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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 財界主導の大学改革① 受益者負担主義で学費高騰

2024-07-03 07:08:15 | 政治・社会問題について
検証 財界主導の大学改革① 受益者負担主義で学費高騰

「学費値上げか、無償化か」―。東京大学が学費値上げを検討していることが明らかになり、学生たちが反対の声をあげています。文部科学省の中央教育審議会では、学費値上げの大合唱が起きています。自民党の教育・人材力強化調査会も「教育コストの増加をふまえて国立大学の授業料の適正化」を提言し、学費値上げを後押ししました(5月23日)。背景には財界の要求があります。
(土井誠 党学術・文化委員会事務局長)

学費値上げの大合唱の急先鋒(せんぽう)となったのは伊藤公平・慶応義塾長でした。中教審の高等教育のあり方に関する特別部会で、国立大学の授業料を約54万円から150万円程度に値上げして、私立大学との公正な競争環境をつくるべきだと提案しました。伊藤氏は私立大学への公財政支出が学生1人当たり18万円にすぎず、国立大学には約13倍の229万円を支出していると問題にしています。
1975年の私立学校振興助成法成立時の全会一致の国会の付帯決議では、経常費2分の1の補助の速やかな達成を目指すとされました。しかし、経常費補助は11・4%にとどまっています(2022年度)。公正というなら、なぜ私大への公財政支出を増やすことを求めないのでしょうか。




予算増認めない
伊藤氏の主張は、「イコールフッティング」(競争条件の平等化)を求め、高等教育予算の増額を認めない財界の主張そのものです。経団連は、01年6月の提言「科学技術戦略の変革に向けて」で、国立大学の独立行政法人化とともに、私立大・国立大のイコールフッティングを要求。22年1月の大学教育改革の提言でも、私大にも国立大学にも“自らの努力と裁量で外部資金の獲得を拡大しろ”と迫るのみで、政府に対して高等教育の予算増は求めていません。
そもそも、大学予算を抑制し、学費を高騰させた原因は、財界が1971年に持ち込んだ「受益者負担主義」にあります。
戦後、憲法の教育を受ける権利を保障するために、教育費負担の原則は「設置者負担主義」(学校教育法第五条)とされ、国の財政責任を明確にしました。

先進国最低水準
ところが、財界が「教育は投資だ」と主張し、それによって「利益」を得る学生が学費を払うのは当たり前だとして、中央教育審議会答申に「受益者負担主義」を持ち込みました。これにより、国立大学の授業料は71年の1万2千円から、2005年には53万5800円(標準額)へと45倍に高騰しました。私大の授業料(平均)は同期間に9万610円から95万9205円へと10倍化しました。学費値上げにより、大学の経常費における家計負担が増え続け、家計が国よりも多く負担する逆転現象がおきました。
このため、日本の高等教育予算は先進国の中で最低水準に陥ったのです。高等教育機関に対する公財政支出はGDP比でわずか0・5%にすぎず、経済協力開発機構(OECD)平均0・9%の約半分です。逆に、私費負担は0・9%で、OECD平均0・5%の倍近くになっています。
これが日本社会にさまざまなゆがみをもたらしています。財界主導の大学改革を転換させるときを迎えています。
(つづく)(4回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月2日付掲載


学費値上げの大合唱の急先鋒(せんぽう)となったのは伊藤公平・慶応義塾長。中教審の高等教育のあり方に関する特別部会で、国立大学の授業料を約54万円から150万円程度に値上げして、私立大学との公正な競争環境をつくるべきだと提案。
伊藤氏の主張は、「イコールフッティング」(競争条件の平等化)を求め、高等教育予算の増額を認めない財界の主張そのもの。
戦後、もともとは憲法の教育を受ける権利を保障するために、教育費負担の原則は「設置者負担主義」(学校教育法第五条)とされ、国の財政責任を明確。それが「受益者負担」に変質。

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