きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

自民党の人権思想 改憲草案に見る⑥ 社会保障を骨抜きに

2023-09-24 06:58:24 | 平和・憲法・歴史問題について
自民党の人権思想 改憲草案に見る⑥ 社会保障を骨抜きに
派遣労働をはじめとする非正規雇用の拡大で労働法制の規制緩和が進められ、貧困と格差が拡大してきました。また、所得税の累進制の緩和、法人税や社会保障の企業負担を安くする一方で消費税が導入され、税率は導入時の3%から10%にまで引き上げられています。これと連動し医療、介護、年金など社会保障は大幅削減され、公立・公的病院の統廃合も強行されています。
こうした「新自由主義」の政策が、自公政治のもとで一貫して強められてきました。
新自由主義は、資本主義経済の運営に対する規制をできるだけなくし、自由競争に任せるべきだという「市場原理主義」の思想や政策です。古典的な自由主義は封建制や絶対王政のもとでの自由への制約の撤廃を主張しました。
これに対し新自由主義は、資本主義の矛盾の拡大のもとでつくられた、労働者や国民の人権を保障するための企業活動への規制の撤廃を主張する反動です。強い者勝ちの「競争原理」を強め、これを広く国民に浸透させるためのイデオロギーが「自己責任」論です。
自民党改憲草案には新自由主義の思想が強く表れています。



年越し派遣村全体集会=2009年1月4日、東京・日比谷公園

自助押しつけ
改憲草案の前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と書かれ、24条で新たに盛り込まれた「家族」条項では、「家族は、互いに助け合わなければならない」とされています。
「自助・共助」を基本とし、生存権をはじめ国に対し社会保障制度の充実を求める権利を骨抜きにする仕組みです。
25条の「生存権」規 定については、具体的な書き換えはありませんが、ここにもカラクリがあります。自公政治のもとで25条の「生存権」規定は「プログラム規定」=国の政策的努力義務を定めたものにすぎず、法的拘束力はないとされてきました。そこで、25条は「そのまま」にしておいていい。一方で「自助・共助」の「自己責任」論を「憲法」に取り込むことで、国に社会保障を求める権利を骨抜きにしてしまうという狙いです。
また憲法27条の「勤労者の団結権等」について改憲草案は、公務員に対しては、その「全部または一部を制限することができる」としています。公務員労働者が団結し、労働条件の向上のためにたたかう権利を「憲法上」はく奪するもので、国民生活向上のために公務員労働者の果たす役割を制限するものです。



年越し派遣村=2008年12月31日、東京・日比谷公園

「規制」緩める
一方で、企業に対しては「規制」を緩めるあからさまな「変更」も加わっています。
憲法22条は居住、移転、職業選択の自由を規定し、「公共の福祉」による制限がありうることが明記されています。
13条で人権一般に対し「公共の福祉」による制限がありうると規定されているのに加え、22条に重ねて「公共の福祉」が規定されたのは、経済活動の自由は社会保障の観点から政策的制約に服することがありうることか
ら、あえて「再言」されたとされています。企業に社会保障の費用負担が求められるのは政策的制約の一例です。
ところが自民党改憲草案では、22条から「公共の福祉」=「公の秩序」の文言が消えています。まさに企業活動に対する制約は少なければ少ないほど良いという新自由主義思想が露骨です。
人権後進国といわれる日本の状況の根本には、巨大企業の「自由」を拡大し、戦争への反省を投げ捨て、軍事をはじめ国家の権力を強めるという自民党の憲法敵視の思想があります。(おわり)(このシリーズは、柴田菜央、中祖寅一が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月20日付掲載


古典的な自由主義は封建制や絶対王政のもとでの自由への制約の撤廃を主張。
これに対し新自由主義は、資本主義の矛盾の拡大のもとでつくられた、労働者や国民の人権を保障するための企業活動への規制の撤廃を主張する反動。
自民党改憲案は、「自助・共助」を基本とし、生存権をはじめ国に対し社会保障制度の充実を求める権利を骨抜きにする仕組み。
自民党改憲草案では、22条から「公共の福祉」=「公の秩序」の文言が消えています。まさに企業活動に対する制約は少なければ少ないほど良いという新自由主義思想が露骨。

自民党の人権思想 改憲草案に見る⑤ 9条改憲と人権制限

2023-09-23 07:25:45 | 平和・憲法・歴史問題について
自民党の人権思想 改憲草案に見る⑤ 9条改憲と人権制限
自公政権のもと、行政の長が「秘密指定」する情報への接近を処罰する秘密保護法(2013年)、人の内心まで処罰する共謀罪法(17年)、基地に近接する土地の利用を規制する土地利用規制法(21年)など、国民の「知る権利」、報道の自由に対する規制や国民監視の体制が強まっています。
その背景には15年の安保法制や昨年の安保3文書の策定による、米国とともに海外で「戦争する国」づくりが進められていることがあります。日本国憲法9条と前文の精神を全面的に解体する自民党改憲草案に示される危険な思想と一体の動きです。
日本国憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」し、この憲法を確定するとしました。9条制定の基礎には「戦争の惨禍」への厳しい認識と反省があります。

未曽有の犠牲
侵略戦争はアジアで2000万人以上、日本でも300万人を超える人々の命を奪いました。広島で14万人、長崎で9万人ともいわれる原爆犠牲者を出し、文字通り、未曽有の「戦争の惨禍」となりました。
同時に日本軍国主義は戦争遂行のため、治安維持法、国防保安法と軍機保護法(秘密保護法)などで徹底的に国民の思想言論と運動を弾圧。国家神道が強制され信教の自由を迫害し、教化教育で「お国のために血を流す」ことが無上の美徳とされました。1937年に文部省が発行した『国体の本義』では「天皇の御ために身命を捧げることは、所謂自己犠牲ではなくして、小我を捨てて大いなる御稜威に生き、国民としての真生命を発揚する所以」とされました。「天皇のために死ぬ」ことが最も尊い命の発露とされたのです。
38年の国家総動員法は「国防目的達成ノ為国ノ全力ヲ最モ有効二発揮セシムル様人的及物的資源ヲ統制運用スル」ものとし、強制徴用はじめ人もモノもすべて戦争最優先に国家が取り上げました。
こうした痛苦の歴史のうえに、9条は「戦前」を全面否定して成立しました。
人権保障にとって重要なことは、9条が一切の戦争を否定しなければ「個人の尊厳」と自由は保障されない、「戦争は自由の最大の敵」という立場に立っていることです。
日本国憲法において、9条は自由の基礎でもあるのです。
9条は人権条項を定めた憲法第3章の直前で、第2章「戦争の放棄」として規定されています。
これに対し、自民党改憲草案では、憲法の第2章の表題は「戦争の放棄」から「安全保障」に変更。9条は全面的に書き換えられ「戦争の根拠」規定となっています。9条2項を全面削除し、「国防軍の保持」を明記しました。
「国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」とし、軍事に関する情報は「憲法」を根拠に国民の「知る権利」から遠ざけられます。



「共謀罪」廃案、憲法改悪許さないと訴える人たち=2017年6月3日、東京・日比谷野外音楽堂

軍事を優先に
さらに前文には「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」と国民の「国防の義務」を書き込み、改憲草案9条の3は、国と国民が協力して領土、領海、領空を保全すると規定しています。前文からは侵略戦争への反省、不戦の決意、平和的生存権の規定も削除しました。
また同13条では「公の秩序」による人権制限を認めていますが軍事が「公の秩序」となるもと、軍事優先で人権制限がまかり通ることになりかねません。
21条では「公の秩序に反する目的」による結社を禁じるという治安維持法のような規定も盛り込んでいます。
9条の否定のもと、戦前に通ずる国家と軍事による人権制限が全面復活する内容です。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月19日付掲載


日本軍国主義は戦争遂行のため、治安維持法、国防保安法と軍機保護法(秘密保護法)などで徹底的に国民の思想言論と運動を弾圧。国家神道が強制され信教の自由を迫害し、教化教育で「お国のために血を流す」ことが無上の美徳と。
こうした痛苦の歴史のうえに、9条は「戦前」を全面否定して成立。
人権保障にとって重要なことは、9条が一切の戦争を否定しなければ「個人の尊厳」と自由は保障されない、「戦争は自由の最大の敵」という立場に。
これに対し、自民党改憲草案では、憲法の第2章の表題は「戦争の放棄」から「安全保障」に変更。「国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」とし、軍事に関する情報は「憲法」を根拠に国民の「知る権利」から遠ざける。

自民党の人権思想 改憲草案に見る④ 古い家族観の復活

2023-09-22 07:10:44 | 平和・憲法・歴史問題について
自民党の人権思想 改憲草案に見る④ 古い家族観の復活
自民党は、いま切実な課題となっている同性婚の法制化や、選択的夫婦別姓制度の導入に、かたくなに反対してきました。
岸田文雄首相は同性婚に関し、「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」(2月1日の衆院予算委員会)と答弁しています。また、同月には荒井勝喜首相秘書官が、LGBTQなど性的少数者や同性婚について「見るのも嫌だ。隣に住んでいたら嫌だ」「同性婚なんか導入したら、国を捨てる人も出てくる」と暴言を吐き、国民的批判の爆発で罷免に追い込まれました。
安倍晋三首相(当時)は選択的夫婦別姓について、「わが国の家族の在り方に深くかかわることで、国民間にさまざまな意見がある」(2020年1月23日の衆院本会議)と、実現に背を向けていました。
18年には自民党の杉田水脈衆院議員が月刊誌への寄稿で、LGBTQなど性的少数者のカップルには「生産性がない」と主張し、国民から強い批判の声が上がりました。しかし、杉田氏が謝罪と発言撤回に応じたのは、22年12月のことでした。
こうした動きの背景には、何があるのでしょうか。
日本国憲法24条は、婚姻は「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚するとし、戦前の「家」制度や家父長的価値観を否定しています。



同性婚を認めない民法等の規定を「違憲」とする判決に喜び合う支援者や弁護士ら。こうした判決にも自民党は背を向け続けています=5月30日、名古屋地裁

「家」制度復活
これに対し自民党改憲草案では、24条の冒頭に1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と明記しました。個人ではなく「家族」こそが社会の基礎単位だと宣言したのです。「家」中心の古い価値観への執着です。
戦前の「家」制度のもとでは、結婚は家と家との関係とされ、家長の同意なしには認められませんでした。女性は基本的に無能力者とされ、妻には財産の管理権も椙続権も認められませんでした。家長によって統率される「家」を単位として、すべての国民を天皇中心の国家体制に動員する仕組みだったのです。
旧文部省が1937年に天皇中心思想を徹底するために発行した『国体の本義』は、国民の生活の基本に「家」を位置付け、「我が国は一大家族国家であつて、皇室は臣民の宗家にましまし、国家生活の中心であらせられる」と説きました。個人の上に家族、家族の上に天皇を置く考え方を国民に浸透させ、天皇制国家が突き進んだ侵略戦争に国民を動員していったのです。
こうした価値観を否定し、女性の無権利状態を根本的に是正することが日本国憲法24条の意義でした。
同条に、「個人」ではなく「家族」を「社会の基礎的な単位」としてあえて位置付け直すことは、まさに「家」制度的な価値観復活の危険をはらんでいます。
日本会議勢力をはじめ、自民党保守派が別姓や同性婚に執拗(しつよう)に反対することの背景には、こうした思想があります。

助け合い強制
一方で、自民党改憲草案は、24条に「家族は、互いに助け合わなければならない」と書き込みました。これは前文で「家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と定めたことと一体で、「自助・共助」を国民に押し付けるものです。自民党の『日本国憲法改正草案Q&A』は、前文の規定について「自助、共助の精神をうたいました」と告白しています。古い価値観に新自由主義的な価値観を接続するという異様な改憲案です。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月12日付掲載


日本国憲法24条は、婚姻は「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」に立脚するとし、戦前の「家」制度や家父長的価値観を否定。
これに対し自民党改憲草案では、24条の冒頭に1項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」と明記。個人ではなく「家族」こそが社会の基礎単位だと宣言。「家」中心の古い価値観への執着。


自民党の人権思想 改憲草案に見る③ 「公の秩序」優先に

2023-09-20 07:15:01 | 平和・憲法・歴史問題について
自民党の人権思想 改憲草案に見る③ 「公の秩序」優先に
日本国憲法13条は、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めています。国民の人権は「最大の尊重」を受けるけれども、「公共の福祉」による制限がありうることを示すものです。
「公共の福祉」とは、人権が全ての人に平等に保障される以上、人権と人権が衝突することが予想され、そのような場合の人権相互の衝突を調整する原理を示すものと理解されています。例えば、いかに表現の自由が重要だとしても、真夜中の病院の前で大音量の宣伝をすることは制限があっても仕方ありません。他方で、こうした「公共の福祉」の原理には、「人権を制約するものは人権だけ」という思想が表れています。
ところが自民党改憲草案は、13条の「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に書き換えています。また、12条では「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」と明記しました。
自民党の『日本国憲法改正草案Q&A』は、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えたことについて「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」と告白。他者の人権との調整を超え、国が求める「公の秩序」優先で人権に制約を課すことを明確にしました。



国会に向かって秘密保護法廃案を訴える人たち=2013年12月6日夜、国会正門前

恣意的に制約
こうなると秩序の中身は権力者の恣意(しい)的な判断で決まる恐れがあり、大幅な人権制約がまかり通ることになります。
例えば、自民党改憲草案では9条の全面改定で「国防軍」の活動や機密保持が認められており、軍事的要請=「公の秩序」とされる危険があります。
安保・外交上の利益を国民の「知る権利」に優先させる自民党の思想が表れたのは、2013年に安倍政権が強行した特定秘密保護法でした。安保・外交に関する情報を行政の長の一存で秘密指定し、「何が秘密かも秘密」の状態で、情報にアクセス(接近)するものを厳罰にすることを決めました。
続く共謀罪法(17年)、土地利用規制法(21年) は国民の表現の自由から内心までをも規制し、政府の国民監視体制を強めるものでした。

歴史的逆行に
自民党改憲草案は、表現・結社の自由を規定する21条に第2項を新設し、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」と明記しています。
改憲案Q&Aは「内心の自由はどこまでも自由ですが、それを社会的に表現する段階になれば、一定の制限を受けるのは当然」としています。これにより、「平和を守ろう」というように内容が適切な表現でも「目的」が「公益を害する」と判断されれば規制されます。判断するのは国家権力であり、まるで憲法が治安維持法になってしまうかのような危険があります。
明治憲法下では、臣民の権利は天皇が定める「法律ノ範囲内」でしか認められませんでした。自民党の思想は、国が定める「公の秩序」の範囲で人権を制限することを許容するもので、「法律の範囲内」でのみ人権が保障される仕組みへの歴史的逆行をもたらしかねません。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年8月30日付掲載


自民党の『日本国憲法改正草案Q&A』は、「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」に変えたことについて「基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにした」と告白。他者の人権との調整を超え、国が求める「公の秩序」優先で人権に制約を課すことを明確に。
自民党改憲草案は、表現・結社の自由を規定する21条に第2項を新設し、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」と明記。
改憲案Q&Aは「内心の自由はどこまでも自由ですが、それを社会的に表現する段階になれば、一定の制限を受けるのは当然」と。


2024年度 概算要求の焦点⑤ エネルギー・中小企業 原発関連増、「化石」延命

2023-09-19 07:12:11 | 予算・税金・消費税・社会保障など
2024年度 概算要求の焦点⑤ エネルギー・中小企業 原発関連増、「化石」延命
岸田文雄政権は12日、「グリーントランスフォーメーション(GX)電源法」の施行開始を10月1日にすると閣議決定しました。老朽原子力発電の60年超運転や新規原発建設を加速させます。
2024年度の原発関連事業予算の概算要求は23年度当初比で大幅に増加。高温ガス炉実証炉開発事業は5・3倍の256億円、高速炉実証炉開発事業は3・5倍の267億円、原子力産業基盤強化事業には38・5%増の18億円を求めました。



事故発生から12年たっても爆発の跡が生々しい東京電力福島第1原発1号機原子炉建屋=1月(代表撮影)

脱炭素に逆行
石炭火力発電所が排出した二酸化炭素を回収・貯留する技術開発に23年度当初比2倍の70億円を計上。「脱炭素」に逆行する化石燃料の延命です。
「経済安全保障」の項目では、「特定重要物資」に指定されている蓄電池について新たに「製造サプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化支援事業」として4958億円を計上しました。すでにトヨタ自動車の蓄電池開発に1200億円を補助しており、特定大企業にさらに巨額の税金をつぎ込む狙いです。
また、人工知能(AI)や量子技術の軍事転用の可能性を調査する事業などに23年度当初比9%増の97億円、世界貿易機関(WTO)の改革など「国際秩序の再構築」に向けた事業に12・8%増の336億円を求めました。




「融資」の返済
新型コロナウイルスの5類感染症への移行後も、中小業者は原材料・燃料価格をはじめとする深刻な物価高に悩まされています。
10月からは、小規模事業者らに負担を強いるインボイス制度を導入。東京商工リサーチの調査では今年8月の企業倒産は760件と高止まりしています。国による実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が重荷となった倒産が累計1025件に上りました。
中小企業を支える国の抜本的な対策が求められる中、中小企業の価格転嫁対策の「中小企業取引対策事業」の計上は36億円。小規模事業者の資金繰り安定化を目的とする「小規模事業者経営改善資金融資事業」は30億円で、23年度と同額です。
ルール整備・規制が十分でないもとで企業の合併・買収(M&A)の推進をうたう「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」には、23年度比で1・4倍増の223億円を計上。サービスモデルの高度化などにつながる研究開発が対象の「成長型中小企業等研究開発支援事業」には134億円を要求しました。
一方で23年度創設の「後継者支援ネットワーク事業」は、3・4億円増の5・5億円を要求。地域の中小企業の後継者支援を重視した内容で、今後の取り組みが注目されます。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2023年9月16日付掲載


2024年度の原発関連事業予算の概算要求は23年度当初比で大幅に増加。高温ガス炉実証炉開発事業は5・3倍の256億円、高速炉実証炉開発事業は3・5倍の267億円、原子力産業基盤強化事業には38・5%増の18億円を。
石炭火力発電所が排出した二酸化炭素を回収・貯留する技術開発に23年度当初比2倍の70億円を計上。「脱炭素」に逆行する化石燃料の延命。
23年度創設の「後継者支援ネットワーク事業」は、3・4億円増の5・5億円を要求。地域の中小企業の後継者支援を重視した内容で、今後の取り組みが注目。