
2023年05月11日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[第1回ロシア北極圏水棲生物資源・漁業国際会議が開催される]
2023年5月11日、アルハンゲリスクにおいて第1回ロシア北極圏水棲生物資源・漁業国際会議が開催され、報告担当者:北海道機船漁業協同組合連合会 原口聖二 もLIVE視聴参加した。
この本会議は、当日、現地時間10:00(日本時間16:00)から行われ、ロシア漁業庁長官シェスタコフが基調報告を行った。
当該国際会議は、2021年から2023年の間、ロシアが議長国を務める北極評議会の枠組みで開催されており、ロシア漁業庁、関係部局、科学研究機関、業界の専門家ら250名以上に加え、中国、ベラルーシ、アフリカ諸国の代表者らも参加し、北極圏における水棲生物資源の評価と漁業規制、当該地域の漁業複合体のためのインフラの発展等について話し合いが行われている。
登壇したシェスタコフは、ロシアがNEAFC (北東大西洋漁業委員会)、CCAMLR (南極海洋生物資源保護委員会) などの国際組織で科学的根拠に基づき進歩的で責任ある行動をとっていると語り、北極圏での活動も同様であるべきである旨を述べ、中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定にロシアのほか9ケ国が署名し、IUU漁業と戦い科学的実証をするための準備を行っていると加えた。
また優先事項として北極圏のロシアEEZの権益の大きさに触れ、特にバレンツ海とノルウエー海のエビ・カニ漁業が堅調であり、この海域における漁獲量が50万トン以上で、国内漁業生産の10%強を占めていることを指摘、現在、投資目的漁獲割当を利用し、漁船団の更新と漁業インフラ整備が促進されていると語り、北極圏が最も長い海岸線を持っていることは、この地域の発展にとって重要ファクターになると語った。
更に、チュコトカ海で既に商業漁業が開始されていることに加え、カラ海でも商業漁業対象資源が確認されており、気候変動がもたらす資源動向を注意深く監視し続けることが重要だと加えた。
アルハンゲリスク州知事ツィブルスキーは、近い将来、北極域に新たな漁場が形成されることが予想され、当該漁業を発展させるために北極海航路が重要な役割を果たすことになると語り、このインフラの近代化が重要だと述べ、これが、北極域の開発の原動力になると加えた。
現在、アルハンゲリスク州の水産物の積み替え物流扱いは大きくはないが、上昇傾向にあり、ツィブルスキーは、その中にあってロシア沿海地方大手“ドブロフロート”(Доброфлот)社との取り組みを紹介した。
2017年から2020年までの間、“ドブロフロート”は極東からアルハンゲリスク港を経由して北極海航路によって、冷凍・冷蔵運搬船で水産物を輸送供給した。
ウラヂオストクからモスクワまでの水産物の輸送時間は、アルハンゲリスク港での荷降ろしを含め、18日-19日間だった。
一方でツィブルスキーは、北極海航路が南部の輸送路と競争できるようにするため、補助金を含め、多くの深刻な問題に今から取り組む必要があることも指摘した。
また、全ロシア海洋漁業研究所ヴニロ所長コロンチンが北極域の科学研究の動向を報告したほか、全ロシア漁業者水産物輸出者協会ヴァルペ会長ズベレフは北極域の発展におけるビジネスの役割、“先駆者”のリスクと利益について語った。
さらに、“イナルクチカ SZ”(Инарктика СЗ)社代表キタシンが北極域におけるサーモン養殖の発展の見通しを発表したほか、“ガスプロム・ネフチ”(Газпром нефть)社環境安全管理システム開発プログラム部門長ムスリモフが、ロシア漁業庁と下部組織魚類保護管理再生産機関”グラヴリヴォド”(Главрыбвод)の合意に基づき、漁業と水棲生物資源、生息地への損害補償をとるための計画を明らかにした。
シェスタコフは、北極域の保全管理について、他の同地域の国々ばかりでなく、関係者間の共同作業であり、漁業やその他の企業の活動のバランスをとることによってのみ実現され、規制も可能となると結んだ。
なお、この国際会議では、養殖分野などの分科会方式の円卓会議も設定されており、翌12日もセッションが継続されることとなっている。

