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日韓の歴史をたどる⑰ 「併合」下の教育 被支配は必然と教科書で説く

2020-01-25 10:18:42 | 日韓の歴史をたどる
日韓の歴史をたどる⑰ 「併合」下の教育 被支配は必然と教科書で説く
佐藤 広実
さとう・ひろみ 1954年生まれ。東京家政学院大学教授(教育学・教育学史)。日本植民地教育史研究会代表。『「誇示」する教科書』『植民地支配と教育学』ほか

朝鮮総督府は、朝鮮の子どもたちに「韓国併合」の歴史的必然性を教える重要性を自覚し、教科書の記述に最大限の注意を払っていた。
1910(明治43)年、日本は韓国を併合し朝鮮民族から主権を完全に剥奪した。朝鮮総督府は朝鮮人教育の権限を握り、翌1911年に朝鮮教育令を公布、朝鮮人の教育は「教育二関スル勅語ノ旨趣二基キ忠良ナル国民ヲ育成スルコト」とした。日本帝国臣民化のためには、天皇制思想の注入と日本語の教授とが基本であることを強調した。
朝鮮人の子どもが通う普通学校は、就学年限は4年、日本語が国語とされ、教科目は修身、国語、朝鮮語及漢文、算術、理科、唱歌・体操が開設された。教科書は「朝鮮語及漢文」を除き日本語で書かれ、日本人化のための教科が並び重要視され、朝鮮の歴史や文化は軽視され追放された。

片手にサーベル 片手に教育勅語
併合初期、総督政治は武断政治と称された。軍の機関である憲兵が文官警察を指揮下に置く憲兵警察制度がそれを特徴づけた。日本人教師はつねに警官と連絡をとり、官服に身をかため、帯剣して教場におもむいた(1920年まで続く)。片手にサーベル、片手に教育勅語という教師の姿・あり方は、朝鮮の同化主義教育を象徴した。(小沢有作『民族教育論』)
1919年3月、朝鮮民衆が独立と自由を求める三・一独立運動が起こる。5月末までの鎮圧では、死者約7500人、被検挙者4万6000人以上に及んだとされる。総督政治は武断政治から文化政治への転換を余儀なくされる。第2次朝鮮教育令が公布(1922年)され「内鮮共学」を定める。朝鮮人と日本人の学制の差をなくすとして就学年限は6年に延長され、国史(日本史)、地理、家事・裁縫などの教科が増設された。同時に、総督府はこれを機に「朝鮮人タルノ観念」の否定に本格的に乗り出す。



朝鮮教育令草案。1911年7月12日、朝鮮総督府から日本の内閣総理大臣にあてた勅令案(『独立記念館』から)

独立抑えるため植民地近代化論
その端的な事例が、なぜ朝鮮は日本に「併合」されなければならなかったのかという「韓国併合」の歴史的必然性を説く教科書の出現であった。修身の教科書でそれを紹介してみたい。
「韓国併合」後の朝鮮総督府編纂第1期修身教科書(1912年~)には、日本帝国の臣民化を促す教材が収まっている。「テンノウヘイカ」「祝日大祭日」「明治天皇」「我が国体」「日本国民」「大日本帝国」などである。しかし、「韓国併合」を直接に扱う教材はなかった。
それが、1919年の三・一独立運動後の第2期修身教科書(1923年~)には、「朝鮮は党派の争いがあって一致せず…民力は大いに疲弊しました…外交にもたびたび失敗して困難しました」「多年の弊政は全く除くことがむずかしく…朝鮮人中にも国利民福のために、日本との合併を望む者が盛んに出て来ました」(「我が国」其の二、5年生)という記述がでてくる。
さらに教材の趣旨が記されている『教師用書』を見ると、「農事の改良を図つた」「商工業の進歩を図つた」「昔にくらべれば、人民はどれほど幸福であるか分かりません」と植民地化によって近代化が促進されたと口頭で朝鮮の子どもたちに説明を補いなさいと述べている。「国運の発展」(6年生)も、合併は「教育・産業等あらゆる方面が発展して、国民の富もいちじるしく増加」したと説明する。
朝鮮民衆は日本の政治的支配下に置かれて当然であるという心性(被支配民族として生きるモラル)を教える教材である。朝鮮人としての独立の観念を抑え込み否定するためには、朝鮮民族は自らの国を治める能力をもたず停滞し(他律性史観)、植民地化によって朝鮮は近代化が促進された(植民地近代化論)と教え込むことが必要だとの総督府の自覚がここに示されている。
朝鮮人の子どもたちに、「あなた方は被支配民族として生きることが幸福である」と説く教科書が存在したこと。これは深い悲しみであり、いまに生きる私たちの痛点である。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年1月21日付掲載


韓国併合後、子どもたちの教育に注意をかける。なぜ朝鮮は日本に「併合」されなければならなかったのかという「韓国併合」の歴史的必然性を説く教科書。
力だけで支配できないと、子どもたちに「併合」によって韓国が豊かになった、日本に支配されて当然と洗脳教育。

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