法人税減税の実態④ 大企業に隠れた補助金
不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
消費税導入後35年、法人税率は半分に減税された上、大企業はその法人税の半分しか負担していない実態を見てきました。
大企業減税の原因は何でしょうか。「租税特別措置」といわれるさまざまな大企業優遇税制です。特定の者がもっぱら優遇を受ける租税特別措置とはどういうものでしょうか。
租税特別措置
税法学者の北野弘久日大名誉教授(故人)は次のように述べていました。
「租税特別措置とは、広く合理的な理由なしに憲法の応能負担原則を犠牲にして、特定の納税者の税負担を傾斜的に軽減する措置を意味する。
この意味における租税特別措置は、単に租税特別措置法において規定するものだけではない。法人税法において規定するものも租税特別措置を構成する」(「納税者の権利」岩波新書)
つづけてその具体例として、租税特別措置法における研究開発費減税や、法人税法における受取配当益金不算入などをあげています。
朝日新聞(2024年4月19日付)は「法人税優遇、減収2・3兆円」「大企業偏重との分析も」という見出しで、財務省発表の数字に基づいて租税特別措置法による減税(いわゆる政策減税)の問題点について報道しました。
研究開発減税や賃上げ減税について「投資額などに応じて減税規模が大きくなるため、結果として大企業に恩恵が偏る傾向がある。企業全体の約0・2%しかない『資本金100億円超』の企業が研究開発減税の約65%、賃上げ減税の約24%を占めている」と指摘しました。
2021年度の大企業減税額の試算
(1)租税特別措置による大企業の減税額
財務省「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」、国税庁「会社標本調査結果」(税務統計から見た法人企業の実態)、「2021事務年度、法人税等の申告(課税)実績の概要」から菅隆徳税理士が計算、作成。
1年約6兆円
同時に、法人税法でも膨大な「租税特別措置」がなされています。具体的には、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入、連結納税です。租税特別措置は大企業に対する「隠れた補助金」なのです。
では、租税特別措置による大企業の減税額は一体いくらあるのでしょうか。21年度について、財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」、国税庁の「会社標本調査」(税務統計から見た法人企業の実態)などからみました(表)。大企業というのは資本金10億円超の大法人と連結法人のことです。
減税額は租税特別措置法関係で1兆2374億円、法人税法関係で4兆6885億円、合計で5兆9259億円にも達しています。
ちなみに、21年度の法人税収は14兆円ですから、いかに多額な大企業減税が行われているかわかります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月10日付掲載
租税特別措置は、単に租税特別措置法において規定するものだけではない。法人税法において規定するものも租税特別措置を構成する」(「納税者の権利」岩波新書)
つづけてその具体例として、租税特別措置法における研究開発費減税や、法人税法における受取配当益金不算入などを。
朝日新聞(2024年4月19日付)は「法人税優遇、減収2・3兆円」「大企業偏重との分析も」という見出しで、財務省発表の数字に基づいて租税特別措置法による減税(いわゆる政策減税)の問題点について報道。
法人税法でも膨大な「租税特別措置」がなされています。具体的には、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入、連結納税です。租税特別措置は大企業に対する「隠れた補助金」なのです。
不公平な税制をただす会共同代表・税理士 菅隆徳さん
消費税導入後35年、法人税率は半分に減税された上、大企業はその法人税の半分しか負担していない実態を見てきました。
大企業減税の原因は何でしょうか。「租税特別措置」といわれるさまざまな大企業優遇税制です。特定の者がもっぱら優遇を受ける租税特別措置とはどういうものでしょうか。
租税特別措置
税法学者の北野弘久日大名誉教授(故人)は次のように述べていました。
「租税特別措置とは、広く合理的な理由なしに憲法の応能負担原則を犠牲にして、特定の納税者の税負担を傾斜的に軽減する措置を意味する。
この意味における租税特別措置は、単に租税特別措置法において規定するものだけではない。法人税法において規定するものも租税特別措置を構成する」(「納税者の権利」岩波新書)
つづけてその具体例として、租税特別措置法における研究開発費減税や、法人税法における受取配当益金不算入などをあげています。
朝日新聞(2024年4月19日付)は「法人税優遇、減収2・3兆円」「大企業偏重との分析も」という見出しで、財務省発表の数字に基づいて租税特別措置法による減税(いわゆる政策減税)の問題点について報道しました。
研究開発減税や賃上げ減税について「投資額などに応じて減税規模が大きくなるため、結果として大企業に恩恵が偏る傾向がある。企業全体の約0・2%しかない『資本金100億円超』の企業が研究開発減税の約65%、賃上げ減税の約24%を占めている」と指摘しました。
2021年度の大企業減税額の試算
(1)租税特別措置による大企業の減税額
減税項目 | 減税額 | 概要 | |
租税特別措置法関係 | 1兆2374億円 | 試験研究費の税額控除など | |
法人税法の租税特別措置 | 受取配当益金不算入 | 2兆3255億円 | 受取配当を利益から除き、減税するもの |
外国子会社配当益金不算入 | 1兆4483億円 | 外国籍企業の外国子会社からの配当の95%を利益から除く減税 | |
連結納税 | 9147億円 | 国内子会社の所得を親会社の所得と合算して法人税を計算する仕組み。連結納税グループ企業の中に赤字法人があると、各企業の黒字と赤字が相殺されるため課税所得が減り、個別に納税するより法人税が減税になる | |
合計① | 5兆9259億円 |
1年約6兆円
同時に、法人税法でも膨大な「租税特別措置」がなされています。具体的には、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入、連結納税です。租税特別措置は大企業に対する「隠れた補助金」なのです。
では、租税特別措置による大企業の減税額は一体いくらあるのでしょうか。21年度について、財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」、国税庁の「会社標本調査」(税務統計から見た法人企業の実態)などからみました(表)。大企業というのは資本金10億円超の大法人と連結法人のことです。
減税額は租税特別措置法関係で1兆2374億円、法人税法関係で4兆6885億円、合計で5兆9259億円にも達しています。
ちなみに、21年度の法人税収は14兆円ですから、いかに多額な大企業減税が行われているかわかります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月10日付掲載
租税特別措置は、単に租税特別措置法において規定するものだけではない。法人税法において規定するものも租税特別措置を構成する」(「納税者の権利」岩波新書)
つづけてその具体例として、租税特別措置法における研究開発費減税や、法人税法における受取配当益金不算入などを。
朝日新聞(2024年4月19日付)は「法人税優遇、減収2・3兆円」「大企業偏重との分析も」という見出しで、財務省発表の数字に基づいて租税特別措置法による減税(いわゆる政策減税)の問題点について報道。
法人税法でも膨大な「租税特別措置」がなされています。具体的には、受取配当益金不算入、外国子会社配当益金不算入、連結納税です。租税特別措置は大企業に対する「隠れた補助金」なのです。
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