梅雨ってなんだっけ? 大雨による災害も激甚化
しとしと、ジメジメの梅雨がやってきました。昨今では、強い雨をもたらす「線状降水帯」が発生して大きな被害が出るなど、梅雨の様相が変わっています。そもそも梅雨って何?気象予報士の佐々木恭子さんに書いてもらいました。
気象予報士 佐々木恭子さん
ささき きょうこ 神奈川県出身。合同会社「てんコロ.」代表。
予報業務に加えて、気象予報士資格取得スクールやスキルアップ講座など主催。著書に『天気でわかる日本の四季』(新日本出版社)など。
日本には四季がありますが、5月~7月は曇りや雨の日が多くなる「梅雨」があり、五つめの季節という捉え方もあります。なぜ、梅雨があるのでしょうか。
この時期、日本付近では、冷たく湿った空気の塊であるオホーツク海高気圧と、暖かく湿った空気の塊である太平洋高気圧が押し合い、両者の間には梅雨前線と呼ばれる停滞前線が作られます。(図1)
図1 梅雨前線のしくみ
『もっとすごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)から
前線停滞する時期
前線は暖気と寒気の境目で、湿った空気が上昇して雲ができ、雨の降りやすい場所です。このような前線が停滞する時期になるため、梅雨があるのです。
気象庁は、現在までの状況と1週間先までの見通しをもとに、梅雨入り・梅雨明けを発表しますが、これは確定値ではありません。9月に春から夏の天候経過を検討して、確定・修正します。
一口に梅雨といっても、雨の降り方は前線の北側と南側で異なります。それは、雨をもたらす雲の種類が異なるためです。前線の北側では、横方向に広がる「乱層雲」によって、広くシトシト雨が降り続くことが多いです。一方、太平洋高気圧の縁を回って多量の水蒸気が流入する、前線の南側では、「積乱雲」により土砂降りの雨になることがよくあります。
特に梅雨末期は、九州地方など西日本を中心に「線状降水帯」が発生して、大きな災害が起こることもあります。線状降水帯は、積乱雲(雷雲)が風上側で次々と発生して連なることで、狭い範囲の同じ場所で数時間にわたって、強い雨をもたらします(図2)。
図2 線状降水帯のしくみ
『すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑』
これにより、雨量が数百ミリにもなる集中豪雨となり、河川が氾濫したり土砂災害が発生したりするのです。
しかも、近年では地球温暖化による気候変動で、梅雨期の集中豪雨の発生頻度が高まっているという研究結果もあり、大雨による災害も激甚化する可能性があります。
気象情報も高度化
このような災害から身を守るために、線状降水帯による大雨の可能性を知らせる気象情報や、線状降水帯ができて災害の危険度が急激に高まっていることを伝える「顕著な大雨に関する気象情報」などがあります。天気予報は着々と精度が上がり、気象情報も高度化されてきています。これらを有効活用しつつ、さらなる備えが必要です。
こう書くと、梅雨は憂鬱(ゆううつ)な季節で、雨は迷惑な存在のように感じますが、梅雨の雨は農業用水や生活用水など、私たちの生活に不可欠です。
さらに雨には、思わずねぎらいたくなる一面もあります。水蒸気から生まれた小さな水滴(雲発生)は、低温な高い空まで運ばれて氷の粒になります。これが雪やあられに成長して雲の中を落下し始め、0度以上の層に達すると、とけて雨粒に変わります。雨粒は互いに衝突して大きくなると空気抵抗を受けて分裂し、雨として私たちの頭上に降り注ぎます(図3)。このような複雑な過程を経て、雨は降ってくるのです。
図3 雲の中ではこんな複雑なことがおこっている
『すごすぎる天気の図鑑』
例えば、ビニール傘に落ちてくる雨を見ると、流れ落ちる水滴同士がぶつかって大きくなる様子が分かります。屋根から滴り落ちる水滴を、スマートフォンでスロー撮影してみると、空気抵抗を受ける水滴が丸くなったり、おまんじゅう形になったりと、形を変える様子を観察することができます。身近な所でも雨が降ってくるしくみを体験し、雨の日を楽しめるのです。
災害は上手に情報を活用して回避し、雨の季節を少しでも楽しく過ごしましょう。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月6日付掲載
この時期、日本付近では、冷たく湿った空気の塊であるオホーツク海高気圧と、暖かく湿った空気の塊である太平洋高気圧が押し合い、両者の間には梅雨前線と呼ばれる停滞前線が作られる。
特に梅雨末期は、九州地方など西日本を中心に「線状降水帯」が発生して、大きな災害が起こることも。線状降水帯は、積乱雲(雷雲)が風上側で次々と発生して連なることで、狭い範囲の同じ場所で数時間にわたって、強い雨を。
水蒸気から生まれた小さな水滴(雲発生)は、低温な高い空まで運ばれて氷の粒に。これが雪やあられに成長して雲の中を落下し始め、0度以上の層に達すると、とけて雨粒に変わります。雨粒は互いに衝突して大きくなると空気抵抗を受けて分裂し、雨として私たちの頭上に降り注ぐ。このような複雑な過程を経て、雨は降ってくる。
しとしと、ジメジメの梅雨がやってきました。昨今では、強い雨をもたらす「線状降水帯」が発生して大きな被害が出るなど、梅雨の様相が変わっています。そもそも梅雨って何?気象予報士の佐々木恭子さんに書いてもらいました。
気象予報士 佐々木恭子さん
ささき きょうこ 神奈川県出身。合同会社「てんコロ.」代表。
予報業務に加えて、気象予報士資格取得スクールやスキルアップ講座など主催。著書に『天気でわかる日本の四季』(新日本出版社)など。
日本には四季がありますが、5月~7月は曇りや雨の日が多くなる「梅雨」があり、五つめの季節という捉え方もあります。なぜ、梅雨があるのでしょうか。
この時期、日本付近では、冷たく湿った空気の塊であるオホーツク海高気圧と、暖かく湿った空気の塊である太平洋高気圧が押し合い、両者の間には梅雨前線と呼ばれる停滞前線が作られます。(図1)
図1 梅雨前線のしくみ
『もっとすごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)から
前線停滞する時期
前線は暖気と寒気の境目で、湿った空気が上昇して雲ができ、雨の降りやすい場所です。このような前線が停滞する時期になるため、梅雨があるのです。
気象庁は、現在までの状況と1週間先までの見通しをもとに、梅雨入り・梅雨明けを発表しますが、これは確定値ではありません。9月に春から夏の天候経過を検討して、確定・修正します。
一口に梅雨といっても、雨の降り方は前線の北側と南側で異なります。それは、雨をもたらす雲の種類が異なるためです。前線の北側では、横方向に広がる「乱層雲」によって、広くシトシト雨が降り続くことが多いです。一方、太平洋高気圧の縁を回って多量の水蒸気が流入する、前線の南側では、「積乱雲」により土砂降りの雨になることがよくあります。
特に梅雨末期は、九州地方など西日本を中心に「線状降水帯」が発生して、大きな災害が起こることもあります。線状降水帯は、積乱雲(雷雲)が風上側で次々と発生して連なることで、狭い範囲の同じ場所で数時間にわたって、強い雨をもたらします(図2)。
図2 線状降水帯のしくみ
『すごすぎる天気の図鑑 雲の超図鑑』
これにより、雨量が数百ミリにもなる集中豪雨となり、河川が氾濫したり土砂災害が発生したりするのです。
しかも、近年では地球温暖化による気候変動で、梅雨期の集中豪雨の発生頻度が高まっているという研究結果もあり、大雨による災害も激甚化する可能性があります。
気象情報も高度化
このような災害から身を守るために、線状降水帯による大雨の可能性を知らせる気象情報や、線状降水帯ができて災害の危険度が急激に高まっていることを伝える「顕著な大雨に関する気象情報」などがあります。天気予報は着々と精度が上がり、気象情報も高度化されてきています。これらを有効活用しつつ、さらなる備えが必要です。
こう書くと、梅雨は憂鬱(ゆううつ)な季節で、雨は迷惑な存在のように感じますが、梅雨の雨は農業用水や生活用水など、私たちの生活に不可欠です。
さらに雨には、思わずねぎらいたくなる一面もあります。水蒸気から生まれた小さな水滴(雲発生)は、低温な高い空まで運ばれて氷の粒になります。これが雪やあられに成長して雲の中を落下し始め、0度以上の層に達すると、とけて雨粒に変わります。雨粒は互いに衝突して大きくなると空気抵抗を受けて分裂し、雨として私たちの頭上に降り注ぎます(図3)。このような複雑な過程を経て、雨は降ってくるのです。
図3 雲の中ではこんな複雑なことがおこっている
『すごすぎる天気の図鑑』
例えば、ビニール傘に落ちてくる雨を見ると、流れ落ちる水滴同士がぶつかって大きくなる様子が分かります。屋根から滴り落ちる水滴を、スマートフォンでスロー撮影してみると、空気抵抗を受ける水滴が丸くなったり、おまんじゅう形になったりと、形を変える様子を観察することができます。身近な所でも雨が降ってくるしくみを体験し、雨の日を楽しめるのです。
災害は上手に情報を活用して回避し、雨の季節を少しでも楽しく過ごしましょう。
「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年6月6日付掲載
この時期、日本付近では、冷たく湿った空気の塊であるオホーツク海高気圧と、暖かく湿った空気の塊である太平洋高気圧が押し合い、両者の間には梅雨前線と呼ばれる停滞前線が作られる。
特に梅雨末期は、九州地方など西日本を中心に「線状降水帯」が発生して、大きな災害が起こることも。線状降水帯は、積乱雲(雷雲)が風上側で次々と発生して連なることで、狭い範囲の同じ場所で数時間にわたって、強い雨を。
水蒸気から生まれた小さな水滴(雲発生)は、低温な高い空まで運ばれて氷の粒に。これが雪やあられに成長して雲の中を落下し始め、0度以上の層に達すると、とけて雨粒に変わります。雨粒は互いに衝突して大きくなると空気抵抗を受けて分裂し、雨として私たちの頭上に降り注ぐ。このような複雑な過程を経て、雨は降ってくる。
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