「自治体消滅」批判③ 失敗認めた「地方創生」
2014年に公表された「消滅可能性都市」(増田レポート) は、当時の安倍政権の地方政策に大きな影響を与えました。それが「地方創生」です。
政府は全国の市区町村に「人ロビジョン」と「総合戦略」の策定を事実上強制し、政府があらかじめ設定した枠組みや基本目標に対応した施策に交付金を配分しました。今年は「地方創生」の取り組みが本格的に始まってから10年の節目に当たります。
内閣府は6月、「地方創生10年の取り組みと今後の推進方向」をまとめました。

岸田文雄首相も出席した「デジタル田園都市国家構想実現会議」=2023年6月2日、東京都千代田区(首相官邸HPより)
人ロの奪い合い
それによると、「国全体で見たときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」と指摘。「各自治体がそれぞれに人口増加を目指し、さまざまな施策を展開してきたが、成果があがっているケースも、多くは移住者の増加による『社会増』にとどまっており、地域間での『人口の奪い合い』になっている」などと反省の弁を述べています。
岸田政権は21年に「地方創生」の看板をかけ替え、「デジタル田園都市国家構想」を掲げました。デジタルによる地域の活性化を狙ったものですが、これもまた「東京一極集中の是正」を掲げながら、国のデジタル政策を中央集権的に地方に押し付ける方針ばかり出しています。
増田レポートから10年、当時「消滅可能性都市」とされた自治体は一つも消滅していません。市町村合併の機運が地方に広がることもありませんでした。
自己実現的予言
地方自治を専門とする政治学者で、日本の介護保険制度の骨格をつくった大森彌(わたる)東京大学名誉教授は生前、全国町村会が発行する「町村週報」(14年5月)で増田レポートについてこう指摘しています。
「自治体消滅といえば、『平成の大合併』で消滅した町村数は1600にも及んだ。人為的な市町村消滅は激しく大規模であった。市町村の最小人口規模が決まっていないにもかかわらず、自治体消滅の可能性が高まるというが、人口が減少すればするほど市町村の存在価値は高まるから消滅など起こらない。起こるとすれば、自治体消滅という最悪の事態を想定したがゆえに、人びとの気持ちがなえてしまい、そのすきに乗じて『撤退』を不可避だと思わせ、人為的に市町村を消滅させようとする動きが出てくる場合である。未来の予測を『自己実現的予言』にさせてはならない」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月21日付掲載
岸田政権は21年に「地方創生」の看板をかけ替え、「デジタル田園都市国家構想」を掲げました。デジタルによる地域の活性化を狙ったものですが、これもまた「東京一極集中の是正」を掲げながら、国のデジタル政策を中央集権的に地方に押し付ける方針ばかり。
市町村の最小人口規模が決まっていないにもかかわらず、自治体消滅の可能性が高まるというが、人口が減少すればするほど市町村の存在価値は高まるから消滅など起こらない。起こるとすれば、自治体消滅という最悪の事態を想定したがゆえに、人びとの気持ちがなえてしまい、そのすきに乗じて「撤退」を不可避だと思わせ、人為的に市町村を消滅させようとする動きが出てくる場合。
2014年に公表された「消滅可能性都市」(増田レポート) は、当時の安倍政権の地方政策に大きな影響を与えました。それが「地方創生」です。
政府は全国の市区町村に「人ロビジョン」と「総合戦略」の策定を事実上強制し、政府があらかじめ設定した枠組みや基本目標に対応した施策に交付金を配分しました。今年は「地方創生」の取り組みが本格的に始まってから10年の節目に当たります。
内閣府は6月、「地方創生10年の取り組みと今後の推進方向」をまとめました。

岸田文雄首相も出席した「デジタル田園都市国家構想実現会議」=2023年6月2日、東京都千代田区(首相官邸HPより)
人ロの奪い合い
それによると、「国全体で見たときに人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある」と指摘。「各自治体がそれぞれに人口増加を目指し、さまざまな施策を展開してきたが、成果があがっているケースも、多くは移住者の増加による『社会増』にとどまっており、地域間での『人口の奪い合い』になっている」などと反省の弁を述べています。
岸田政権は21年に「地方創生」の看板をかけ替え、「デジタル田園都市国家構想」を掲げました。デジタルによる地域の活性化を狙ったものですが、これもまた「東京一極集中の是正」を掲げながら、国のデジタル政策を中央集権的に地方に押し付ける方針ばかり出しています。
増田レポートから10年、当時「消滅可能性都市」とされた自治体は一つも消滅していません。市町村合併の機運が地方に広がることもありませんでした。
自己実現的予言
地方自治を専門とする政治学者で、日本の介護保険制度の骨格をつくった大森彌(わたる)東京大学名誉教授は生前、全国町村会が発行する「町村週報」(14年5月)で増田レポートについてこう指摘しています。
「自治体消滅といえば、『平成の大合併』で消滅した町村数は1600にも及んだ。人為的な市町村消滅は激しく大規模であった。市町村の最小人口規模が決まっていないにもかかわらず、自治体消滅の可能性が高まるというが、人口が減少すればするほど市町村の存在価値は高まるから消滅など起こらない。起こるとすれば、自治体消滅という最悪の事態を想定したがゆえに、人びとの気持ちがなえてしまい、そのすきに乗じて『撤退』を不可避だと思わせ、人為的に市町村を消滅させようとする動きが出てくる場合である。未来の予測を『自己実現的予言』にさせてはならない」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年8月21日付掲載
岸田政権は21年に「地方創生」の看板をかけ替え、「デジタル田園都市国家構想」を掲げました。デジタルによる地域の活性化を狙ったものですが、これもまた「東京一極集中の是正」を掲げながら、国のデジタル政策を中央集権的に地方に押し付ける方針ばかり。
市町村の最小人口規模が決まっていないにもかかわらず、自治体消滅の可能性が高まるというが、人口が減少すればするほど市町村の存在価値は高まるから消滅など起こらない。起こるとすれば、自治体消滅という最悪の事態を想定したがゆえに、人びとの気持ちがなえてしまい、そのすきに乗じて「撤退」を不可避だと思わせ、人為的に市町村を消滅させようとする動きが出てくる場合。
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