経済政策総点検 骨太方針と成長戦略 ⑩ エネルギー 露骨な原発回帰方針
骨太方針は、エネルギー安全保障と脱炭素を口実に、原発回帰を露骨に打ち出しています。原発の再稼働と次世代革新炉の開発・建設、「廃炉を決定した原発の敷地丙での建て替えの具体化」を進めると明記。次世代革新炉と建て替えに関する記述は2023年の骨太方針から盛り込まれるようになったものです。
岸田文雄政権の原発回帰を受け、財界や投資家の熱量も上がっています。東京電力をはじめ原発を保有する大手電力の株価が春から大幅に上昇。経団連は7月19日まで開いた「夏季フォーラム」で「(原発の)再稼働、新増設・リプレース計画の具体化を急ぐ」よう求める提言をまとめ、その場で岸田首相に手渡しました。
女川原発の再稼働反対と廃炉を訴えて町内をデモ行進する人たち=7月7日、宮城県女川町
特定企業を優遇
骨太方針は、24年度中をめどに「GX国家戦略」を策定するとともに、「エネルギー基本計画」と「地球温暖化対策計画」を改定するとしています。
GX(グリーントランスフォーメーション)は化石燃料に依存した社会を転換することです。しかし、岸田政権のGXは、電気自動車やグリーンスチール(鉄鋼)、グリーンケミカル(化学製品)など特定の大企業に対する税制優遇が中心です。
現行の「エネルギー基本計画」は、30年の発電電力量に占める原発の比率を20~22%と見込んでいます。22年度の原発比率5・5%の4倍です。世界では再生可能エネルギー100%を達成する国も出てきているのに、同計画の日本の30年の再エネ比率は36~38%にとどまります。原発や火力発電を優先するため、再エネの導入を抑制しているからです。GX国家戦略の策定やエネルギー基本計画の改定をめぐる動向に注意が必要です。
岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は、石炭に水素やアンモニアを混ぜて使う火力発電の混焼技術の開発推進を掲げています。混焼による温室効果ガス排出の削減効果は極めて限定的です。主要7力国(G7)のうち日本以外の6力国は、温室効果ガスを大量に排出する石炭火発の廃止年限をすでに明示しており、石炭火発に固執する岸田政権の姿勢は世界でも異常です。
原発は東京電力福島第1原発事故はじめ重大事故を繰り返し、そのたびに火力発電の稼働率を高める結果を招いてきました。原発回帰は危険なだけでなく、電力の安定供給や脱炭素にも逆行します。
再エネこそ本道
岸田政権は、石炭について「調達に係る地政学リスクが最も低く」「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」(エネルギー基本計画)と位置づけてきました。しかし、ロシアのウクライナ侵略を契機とした価格高騰や円安によって電気料金値上げの一因となっています。
再エネは温室効果ガスを排出せず、地政学リスクや為替変動の影響も受けません。エネルギー安全保障や脱炭素というなら、再エネの抜本的な普及促進こそ本道です。(佐久間亮)
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月31日付掲載
骨太方針は、エネルギー安全保障と脱炭素を口実に、原発回帰を露骨に打ち出し。原発の再稼働と次世代革新炉の開発・建設、「廃炉を決定した原発の敷地丙での建て替えの具体化」を進めると明記。次世代革新炉と建て替えに関する記述は2023年の骨太方針から盛り込まれるようになったもの。
現行の「エネルギー基本計画」は、30年の発電電力量に占める原発の比率を20~22%と見込んでいます。22年度の原発比率5・5%の4倍。世界では再生可能エネルギー100%を達成する国も出てきているのに、同計画の日本の30年の再エネ比率は36~38%にとどまります。原発や火力発電を優先するため、再エネの導入を抑制しているから。
再エネは温室効果ガスを排出せず、地政学リスクや為替変動の影響も受けません。エネルギー安全保障や脱炭素というなら、再エネの抜本的な普及促進こそ本道。
骨太方針は、エネルギー安全保障と脱炭素を口実に、原発回帰を露骨に打ち出しています。原発の再稼働と次世代革新炉の開発・建設、「廃炉を決定した原発の敷地丙での建て替えの具体化」を進めると明記。次世代革新炉と建て替えに関する記述は2023年の骨太方針から盛り込まれるようになったものです。
岸田文雄政権の原発回帰を受け、財界や投資家の熱量も上がっています。東京電力をはじめ原発を保有する大手電力の株価が春から大幅に上昇。経団連は7月19日まで開いた「夏季フォーラム」で「(原発の)再稼働、新増設・リプレース計画の具体化を急ぐ」よう求める提言をまとめ、その場で岸田首相に手渡しました。
女川原発の再稼働反対と廃炉を訴えて町内をデモ行進する人たち=7月7日、宮城県女川町
特定企業を優遇
骨太方針は、24年度中をめどに「GX国家戦略」を策定するとともに、「エネルギー基本計画」と「地球温暖化対策計画」を改定するとしています。
GX(グリーントランスフォーメーション)は化石燃料に依存した社会を転換することです。しかし、岸田政権のGXは、電気自動車やグリーンスチール(鉄鋼)、グリーンケミカル(化学製品)など特定の大企業に対する税制優遇が中心です。
現行の「エネルギー基本計画」は、30年の発電電力量に占める原発の比率を20~22%と見込んでいます。22年度の原発比率5・5%の4倍です。世界では再生可能エネルギー100%を達成する国も出てきているのに、同計画の日本の30年の再エネ比率は36~38%にとどまります。原発や火力発電を優先するため、再エネの導入を抑制しているからです。GX国家戦略の策定やエネルギー基本計画の改定をめぐる動向に注意が必要です。
岸田政権の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は、石炭に水素やアンモニアを混ぜて使う火力発電の混焼技術の開発推進を掲げています。混焼による温室効果ガス排出の削減効果は極めて限定的です。主要7力国(G7)のうち日本以外の6力国は、温室効果ガスを大量に排出する石炭火発の廃止年限をすでに明示しており、石炭火発に固執する岸田政権の姿勢は世界でも異常です。
原発は東京電力福島第1原発事故はじめ重大事故を繰り返し、そのたびに火力発電の稼働率を高める結果を招いてきました。原発回帰は危険なだけでなく、電力の安定供給や脱炭素にも逆行します。
再エネこそ本道
岸田政権は、石炭について「調達に係る地政学リスクが最も低く」「安定供給性や経済性に優れた重要なエネルギー源」(エネルギー基本計画)と位置づけてきました。しかし、ロシアのウクライナ侵略を契機とした価格高騰や円安によって電気料金値上げの一因となっています。
再エネは温室効果ガスを排出せず、地政学リスクや為替変動の影響も受けません。エネルギー安全保障や脱炭素というなら、再エネの抜本的な普及促進こそ本道です。(佐久間亮)
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月31日付掲載
骨太方針は、エネルギー安全保障と脱炭素を口実に、原発回帰を露骨に打ち出し。原発の再稼働と次世代革新炉の開発・建設、「廃炉を決定した原発の敷地丙での建て替えの具体化」を進めると明記。次世代革新炉と建て替えに関する記述は2023年の骨太方針から盛り込まれるようになったもの。
現行の「エネルギー基本計画」は、30年の発電電力量に占める原発の比率を20~22%と見込んでいます。22年度の原発比率5・5%の4倍。世界では再生可能エネルギー100%を達成する国も出てきているのに、同計画の日本の30年の再エネ比率は36~38%にとどまります。原発や火力発電を優先するため、再エネの導入を抑制しているから。
再エネは温室効果ガスを排出せず、地政学リスクや為替変動の影響も受けません。エネルギー安全保障や脱炭素というなら、再エネの抜本的な普及促進こそ本道。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます