不安定さ増す金融市場② 異次元リスク抱えて
群馬大名誉教授 山田博文さん
世界はリーマン・ショック後の緩和マネーによるバブル景気の転換期を迎えているようです。日本とて例外ではありません。むしろ異次元金融緩和に暴走し、出口すら示そうとしない「アベノミクス・バブル」の崩壊は、予測不能の異次元リスクとなって日本の経済社会にのしかかっているようです。
政権の掲げる目標はことごとく失敗してきましたが、大手の企業や金融機関・投資家・富裕層が期待する株価だけ大幅につり上げたのがアベノミクス(安倍政権の経済政策)です。
第2次安倍政権誕生前の2012年の日経平均株価は1万円前後で推移していましたが、18年現在では2万円を大幅に超過しました。つまり安倍政権下で株価は2倍以上も高くなりました。
しかし肝心の経済は横ばいのままです。国内総生産(GDP)は499兆円から537兆円へ、1・07倍しか増えていません。賃金カットと消費税増税など、消費不況に起因する長期的な経済停滞が放置されたままです。
株価を2倍以上につり上げたアベノミクスの恩恵は、株式を金融資産として保有する大企業、金融機関、投資家、富裕層に集中しました。値上がりした保有株の一部を売却した利益は決算対策に利用され、新規の投資マネーに組み込まれました。また高額商品の購入に向けられ、格差はさらに拡大しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/ec/c87625342bff7c50a51c74ed8f030761.jpg)
東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区(ロイター)
株式を買い支え
「株価連動内閣」とやゆされる第2次安倍政権は、株価をつり上げ、高値を維持するため、株価対策を実施してきました。
それは日本銀行と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に株式を買わせることでした。株高のカラクリはここにあります。
アベノミクスの「第1の矢」である異次元金融緩和は、量的緩和(QE)と質的緩和からなります。質的緩和とは日銀に株を買わせることであり、世界の中央銀行が避けてきたことです。日銀は株価連動型上場投資信託(ETF)を現在、年間6兆円も買い、日本株の4%にあたる約25兆円の株式を保有しています。
また厚労省所管のGPIFは、内外の株式への運用枠をそれぞれ12%から25%へ2倍以上拡大しました。約161兆円の世界最大の年金資産を運用するGPIFは市場関係者から「クジラ」と呼ばれ、国内株を41兆円、約2300銘柄を保有し、東証1部上場企業の多くで大株主になっています。
安倍政権下の株高は、日銀とGPIFの2頭のクジラが合計約66兆円、株式時価総額の10%を超える株式を買い支えた官製相場といえます。
日銀と年金直撃
株価が下降局面に入ると、株価を維持するため2頭のクジラは巨額の株を買い入れ、人為的な株式需要をつくりだしてきました。
すでに日銀は量的緩和のため買い入れた国債を約450兆円保有していますが、国債よりリスクの高い株式をさらに約25兆円追加してしまいました。国債や株式価格が下落すると、日銀には巨額の損失が発生し、日銀信用は毀損(きそん)し、急激な円安やインフレが日本経済を襲うことになります。
またGPIFが買い入れている株式は国内株だけではありません。バブル景気に沸く米IT(情報技術)大手企業(GAFAログーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の関連株式なども約40兆円保有しています。内外の株価下落は年金積立金を直撃します。10%の株価下落だけで8兆~10兆円の損失をもたらし、年金という生活資金が株式市場の泡となって消滅します。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月3日付掲載
企業や投資家が、企業への投資ではなくって目先の利益のためだけにする株式の売り買い。それでも経済が翻弄されるのだか…。
日銀と年金という公的資金を投入して株価のつり上げ。まさに官製ファンドだ。
それも、買いさされなくなって暴落すると、円の価値が下がり(円安)に。今は1ドル113円ぐらいだが、1ドル150円、200円に。日本経済は大混乱。
群馬大名誉教授 山田博文さん
世界はリーマン・ショック後の緩和マネーによるバブル景気の転換期を迎えているようです。日本とて例外ではありません。むしろ異次元金融緩和に暴走し、出口すら示そうとしない「アベノミクス・バブル」の崩壊は、予測不能の異次元リスクとなって日本の経済社会にのしかかっているようです。
政権の掲げる目標はことごとく失敗してきましたが、大手の企業や金融機関・投資家・富裕層が期待する株価だけ大幅につり上げたのがアベノミクス(安倍政権の経済政策)です。
第2次安倍政権誕生前の2012年の日経平均株価は1万円前後で推移していましたが、18年現在では2万円を大幅に超過しました。つまり安倍政権下で株価は2倍以上も高くなりました。
しかし肝心の経済は横ばいのままです。国内総生産(GDP)は499兆円から537兆円へ、1・07倍しか増えていません。賃金カットと消費税増税など、消費不況に起因する長期的な経済停滞が放置されたままです。
株価を2倍以上につり上げたアベノミクスの恩恵は、株式を金融資産として保有する大企業、金融機関、投資家、富裕層に集中しました。値上がりした保有株の一部を売却した利益は決算対策に利用され、新規の投資マネーに組み込まれました。また高額商品の購入に向けられ、格差はさらに拡大しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/ec/c87625342bff7c50a51c74ed8f030761.jpg)
東京証券取引所のマーケットセンター=東京都中央区(ロイター)
株式を買い支え
「株価連動内閣」とやゆされる第2次安倍政権は、株価をつり上げ、高値を維持するため、株価対策を実施してきました。
それは日本銀行と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に株式を買わせることでした。株高のカラクリはここにあります。
アベノミクスの「第1の矢」である異次元金融緩和は、量的緩和(QE)と質的緩和からなります。質的緩和とは日銀に株を買わせることであり、世界の中央銀行が避けてきたことです。日銀は株価連動型上場投資信託(ETF)を現在、年間6兆円も買い、日本株の4%にあたる約25兆円の株式を保有しています。
また厚労省所管のGPIFは、内外の株式への運用枠をそれぞれ12%から25%へ2倍以上拡大しました。約161兆円の世界最大の年金資産を運用するGPIFは市場関係者から「クジラ」と呼ばれ、国内株を41兆円、約2300銘柄を保有し、東証1部上場企業の多くで大株主になっています。
安倍政権下の株高は、日銀とGPIFの2頭のクジラが合計約66兆円、株式時価総額の10%を超える株式を買い支えた官製相場といえます。
日銀と年金直撃
株価が下降局面に入ると、株価を維持するため2頭のクジラは巨額の株を買い入れ、人為的な株式需要をつくりだしてきました。
すでに日銀は量的緩和のため買い入れた国債を約450兆円保有していますが、国債よりリスクの高い株式をさらに約25兆円追加してしまいました。国債や株式価格が下落すると、日銀には巨額の損失が発生し、日銀信用は毀損(きそん)し、急激な円安やインフレが日本経済を襲うことになります。
またGPIFが買い入れている株式は国内株だけではありません。バブル景気に沸く米IT(情報技術)大手企業(GAFAログーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の関連株式なども約40兆円保有しています。内外の株価下落は年金積立金を直撃します。10%の株価下落だけで8兆~10兆円の損失をもたらし、年金という生活資金が株式市場の泡となって消滅します。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年11月3日付掲載
企業や投資家が、企業への投資ではなくって目先の利益のためだけにする株式の売り買い。それでも経済が翻弄されるのだか…。
日銀と年金という公的資金を投入して株価のつり上げ。まさに官製ファンドだ。
それも、買いさされなくなって暴落すると、円の価値が下がり(円安)に。今は1ドル113円ぐらいだが、1ドル150円、200円に。日本経済は大混乱。
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