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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

検証 財界主導の大学改革④ 地方の進学機会さらに奪う

2024-07-06 07:06:39 | 政治・社会問題について
検証 財界主導の大学改革④ 地方の進学機会さらに奪う

将来社会を見据えた高等教育のあり方について文部科学相から諮問を受けた中央教育審議会の特別部会は、将来の大学進学者数を推計しています。急速な少子化をふまえると、この間の進学率の伸び率を加味しても、現在64万人の大学進学者数は2040年に51万人へ減少、50年までの10年間にわたり50万人前後で推移するというものです。自民党の提言は、こうした推計をふまえて定員「規模」の適正化を求めています。
しかし、中教審の推計は、今の高学費・低奨学金を前提にしており、都市部と地方、男女の進学格差はそのままです。大学進学率(22年度)は、東京で77%、京都で71%に達していますが、岩手は40%、鹿児島は42%にとどまっています。東京と岩手では37ポイントもの差があります。男性が59%に対し女性は53%にとどまっています。この格差を埋めるためには経済的支援の抜本的強化が不可欠です。それぬきに定員を減らせば、格差が残るどころか、むしろ拡大する危険すらあります。

要求はあるのに
現在、定員割れの私立大学は320校、全体の53%に達しています(23年度)。とくに三大都市圏を除く地方の中小規模の私立大学のほとんどが定員割れとなっています。自民党の提言は、定員割れ大学への私学助成の削減などのペナルティー強化を示唆しており、これでは、大学進学率の低い地方の私大をつぶし、地方の大学進学の機会をさらに奪うことになります。
中教審の特別部会では大森昭生副部会長が、定員割れの大学への見方を転換し、地域社会の基盤を支えている重要なインフラと位置づけるよう提案しています。具体的には、現在は規模に応じて配分している私学助成を、中小大学により手厚く支援できるように、同額を一律に配分したうえで規模に応じて配分する2段階方式に変えることや、定員割れ大学に対するペナルティーを廃止することなどです。こうした改革こそが求められています。
そもそも高等教育は、市民とりわけ若者の、知的探求の自由、知る権利、職業選択の自由を含めた学び成長する権利を満たすための社会の営みです。NHKの「日本人の意識」調査でも国民の高等教育への要求はますます高まっています。(グラフ)




学び直し需要増
経済成長、学術・文化、科学・技術の発展を背景として、社会人が大学で学び直す要求も高まっています。先進国では、社会人入学が定着しています。高等教育機関への入学者の平均年齢は、最も高いスイスが24・7歳、経済協力開発機構(OECD)諸国の平均が21・9歳なのに対し、日本は18・4歳で最も低くなっています。日本の修士課程の進学率は7・4%で、OECD平均の20・4%の約3割にすぎません。博士課程の進学率は0・7%で、OECD平均の1・5%の半分にとどまっています。社会人入学や大学院への進学を阻んでいるのは高学費です。
日本で学ぶことを希望する留学生も増えています。とくに、日本の過去の侵略戦争と植民地支配に対する反省をこめて、国際貢献を果たすという見地からアジアから留学生を迎え入れることは重要な意味があります。
高まる国民の高等教育への要求にこたえるためにも、社会人、留学生に門戸を開くためにも高等教育の無償化は必要です。中教審は、将来社会を見据えた高等教育のあり方を検討するというのなら、財界に忖度(そんたく)することなく、憲法が定めた教育を受ける権利を保障する立場から、国際人権規約の無償教育の漸進的な導入についての長期的な計画を検討すべきです。(おわり)
(土井誠 党学術・文化委員会事務局長)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年7月5日付掲載


中教審の特別部会では大森昭生副部会長が、定員割れの大学への見方を転換し、地域社会の基盤を支えている重要なインフラと位置づけるよう提案。具体的には、現在は規模に応じて配分している私学助成を、中小大学により手厚く支援できるように、同額を一律に配分したうえで規模に応じて配分する2段階方式に変えることや、定員割れ大学に対するペナルティーを廃止することなど。こうした改革こそが求められています。
そもそも高等教育は、市民とりわけ若者の、知的探求の自由、知る権利、職業選択の自由を含めた学び成長する権利を満たすための社会の営み。NHKの「日本人の意識」調査でも国民の高等教育への要求はますます高まっています。(グラフ)

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