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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

課税新時代② 横浜市立大学教授・上村雄彦さんに聞く 「いましかない」とNGO

2021-04-10 07:05:17 | 予算・税金・消費税・社会保障など
課税新時代② 横浜市立大学教授・上村雄彦さんに聞く 「いましかない」とNGO
―グローバル・タックスは3本の柱に整理できるそうですね。
第1の柱は、各国の課税当局が所得や資産などの課税情報を共有してタックスヘイブン(租税回避地)をなくしていくことです。
個人レベルでは、非居住者の金融口座情報を各国の課税当局が共有するための「自動的情報交換(AEOI)」制度ができています。2014年に経済協力開発機構(OECD)が国際基準を公表し、日本では17年から実施されています。
私もタックスヘイブンのスイスに半年間住んだときに経験しました。銀行口座をつくろうとしたら、「あなたの銀行口座の情報はあなたの国の課税当局に知られます」という契約書にサインを求められました。応じないと口座をつくれません。
AEOIにはほどんどの国が加盟していますから、どこにいようとも日本人の金融口座情報は国税庁に把握されるということです。



温暖化防止をアピールするシューズアクション参加者=2020年9月25日、国会正門前

ルールを共通化
多国籍企業に対してはOECDを中心に同様の取り組みが進んでいます。多国籍企業がどの国でどんな活動をしてどれだけの売り上げがあるか、すべて報告させています。さらに企業の所得の定義などのルールを世界で共通化して適正な課税をしようとしています。
これらはグローバル・タックス全体の土台をつくる作業とも位置付けられます。課税に必要な課税ベースの情報を把握し、ルールを共通化して、地球規模で課税するための条件を整えるのです。そのうえで国境を越えた革新的な税制を導入していくわけです。
―さまざまなグローバル・タックスの実現が第2の柱です。現時点で重要な税制は?
3種類あります。金融取引税、デジタル課税、地球炭素税です。
欧州連合(EU)ではフランスとイタリアがすでに金融取引税を導入し、10力国が導入のための交渉を続けています。1月からポルトガルがEUの議長国になり、EU全体で実施しよう。と積極的に動き始めています。
フランスとイタリアの金融取引税は株式の取引に絞って課税するものです。ポルトガルはデリバティブ(金融派生商品)取引にも課税できないかと提案しています。これには欧州のNGOが「ナウ・アンド・ネバー(いましかない)」という言葉で支持を表明しています。債券や通貨を含むあらゆる金融商品の取引に課税する包括的な金融取引税を求めるものの、第一歩としてポルトガル案を後押しするといっています。
EUは2024年までに欧州復興基金の財源案をつくって26年から導入するという計画を示しています。金融取引税が浮上する可能性はあります。

よいアイデアも
金融取引税の一種である通貨取引税(トービン税)は日本でも議論されています。ただし東京だけで課税したら資本が海外に逃げるから世界で一斉にやらなければ実施できないとの批判があります。この点ではよいアイデアがあります。フランス主導で開発資金の創出のあり方を検討した「革新的開発資金に関するリーディング・グループ」の専門家委員会の案です。
現在ほとんどの通貨取引は多通貨同時決済銀行を通して行われています。時差のせいで決済価格が変動するリスクを避けるため、どんな通貨の取引でも同時に決済する銀行をつくったのです。そこでは通貨取引のたびに手数料をとるので、同時に税金を徴収すれば、資本逃避の可能性は消えてなくなります。改めて検討する価値があるアイデアです。
デジタル経済への課税については、多国籍企業が世界であげた利益を合算し、全体利益を把握する方式(合算課税)が検討されています。その税収の一部を感染症対策などの地球規模課題に回せば、新しいグローバル・タックスになります。
二酸化炭素の排出に課税する地球炭素税は各国レベルですでに導入されています。新たに共通の国際課税ルールをつくり、気候危機対策のために活動している緑の気候基金の財源にしたらよいと考えます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月7日付掲載


各国の課税当局が所得や資産などの課税情報を共有してタックスヘイブン(租税回避地)をなくす。具体的には、金融取引税、デジタル課税、地球炭素税などなど考案されている。

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