我が家の横を水路が流れていて、水位を上げるためにせき止めてある所に、落ち葉に混じってクルミやアケビの実が流れてくる。
上流の木から落ちた実が、取水口を通ってここまでたどり着くようだ。
落ち鮎のやな漁のように、拾い上げてしばらく置いておくと、表皮が剥がれて硬い殻が出てくる。
殻の中の純白の実は、香ばしくてとてもおいしい。
間もなく真っ赤なモミジや黄色く染まったカツラの葉が水路に彩を添えてくれる。
春は山桜の花びらで埋まることもあり、枝から落ちる毛虫を狙って岩魚も泳いでいる。
季節の移ろいを流れが教えてくれるが、時には珍客も訪れる。
以前、水路に落ちたうり坊(猪の子)が流れてきてびっくりしたこともあった。
猪一家が、山から下りて来て水路を飛び越える時に、うり坊が落っこちたのだろう。
源平の時代に、平家の落ち武者が住み付いたと言われる下流の大島町で、上流から箸が流れてきたのを見つけて、ここ岩井町と交流が始まったと伝えられている。
ここが最上流なので、生活に関わるものが流れてくることは無いが、流れにまつわる話は桃太郎以外にもいろいろあって興味が尽きない。