲介をするクラウドワークス社の広報担当者は話します。
「ヤフースコアとの連携は、声をかけられて実験的にやりましたが、対象者があまりおらず、うまくいきませんでした。現在は他のサービスを優先し、スコアリングをしていません」。しかし担当者はこう続けました。「利用者様にプラスになるなら、スコアリングをしなくていいとは思っていません」
ヤフー本社が入っているビル=東京都内
EU規則施行
本当に「利用者本位」が貫かれるのか。むしろ現実には、利益最優先の企業によって個人情報が食い物にされています。人権侵害に対抗するため、世界では個人情報保護の取り組みが進んでいます。欧州連合(EU)は昨年5月に一般データ保護規則(GDPR)を施行しました。個人情報保護の仕組みを抜本的に強化しました。
GDPRは「人間の尊厳」の観点から個人のデータの保護に関して自然人が持つ権利を明確にしました。「プロファイリングなど個人データの自動処理だけで決定されない権利」や「管理者に対し遅滞なく自らに関する個人データを削除してもらう権利」などを定めています。プロファイリングとは、個人情報を人工知能(AI)などの自動処理によって分析し、個人の人物像を推測して、評価・差別・選別を行う手法を指します。
日本は消極的
安倍晋三政権は来年、個人情報保護法を改定するための議論を進めています。4月には個人情報保護法の中間整理を公表しました。
漏えい報告の義務化や仮名化の導入などが検討されています。しかし、プロファイリングへの規制やデータを削除する権利の導入には後ろ向きです。高木さんは言います。
「リクナビが内定辞退率を勝手に算出して第三者に販売していたことがわかり、不正確な情報に基づいてコンピューターによる自動処理で個人の選別を行うプロファイリングの危うさがはっきりと示されました。来年の個人情報保護法改正の中では、プロファイリングからの保護を法の目的として位置づけ、しっかり規制をしていく必要があります。個人データの利用目的に関する事業者の公表義務を強め、プロファイリングをしているかどうかを具体的に書かせるべきです。それが分からなければ個人は拒否することもできません」
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年8月24日付掲載
IT企業のプロファイリングやスコアリング。
「利便性」と引き換えに許しているユーザ側の実態。実際はIT企業に利用されてしまってるのだが。
ユーザが受益していると思っている情報も、企業側のフィルタリングがかかっているもの。
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